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 ◆ 日教組第68次教育研究全国集会の報告 (『ひのきみ通信』)
石井 泉(天羽高校分会)

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 2月1日(金)〜3日(日)、北九州市に於いて日教組全国教研が開催され、全体会と平和教育分科会及び同時期に実施している自主教研第20回「日の丸・君が代」問題全国交流集会に参加した。今年度は千葉高教組からの参加は傍聴者2名だった。

 全体会は、岡島委員長挨拶や清水書記長の基調報告、連合会長や福岡県副知事・北九州市長の来賓挨拶などがあり、記念講演は斎藤一久さん(東京学芸大学准教授)の「憲法改正と教育の未来」だった。参加者は約3000人。
 印象的だったのは、オープニングイベントで、福岡朝鮮歌舞団と九州朝鮮中高級学校生徒会による歌と舞踊だった。日朝友好の思いを込めた『赤とんぼアリラン』や、高校生らによる無償化裁判などの訴えを歌詞にした歌が感動的だった。日教組が全国教研の場で支援する姿勢を明確に出来て良かった。


 平和教育分科会のレポート28本の中では、次の4本のレポートが素晴らしかった。
 一本目は、熊本高教組の『戦争体験者と高校生が伝えあう平和への願い』
 放送部員たちが体験者から、子どもの頃に同居した青年が逃亡など徴兵忌避を繰り返し8/15に自殺した話などを聞き取り、『あなたは息子を戦場に送れますか?』のラジオドキュメントを制作し、地域で「戦争体験者と高校生の意見交流会」まで実施した取り組みは感動的だった。

 二本目は、沖縄県教組の『平和教育を日常的具体的にどう進めつなぎ広げていくか』
 普天間基地に隣接する有名な普天間第二小の先生から、全校集会「12・13(米軍ヘリ窓落下事故)を考える日」・校内職員研修「普天間基地について〜戦前の様子と戦後・現在〜」等など実施の取り組みが報告された。教職員が児童や保護者と共に基地問題を学習し、行動し続ける努力が、基地被害の深刻さの悲痛な叫びに聞こえた。辺野古埋め立てが強行されているが、決して諦めず「県民投票で反対の意思を圧倒的に示したい」との決意を述べていた。

 三本目は、神奈川高教組の『福島原発事故を語り継ぐ』
 文化祭で公開授業「世界で一番受けたくない授業」を実施し、爆発映像や放射線・事故原因・津波対策・炉心溶融・現在の原発稼働申請状況・世界の地震地図と原発立地などを学ぶ実践である。先生自身が原子力村で働いた経験もあり、確かな資料と興味深い実験映像による授業実践だった。原発問題に関して「教員がデマを生徒に伝えるのはもってのほかだろう」という指摘は心に留めたい。

 四本目は、鹿児島高教組の『「最後の授業」としての平和授業』
 世界史の最後の授業で、ジョンレノン「イマジン」・ボブディラン「風に吹かれて」・欅坂46「サイレントマジョリティー」・ミスチル「タガタメ」の曲を聞いたり、先住民族首長が大統領に宛てたスピーチ「父は空 母は大地」・2004〜2005年放映の日清カップヌードルCM「NO BORDER」(の統一テーマ7作品)などの映像を見て歌詞や映像の意味を考え、アンケートや討論授業を行った実践である。生徒が身近な音楽や映像から平和について考えを深める感動的な授業実践だった。

 また、今回、平和分科会で、私の前任校の教え子(10年前の卒業生)と再開できたことは本当に嬉しい限りだった。
 彼女は「初の参加で不安でしたが、高校時代の社会科の先生に再会でき、先生が沖縄修学旅行の事前学習を熱く語っていた思い出があります。その背景に、このような教研活動があることがわかりました」と発言してくれた。
 若い彼女の一生懸命な発表に共同研究者や参加者から応援する発言が多かった。

 そのほか、今年は右翼の街宣車を見かけず、アナウンスも一度も聞くことはなかった。
 しかし、産経新聞は、2月3日朝刊で平和教育分科会を名指しし「日本を侵略国家と印象付けるかのようなリポートがある」「朝鮮出兵は侵略と強調」「例年、政治色の強い発言が目立つ教研集会」と不当な攻撃記事を掲載した。

