前トップらが東京地検特捜部に逮捕された日本歯科医師連盟(日歯連)の「迂回(うかい)寄付」は、日歯連内部からも今年1月に問題視する声が上がっていた。逮捕前から違法性を否定していた前日歯連会長の高木幹正容疑者(70)は、6月に日本歯科医師会(日歯)の会長に就任したばかり。逮捕者が出たことで、会員の歯科医師からは「これまでの説明は何だったのか」と怒りの声が上がった。
日歯連の内部資料によると、問題視する声は、1月23日に幹部らが集まって開かれた臨時評議員会の場で飛び出した。来年7月の参院選の対応などを話し合う中で、評議員の1人が逮捕容疑となった参院選前の資金移動について寄付の上限を超える「迂回寄付」に当たると指摘。これに対し、日歯連の会計責任者を務めていた村田憙信(よしのぶ)容疑者(70)は「テクニカルな要素で、法的にも問題ない」と釈明していた。
特捜部は4月に日歯連を家宅捜索。その後の6月に日歯連会長を退き、日本歯科医師会の会長に就任した高木容疑者も、就任が内定した際に公の場で「(資金移動は)形式的にも実質的にも合法」と違法性の認識を否定していた。
こうした中で逮捕に発展したことに、会員も驚きと憤りを隠さない。日歯連は2004年にも政界へのヤミ献金事件が発覚し、会長らが有罪判決を受け、政治資金規正法改正のきっかけを作っている。それでも、高木容疑者は献金やパーティー券の購入を通じて政治家とのつながりを深めていたという。
日歯連の幹部経験者の一人は「国民の目線をおろそかにし、政界ばかりを向いていたのではないか。体質が何ら変わってないと思われても仕方ない」と憤る。別の男性歯科医(69)も「疑惑が晴れない中で高木容疑者を日歯の会長にした責任は重い」と影響を懸念する。
今年1月の会議で評議員だった男性歯科医は「事件を機に会員数は減るだろうし、来年の選挙どころじゃない。真相を明らかにしてほしい」と話した。
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3人の逮捕を受け、日歯連の組織候補として10年の参院選で当選した民主党の西村正美議員と、13年の参院選で当選した自民党の石井みどり議員の事務所はそれぞれ「皆様に多大な心配をおかけしました。今後の捜査の推移を見守りたい」とするコメントを出した。
◇「桁違いの額、驚き」 参院議員
今回の日歯連の事件を受けて、与野党の参院議員からは驚きの声とともに、石井みどり、西村正美両参院議員に説明を求める意見が聞かれた。
「今回の事件で桁違いのカネが動いていることを知り、がくぜんとした」。石井、西村両氏と同じく比例代表で選出された有田芳生参院議員(民主)は言う。日歯連を巡っては04年にも自民党旧橋本派への1億円ヤミ献金事件があった。有田氏は「比例代表は全国にアピールしなくてはならないが、かかる費用は限られている。いったい何のためにあれだけのカネが必要だったか分からない。選挙ではなく、違うところに消えたのではという疑念も浮かぶ。不可解だ。捜査の進展を待ちたい」と語った。
また、福島瑞穂議員(社民)は、逮捕容疑の「迂回寄付」の金額に驚いたという。「前も問題になって、なぜそれが是正されないのか。金額も大きく、政治とお金の問題に対する反省が1ミリもないのではないか」と批判。
一方、ニュースで知ったという自民のある参院議員は、議員会館内の事務所で「またか」と言い、夕刊の報道を読んで「(逮捕されたのは)現日歯会長か。これは大変だ」と漏らした。「政治、選挙にはお金がかかる。特に参院の比例代表は全国組織の力が大きい」としたうえで、「(組織の性質上、両議員以外に)名前が出てくることはないだろう」と話した。
【樋岡徹也、川崎桂吾】
◇3容疑者略歴
逮捕された3容疑者はいずれも歯科医。堤直文容疑者(73)は熊本県で開業し、日歯副会長を経て09年から2年間、日歯連会長を務めた。高木容疑者は、岐阜県歯科医師会会長を経て、11年から日歯連会長を今年6月まで務めた後、同月から日歯の会長に就いた。
村田容疑者は日歯連の前副理事長。10年近く政治資金の会計を担当し、日歯連と「石井みどり中央後援会」の会計責任者を務めていたほか、「西村まさみ中央後援会」の実質的な会計責任者だった。