 2月2日には、自主教研「日の丸・君が代」問題全国交流集会にも参加した。この集会は、1999年国旗国歌法の成立に危機感を抱いた仲間たちが全国教研に集まった機会をとらえて第一回の集会を開催し、以後、毎年の全国教研期間中に開催地で続けてきた集会である。
 今でも学校現場や裁判などで「日の丸・君が代」強制反対の闘いを続けている仲間がいる。日教組が、闘いから事実上、逃げている状況下、仲間を励ます貴重な交流集会である。参加者は20名と少なかったが、大阪や東京・福岡・広島・宮城・千葉など全国の闘いが報告された。
 平和教育分科会も自主教研も毎回刺激を受け、教員の研修として最高レベルだと断言できる。参加しないのはもったいない。是非、青年教職員に伝え広げていきたい。

『ひのきみ通信 216号』(2019年2月16日)
http://hinokimitcb.web.fc2.com/html/19/216.htm


 2月18日、大阪市議会教育子ども委員会で「学力テストの結果を教員給与などへ反映させる吉村市長・大阪市教委の方針の見直しを求める陳情書」が自民・公明・共産・いくのの賛成(反対は維新だけ)で採択されました。子どもをテストで追いつめる新制度を断念させるための大きな一歩になりました。
 以下、教育子ども委員会を傍聴された方の報告です。

 ◆ 大阪市議会で「学力テストの結果を教員給与などへ反映させる
   吉村市長・大阪市教委の方針の見直しを求める陳情書」を採択!


 「子どもをテストで追いつめるな!市民の会」の陳情書の採択に反対したのは維新、賛成したのは自民、公明、共産、いくのの4会派で、議長の「賛成の方はご起立願います」の声に、維新以外のすべての議員がすっくと立ったのには感動しました。

 市民の会の陳情書については、まず山本教育長が答弁しました。


 山本教育長は、「校長には経年テスト、チャレンジテストの結果を人事評価に反映させるが、教員にはそうではなく、授業力アップに活用する」と、特に下線部に力を込め、当初の市長案よりはましであるかのように強調しました。

 これを受けて維新の杉村議員は「維新が指摘した当初の危惧が解決された」ので「試行案は妥当だ」と、試行案を支持しました。

 自民党の西川議員は主に大森特別顧問について追及しました。
 「大森特別顧問は教育委員長時代に学力偏重主義が目に余り、現場に混乱を招いた」「総合教育会議で大森特別顧問には提案権がないのに提案している」ことを批判しました。
 これに対して教育委員会事務局は「大森特別顧問は市長の指示に従ってやっている」ので問題はないと答弁し、山本教育長も「大森特別顧問は教育委員長在任中から精力的にやってくれた」「総合教育会議は市長権限でやっている」ので問題はないと大森特別顧問を擁護しました。
 また西川議員は福井県議会の意見書を引用して「意見書は良いことを言っている」「試行案は数値目標のみを追うことになっていないか」と試行案を批判しました。

 自民党の前田議員は「家庭や経済力が学力に及ぼす面を排除できず、教員には適用できなかった」が、「校長にも同じことが言える」と校長の人事評価に適用することも批判しました。
 また前田議員は「特色ある学校づくりのための校長経営支援戦略予算を6年間やったが、これへのPDCAをやっていない。総括もしていないのになぜ現行をやめるのか」「6年間申請し続けても1回も取れなかった学校もある。インセンティブがかえってモチベーションを下げることもあるのではないか」と、厳しく批判しました。
 これに対して山本教育長は「振り返りをちゃんとやってこなかった」と認め、「今後は議会の指摘に応えていく」と表明しました。

 公明党の佐々木議員は「教員には参考にするだけのように言われているが、教員にも大きな影響を及ぼすのではないか」と懸念を表明しました。また「傾向と対策を徹底し、点数の出ない生徒を受けさせなければ見せかけの点数は上がる」「禁断の果実をぶら下げることにしかならないのではないか」と批判したのに対して、事務局は「委員の指摘のようなことが起こらないようにする」としか答弁できませんでした。
 山本教育長も「大阪市の子どもは学校の授業以外での学習時間が少ないという調査結果が出ているが、家庭状況の詳細な分析はできていない」と認め、「大阪市は全国平均に遠いので、今やれることをやる。一人一人を去年よりどう伸ばすか、明確な目標を決める」としか言えませんでした。
 試行案が学力向上とは程遠い、全国学力テスト対策でしかないことが透けて見えるような答弁でした。

 共産党の井上議員は「学校現場は講師が足りないとか多忙化で、教員が子どもに寄り添えなくなっている。優先すべきはこっちで、少人数学級などをやるべきだ。学力の高いところはすでにやっているのではないか」と指摘しました。また「チームには教育委員会も入る。評価するなら教育長は学校に責任を押しつけるのではなく、教育委員会がまず責任を取るべきではないか」「試行案は実害しかない。撤回すべきだ」と厳しく批判しました。

 これらの議論の末に陳情書は採択されました
 議会が試行案を徹底的に批判し、明確にノーを突きつけたのは大きな力です。
 今の大阪市教育委員会には吉村市長の強引な教育への介入に抵抗する気概も力もありません。考えているのは「公務員人事の公平性」の原則に抵触しないか、裁判に訴えられないようにどうするかという保身だけです。
 したがって今後とも私たちは議会と連携して、この施策を徹底批判して世論を作り、阻止するしかありません。頑張りましょう。


◎ 学力テストの結果を教員給与などへ反映させる
吉村市長・大阪市教委の方針の見直しを求める陳情書

 大阪市会議長 角谷 庄一 様
子どもをテストで追いつめるな!市民の会

 [陳情趣旨]
 昨年8月2日、吉村大阪市長は、昨年4月に行われた「全国学力テスト」の大阪市の結果が政令指定都市で最下位になったことを問題視し、「全国学力テスト」の数値目標を決め、結果を教員・校長の人事評価、勤勉手当、さらには学校予算にまで反映させることを表明しました。
 これを受けて9月14日、大阪市総合教育会議で大森不二雄特別顧問が新提案をおこない、それを基にして大阪市教育委員会が制度設計を進め、来年度から試行しようとしています。

 これまでも大阪市では、小3〜小6に大阪市経年テスト、中1〜中3に大阪府チャレンジテスト、中3は大阪市中学校統一テストを実施してきました。
 今後はそれらのテスト結果を大阪市教委にビッグデータとして集積し、「前年度の同じ児童生徒たちの学力と比べてどれだけ向上させたかを測定する」「教員別学力向上指標」の開発をするというのが大森特別顧問の提案です。
 これは、吉村市長が「全国学力テスト結果を人事評価に活用する」とした当初の提案をもとに、より広くより深く学校教育全体をテスト重視に転換させていくものに他なりません。

 子どもの成績と子どもの家庭の経済情況に相関関係が見られることは各種の調査でも明らかです。沖縄に次いで子どもの貧困率の高い大阪市は、生活保護率、就学援助率ともに全国一です。
 「全国学力テスト」における大阪市の子どもたちの結果は、経済情況の反映とも考えられます。ならば、大阪市で最も必要なことは、まずもって子どもの生活基盤を安定させることであり、それは学校内部だけでできることではありません。
 さらに現在の大阪市が取り組むべき課題は、教育する側の豊かな体勢作りです。教員の育成を可能にする適切な研修体制、子どもたちへ個別に働きかける時間的な余裕こそが必要です。
 その上で、経済的・家庭的に困難な子どもたちに対し、よりきめ細かな状況把握をし、子どもが落ち着いて学習できるような条件を整えるべきです。

 もとより私たちは「学力」の向上を否定するものではなく、むしろ望んでいることです。しかしその「学力」とは、将来子どもたちが生きていくうえで真に必要な知識や考える力です。そのために子どもを育てる環境整備に行政はまず力を注ぎ、困難な学校にこそ予算をつけて教員を配置すべきではないでしょうか?
 「学力テスト」の点数によって教員待遇のみならず学校予算にまで格差をつけ、教員と学校を競争させることは、テスト対策の増加やテスト対象教科の時数拡大などを招き、教育内容に歪みを生じさせる可能性が大です。
 その結果、子どもの教員不信が増し、テストに対する不安やストレスが増すことによって学校嫌いになり、かえっていじめや不登校が増えることが懸念されます。
 かりに、テスト対策の強化により、学力テストの順位が上がったとして、その時、小中学校の不登校率も上昇していたとすれば、市長や市教委はその責任をとってくれるのでしょうか。

 昨年12月22日に私たちが開いた「子どもをテストで追いつめるな!大阪集会」では、先行して同様の施策が行われたアメリでの失敗例が具体的に紹介されました。
 また大森氏や教育委員会が提案している「数値目標の設定方法」が、統計学の専門家の見地からもデタラメであるという批判もなされました。
 さらに、障がいを持つ子どもの保護者や不登校の子どもの保護者からは、学校がいっそうストレスをためる場になるのではないかと強い懸念が表明され、教育の場、学校が「子どもが人間として尊重される場になってほしい」という切なる願いが次々と発せられました。
 どのように考えても大阪市教育委員会がやろうとしていることには無理があり、避けるべき非教育的な政策です。大阪市の教育をこれ以上歪め、壊すのはやめてください。

 [陳情項目]
 吉村市長・大阪市教育委員会は、学力テストの結果を教員給与などに反映させる方針を見直し、真の学力向上のための施策へと練り直してください。



  [平井さんバッシングを許さない④]
 ◆ 「軍が強制的に『慰安婦』制度を進めたということだけを教えるのであれば不適切」?!(1月23日大阪府教育庁交渉報告)


 私たち平井さんバッシングを許さない市民有志は、2019年1月23日に大阪府教育庁と交渉を行いました。
 これは2018年12月6日に提出していた4項目の質問書をうけて開催されたものです。その質問書の回答は12月20日にありましたが、その回答の内容は私たちにとって満足できるものではなく、その後2つの追加質問書を提出、交渉当日に回答を受け取りました。
 【2018年12月6日に提出していた4項目の質問書とその後の経過】
 私たちは4項目の質問に沿って、府教育庁にその見解を質しました。
 交渉に対応したのは、小中学校課教務グループ主席指導主事です。

 1、日本軍「慰安婦」問題を授業でとりあげることはいい、
   しかし「軍が強制的に『慰安婦』制度を進めたということだけを教えるのであれば不適切」?



 質問1 2018年10月12日の大阪府議会の教育常任委員会で原田亮府議会議員(自民)が「記事で書かれているのがほんとうならば、大問題である」という質問に対して、舛田千佳小中学校課長が共同通信の「記事にある授業の内容が事実であるならば不適切である」と答弁されています。
 大阪府教育庁は、共同通信のどの内容がどういう点から不適切なのかを具体的に明らかに示してしてください。

 私たちは自民党や維新の会が「日本軍『慰安婦』問題を取り上げる授業実践そのものが問題である」という質問に対して、大阪府教育庁がそれを認めるかのような回答をしていたことに、とても危機感を抱いていました。
 これに対して事前の回答書で、次のような回答がありました。
 大阪府教育庁としては「一面的な指導の事実があれば、『不適切である』」
 それは実際の府議とのやり取りを見れば理解しがたい点もあるのですが、「日本軍『慰安婦』問題を授業で取り上げることそのものは問題がないのですね?」と確認の意味でも追及したころ、「日本軍『慰安婦』問題を授業で取り上げることそのものは、何ら問題がない」という回答を得ました。
 当然とはいえ、府議会での執拗な攻撃を前にしてこのことを確認できたのは、一つの成果と思います。

 しかし、こんなことで納得はできません。
 そもそも平井さんが一面的な指導を行っていません。記事の内容が100%事実としても、現在の教育行政の基準における「一面的な指導の事実」など見当たらないからです。
 共同通信社の記事で紹介された平井さんの授業実践は、2015年の「慰安婦」日韓合意と河野談話も取り上げており、きちんと政府見解を伝えたうえで授業を展開しているからです。これが「一面的な指導の事実」と言えるのでしょうか?

 そこで私たちは「平井さんの『慰安婦』の授業実践が共同通信社の記事通りだったとして、それが『一面的な指導』と言えるのか?」と問いました。
 すると府教育庁は「記事の内容が事実かどうかは調べているが、記事の内容の授業についての判断はしていない」「府教育庁としては記事の分析をしていない」と回答しました。
 これは想定外でした。現在府議会で起こっている事態は、記事を読んだ議員が「こんな授業を許せない」「こんな教師は教壇に立たせるな」と攻撃しているのです。記事の内容の授業で問題がないのであれば「そもそもそんな批判には当たらない」と府教育庁は答えるべきなのです。
 そして府教育庁は、議会の答弁内容から察するに、記事の内容の通りの授業ならば不適切と考えているのだろうと考えていました。
 しかしそうではなく、そもそもそこの評価はしていないというのです。

 新聞記事の内容を読めば、平井さんは政府見解を取り上げない「一面的な指導」をしているとはとても読めません。記事中では、2015年の「慰安婦」日韓合意を取り上げ、河野談話を取り上げたうえで、生徒たちにどう思うのか問うています。
 だから平井さんが「一面的な指導をしているとは言えないのではないか」と追及したのですが、「記事の内容が事実であるかどうかわからないので、現時点では判断ができない」と逃げました。そして追及された結果、言葉に窮したように「記事の内容が事実であったとしても何も問題がないとまでは言えない」「一面的な指導とまでは言えなくても、配慮が必要だったと言うのです。

 その配慮とはなにか? それは「軍が積極的に関与しているように記事からは読み取れるから」ということでした。
 もちろん日本軍「慰安婦」問題は「軍が積極的に関与」した問題です。確かに安倍首相は「強制連行を示す文書がなかった」という閣議決定を行っていますが、強制連行を示す証拠さえ現実にはたくさんあります。その証拠の数々を政府のところに持って行っても、政府は受け取ろうともせず、「強制連行を示す文書がなかった」と繰り返すのです。
 私たちは「軍の関与も強制連行も性奴隷制度も歴史の事実ではないか」ともちろん追及しましたが、府教育庁は首を縦に振りません。

 「軍が強制的に『慰安婦』制度を進めたということだけを教えるのであれば不適切」
 「河野談話も事実だが、強制連行を示す証拠がなかったという安倍閣議決定も事実
 「『慰安婦』問題のとらえ方について歴史的に経緯がある。そういうことをとらまえて今現在がどうなのか教える必要がある」

 つまり「強制連行を示す証拠がなかった」と教えなければ、「不適切な指導」になるのです。平井さんの授業のように、「慰安婦」日韓合意と河野談話だけでは「不適切な指導」になるのです。
 府教育庁は決してそのようにハッキリと認めようとはしませんでしたが、いくら考えてもそのようにしか判断できません。
 「日本軍『慰安婦』制度は軍が強制的に関与した。それは歴史の事実だ」といくら主張しても、「軍の強制性を認めた河野談話が一面的だとでもいうのか」と批判しても、府教育庁はそのことそのものは絶対に否定することなく、「それも事実だが、強制連行を示す証拠がなかったという閣議決定の存在もまた事実」と言うのです。

 歴史修正主義とは、歴史の事実を巡る論争という形を借りた「政治」です。歴史の事実とは何かとは全く関係のないところで、「嘘も百回言えば本当になる」を実行しているにすぎません。
 被害者が甘言・詐欺や場合によっては拉致監禁によって慰安所に入れられたことは、誰が何と言おうと歴史の事実ですし、慰安所で行われたことはまさに性奴隷制度でした。それは(吉田清治証言とは全く関係なく)金学順さんが名乗り出られたあとの20数年間の歴史研究の成果であり、今後もそれが覆されることはないでしょう。つまり学問の分野ではすでに詰んでいることなのです。
 アメリカなどにいるキリスト教原理主義者は「進化論は間違いだ」と主張し、学校で進化論を教えることを攻撃します。進化論は科学の真実であるにも関わらず。それと同じです。歴史修正主義者は何が歴史の事実かということとは関係なしに、「歴史」のジャンルのふりをしながら「政治」を挑んでくるのです。

 そして大阪府教育庁は、教育行政機関であるにもかかわらず、歴史の事実から目をそらし、安倍閣議決定を取り上げないと「一面的な指導」になると……おそらくは起こっている事態が「歴史」ではなく「政治」であると理解したうえで、ウソとホントウの両論併記でなければ教育行政がもたないと判断しているのでしょう。
 「政治」を教える公民の授業でならまだしも、「歴史」の授業で「強制連行はなかった」とウソを教えることを強制するのであれば、歴史教育の放棄と言わざるを得ません。子どもに対する背信行為であり、絶対に許すことはできません。
 大阪府教育庁は「政治」から距離を起き、「歴史」で決着のついた場所、つまり日本軍「慰安婦」制度は軍が管理した戦時性奴隷制度だったという歴史的事実に立ち戻るべきです。


 2、調査対象は「慰安婦」授業の有無ではなく「一面的な指導はなかった」の有無
   平井さんの授業実践も「不適切な指導ではない」ことを確認


 質問2 2018年10月16日の大阪府議会の教育常任委員会での西田薫府議会議員(維新)の「こういった授業が他の小中学校でも行われていないか調査すべき」との質問に対して、「各学校において、歴史的事象を一面的にとらえるなどの不適切な指導がないか、市町村教育委員会に調査・把握・指導したい」と舛田小中学校課長が答弁されています。
 10月16日以降、大阪府教育庁は具体的にどのような内容の調査を、電話・文書も含め行ったのかを明らかにしてください。その調査結果とその後の「指導」内容を公開してください。

 これに対する大阪府教育庁の回答は、市町村教育委員会(政令市除く)に対して「国の通知文を踏まえて不適切な事例がないかについての報告を求め」、「すべての市町村教育委員会より、不適切な指導はなかったと報告を受け」たというものでした。
 質問1でも問題になっていましたが、この「不適切な指導」の根拠となる国の通知文があります。それは「学校における補助教材の適切な取扱いについて」(2015年3月4日)です。この通知文そのものが、教育実践に対する歴史認識や性教育を巡るバックラッシュの中で、それを後押しするために出された不当なものであると考えますが、問題になっているのはその通知文の以下の箇所です。
2.補助教材の内容及び取扱いに関する留意事項について
(1)学校における補助教材の使用の検討に当たっては,その内容及び取扱いに関し,特に以下の点に十分留意すること。
・ 教育基本法,学校教育法,学習指導要領等の趣旨に従っていること。
・ その使用される学年の児童生徒の心身の発達の段階に即していること。
・ 多様な見方や考え方のできる事柄,未確定な事柄を取り上げる場合には,特定の事柄を強調し過ぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど,特定の見方や考え方に偏った取扱いとならないこと
 大阪府教育庁は、上記の観点から調査を行ったということです。つまり「慰安婦」の授業がおこなわれたかどうかについては問題にしていないということでした。「慰安婦」の授業を行うことそのものは、「心身の発達の段階に即している」「特定の見方や考え方に偏った取扱いとならない」ということはあらためて確認しました。
 そして平井さんの授業実践についても、「強制連行を示す証拠はなかったということ(安倍閣議決定)も教えており、不適切な指導はなされていない」と吹田市教委から報告を受けていると確認しました。
 それならば、不適切な指導をしたという理由での処分はありえないということかと追及しましたが、これは所管が違うという理由で府教育庁(小中学校課主席指導主事)は回答を避けました。

 しかし昨年10月に、このような調査をしたこと自体が、教育実践を萎縮させるものです。
 学校現場に「問題ありませんでした、しっかりと自分たちの判断で教育実践してください、そういう自由があります」としっかり説明するよう求めました。

 また府議は平井さんが「慰安婦」授業をやったことによって学校を混乱させたかのように主張していますが、これについても府教育庁として「平井さんに責任があるのではなく、学校への抗議そのものがヘイトスピーチであり、吉村大阪市長や府議がそれを煽っている」と反論するように迫りました。
 人権教育を推進する教育行政が、人権侵害に毅然とした態度が取れないのは問題と言わざるを得ません。しかしこれについても、残念ながら明確な返答はありませんでした。
 しかし12月議会で議員から「日本軍『慰安婦』の授業をやっているかどうかの再調査をするように」との強い要請があった件については、府教育庁は「これ以上の調査はしない」と明言しました。


 3、教員が教材を選択することは必要なこと
   すべてを学校長に報告しろということではない


 質問3 ILO・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」では、教員の自主性を尊重するために「教員の権利及び責務」61項、63項が規定されています。
 上記質問1.質問2に係る大阪府議会での大阪府教育庁の応対は、この項の規定に反していると考えますが、「教員の地位に関する勧告」61項、63項を今後は遵守されるかどうか、大阪府教育庁としての見解を明らかにしてください。

 この質問は、先述の通知文「学校における補助教材の適正な取扱いについて」が、「校長の責任の下,教育的見地からみて有益適切な補助教材を有効に活用すること」「教育委員会は,(中略)必要に応じて補助教材の内容を確認するなど,各学校において補助教材が不適切に使用されないよう管理を行うこと」としており、この点を問いただしたものです。補助教材について教員の自主性を認めず、「慰安婦」の補助教材は認めないなどという不当な攻撃は、許されません。

 これについて大阪府教育庁の事前の回答は「当然遵守している」という回答でした。
 私たちは具体的に内容を詰め、以下の回答を引き出しています。
 「児童生徒のことを一番よく知っている教員が、子どもたちのためにこの教材がいいなあと活用することは、昔も今も変わらず必要なことすべてを学校長や教育委員会に報告するということでもない
 補助教材の件も含め、「教員の地位に関する勧告」にあるとおり、「教員は、生徒に最も適した教具及び教授法を判断する資格を特に有しているので、教材の選択及び使用、教科書の選択並びに教育方法の適用にあたって、(中略)主要な役割が与えられるものとする」ことを確認しました。
 また「教員の自由、創意及び責任を減殺しないようなものとする」という観点からも、加害の事実や戦争責任を教える教員をしっかり守るように、教育委員会として働いていただきたいと要請し、「努力したい」という回答を得ました。
 どこまで努力するのか、きちんと見届けたいと思います。


 4、教育の中立と独立を守ることが府教委の責任のはず

 質問4 戦争における加害の歴史的事実を隠す教育こそ一面的指導というべきです。舛田小中学校課長が「不適切」と答弁したことは、戦前戦中、国家が教育を支配し、子どもたちを戦争にかりたてたことへの反省から、教育の中立と独立を守るために制定をみた教育基本法第16条に反していると考えますが、大阪府教育庁としての見解を明らかにしてください。

 歴史教育において、加害の事実も被害の事実も両方教えるのが重要であって、加害の事実を隠すことが「一面的な指導」ともいえるものです。しかし今回府議会で維新、自民、公明の府議が行った主張は、「日本軍『慰安婦』問題を授業で取り上げることそのものが許されない」というものでした。子どもの書いた感想文をとりあげ、「洗脳教育だ」と主張し圧力をかける……そのこと自体、教育基本法16条に規定された「不当な支配」であり、到底許されざることではありません。
 しかし議会での府教育庁の対応はあまりにも弱腰といえるものです。
 そこで今回の府議の圧力が教育基本法にあってはならないと定められた「不当な支配」であり、教育行政がこれに簡単に屈してしまうのは問題だと追及しました。これについて大阪府教育庁は「府議の主張が不当な支配にあたるかどうかはコメントできない」と回答を避けました。


 今回の交渉の中で、ほぼ問題点は明らかになったと考えます。
 私はこれまで、歴史教育とは歴史を教えることだと思っていました。日本軍「慰安婦」問題の歴史とは、戦場に設置された慰安所に女性たちが入れられ、日本軍兵士の相手をさせられていた……単純な事実です。
 女性たちの中には騙されて連れてこられた人もいれば、拉致監禁された人もいた。共通するのは、「ヤメテ」と主張してもそれは一切聞き入れられなかったということです。
 強制連行があったかなかったかとか、本当に20万人だったかとか、中学生に教えるという観点からすれば「どうでもいい」ことです。
 しかしそんな事実を語るだけと「一面的な指導」だというのです。「強制連行を示す証拠はなかった」という第1次安倍政権の閣議決定を教えないと不適切だと、府教育庁は言うのです(明言こそはしませんが)。
 「強制連行を示す証拠はなかった」ということそのものが、ウソであり事実に反しています。事実に反する政府の閣議決定を「教えなければならない」のだとしたら、それこそが一面的であり不適切な指導と言えるのではないでしょうか?

 今回私たちはこの壁を打ち破ることはできませんでした。そしてそこの壁を打ち破ることはそう容易ではないと考えます。なぜならば、それは歴史認識の問題ではなく、歴史認識の姿をまとった政治的圧力との闘いだからです。
 私たちが闘っている相手は大阪府教育庁の歴史認識ではなく、ネトウヨともいえる府議が圧倒的多数を占める大阪の政治状況そのものです。
 これをどうやったら突き崩せるでしょうか?

 歴史の事実をもっともっと突きつけること。
 歴史の事実を事実として認めていく日本社会に変えること。

 今回明らかになった課題をよく検討し、日本軍「慰安婦」問題を抹殺させないために、次のステージに進みたいと思います。

『加害者の孫を生きる 〜日本軍「慰安婦」問題のこと、その他のこと』(2019/01/28)
http://redress814.blog.fc2.com/blog-entry-87.html



 ◆ 中学校道徳教科書「日本教科書」を採択
   〜小松市・加賀市で〜
 (教科書ネット)
板坂洋介(いたさかようすけ・子どもと教科書石川ネット)

 4月14日(土)学習会から始まる。
 6月15日(金)〜28日(木)県下各地での教科書展示会場に行き意見を書く取り組み実施。
 7月27日(金)石川憲法会議、新日本婦人の会、いしかわ県民教育文化センターなど7団体で県教委へ「中学校道徳教科書採択について」の要望書と「日本教科書」の道徳教科書採択に反対の文書を提出。
 8月1日(水)〜3日(金)にかけて川北町、金沢市、野々市市、白山市、能美市、小松市、加賀市教委へ同様の要請を実施。その他の市・町教委宛てに郵送。その後に県下9採択地区の全教育委員宛てに同様の文書を郵送
 その結果は加賀市と小松市で日本教科書の採択が9月当初に公表される。(昨年の小学校道徳で加賀市は教育出版・小松市は東京書籍)


 9月20日(木)子どもと教科書石川ネットなど7団体連名で加賀市と小松市教委へ不当な採択に抗議し採択のやり直しを求める要望書を提出。
 その後、情報公開の手続きで加賀市・小松市・白山市・金沢市の審議経過の資料と議事録を入手し分析。
 各地でこの間の経過と結果をもとに各種学習会に出向く。
 11月17日(土)午後に金沢市内で子どもと教育を考えるつどいを開催。内容は中学校道徳・教科書採択の議事録を読んでと教育委員会の傍聴行動からみえてくるものをテーマに学習会(28名参加)を開催し、次年度に向けて活動の課題や方向性が明らかにされました。

 ◆ 議事録からみえてきたこと
   加賀市の場合


 ○採択委員会(7月27日第二回)第1推薦日本教科書 第2推薦東京書籍
 採択委員6名(山下教育長他男5名、女1名) 今回は採択委員会の段階で日本教科書が多数。
 ・ふるさと教育の大切さで日本教科書を押す意見が目立つ。石川の教材が沢山出ていて、うれしく思った。安倍演説は平和のメッセージなので問題はないなど肯定的意見多い。
 ○教育委員会会議(8月27日)全員一致で日本教科書を採択
 委員5名(山下教育長と神社の宮司ほか男性1名、女性2名)
 ・日本教科書をみると、これだけ沢山のふるさとの教材を取り上げていることに敬服。これこそが石川県民として、加賀市民として是非この教科書を使わせたい。最後のページの振り返り(自己評価)は、今一度、自分のレベルを見直すことが出来て良い。日本教科書はドラマ仕立てになっている。

 ◆ 小松市の場合

 ○採択委員会(8月17日第二回)光村日本教科書4:2光村が多数
 採択委員7名(石黒教育長と教育委員2名、PTA連合会長、同母親委員長、小・中校長会長)
 ・石川の事例が多く採用されていて実感が持てる。何よりも石川出身の編集者が5名も入っている。
 ・日本教科書は子どもたちに議論させていくような、どっちが答えかわからないような内容のものが少ない。小松には市が作った教材もある。地域教材が多いと討論にならないのではない。先に結論がみえてくる教材は良くない。その辺、光村はバランスが良い。

 ○教育委員会会議(8月27日)石黒教育長は採決に加わらず、教育委員(男2名女2名)の全員一致で日本教科書を採択
 石川の執筆者と地域教材・人物が登場ということで日本教科書が良いが多数。
 中には光村は安全運転すぎる。日本教科書はある程度リスクがあるかもしれないがリターンも大きいと発言し(教育長がリスキーは排除したいとただすも)長々と3ぺージ分も発言する委員も。
 閉会のあいさつで教育長は残念ながら私は、平易な言葉で子どもたちと対応しうる光村を推薦していた。日本教科書は扱いが難しいと思っていた。でも決定には従わなくてはならないと締めくくった。

 結論は両市とも、採択委員や教育委員は日本会議派市長が任命日本会議派が多数派となる構成で学校現場や市民の声が届くことはありませんでした。
 しかし、全国的には栃木の大田原市と3採択地区のみで生徒需要数では6000〜7000冊(0.2%)程度でしかありません。全国的には彼等の思惑が外れたと言えます。

『子どもと教科書全国ネット21ニュース 123号』(2018.12)


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