1/10(木) 6:05配信 西日本新聞
警官、偽名で問題集執筆 複数の団体名使用も 副業認識、発覚逃れか
偽名の「南謙三」宛ての執筆依頼文。「昇試研究会」が出版社にファクス送信した別の文書には「ヨコスカケイサツショ」と記されていた
警察庁と17道府県の警察官が、昇任試験の対策問題集を出版する「EDU−COM」(東京)から原稿執筆料を受け取っていた問題で、一部の警察官が偽名や団体名を使っていたことが関係者への取材で分かった。同社の内部資料には「ペンネームで登録予定。氏名・所属が一切表に出ないように」との注意書きがある警察官もいた。公務員の副業は原則禁止されており、所属する警察に知られないよう、実名を伏せていた可能性がある。
【写真】出版社に流出した警察の内部文書
同社の支払いリストと関係者への取材から、少なくとも、京都府警の警視が偽名と団体名を使い分けていたほか、神奈川県警の元警視正と栃木県警の警部も団体名を使っていたことが判明した。
京都府警の警視は2012年7月〜15年2月に「南謙三」という偽名を、15年3月〜17年3月は「近畿法規研究会」名義を使用、毎月欠かさず計約795万円が支払われたとの記載があった。警視は「足りない原稿はないか」と尋ねるなど積極的に執筆し、数カ月おきに上京して飲食接待を受けていたという。
この警視は複数の女性警察官にセクハラ行為をしたとして減給処分を受け、昨年12月に依願退職した。
神奈川県警の元警視正は、現職だった12年11月〜15年12月は「警察実務研究会」、退職後の16年以降は実名で、34回にわたり計約947万円が支払われた記録があった。
栃木県警の警部には「栃木昇試研究会」名で15年8月〜16年11月に計約36万円が支払われていた。
西日本新聞は昨年11月、京都府警の警視と神奈川県警の元警視正に文書で取材を申し込んだが、9日現在回答は届いていない。
このほか、リストには「愛知法令研究会」「コスゾー群馬」「なでしこ研究会」「昇試研究会」の4団体名があったが、執筆者は不明。ただ、昇試研究会が同社に送ったとされるファクスの送信元は「ヨコスカケイサツショ」とあり、神奈川県警の警察官とみられる。
実名を伏せた理由について、同社関係者は「所属する警察に内緒で執筆していたからだろう。原稿のやりとりをする際は相当気を使った」と説明した。
リストによると10年1月〜17年3月、警察官467人に原稿執筆料として計1億円超が支払われていた。
ー・−・−・−・−・−・−・−・−・−
1/8(火) 6:01配信 西日本新聞
警官467人に執筆料1億円超 副業禁止抵触か 昇任試験問題集の出版社
昇任試験の対策問題集「KOSUZO」。設問のほとんどは警察官が執筆していたという
警察庁と17道府県警の警察官が、昇任試験の対策問題集を出版する民間企業の依頼を受け、問題や解答を執筆して現金を受け取っていたことが西日本新聞の取材で分かった。企業の内部資料によると、過去7年間で467人に1億円超が支払われていた。最も高額だった大阪府警の現職警視正には1500万円超が支払われた記録があった。取材に対し複数の警察官が現金授受を認め、一部は飲食接待を受けたことも認めた。識者は「公務員が特定業者の営利活動に協力するのは明らかにおかしい。業者との癒着が疑われる」と指摘する。
【一覧】最高額は1500万円超 執筆額内訳
この企業は「EDUーCOM」(東京)。関係者によると、内部資料は同社が作成した2010年1月〜17年3月の支払いリスト。警察官467人の氏名や執筆料、支払日が記され、ほとんどが警部以上の幹部だった。執筆料は、階級に応じた単価にページ数を掛けて算出していた。
最高額の大阪府警の現職警視正は7年間で1万8778ページ分執筆していた。このほか、宮城県警の警視正と京都府警の警視がそれぞれ約500万円、千葉県警の警部が約317万円など。福岡県警の最高額は本部所属の警視で2年間に約80万円、熊本県警は警視級の署長で4年間に約250万円だった。
複数年にわたって執筆し、50万円以上を受け取った警察官は41人で合計額は約8150万円に上った。執筆料が多額に上るケースでは、リストに載る警察官が窓口役で、複数で執筆を分担した可能性がある。
地方公務員法などに抵触する恐れ
一方、巻頭言や設問を1回だけ執筆した警察官が半数を占め、大半の執筆料が数千〜2万数千円だった。
公務員の副業は原則禁止されている。警察庁と各警察本部に情報公開請求したところ、いずれも副業許可は出ていなかった。地方公務員法(兼業の禁止)などに抵触する恐れがあるが、警察庁などは「個別の事柄についてはコメントを差し控える」と回答した。
「小遣い稼ぎだった」「断れなかった」
取材に対し、複数の警察官が「小遣い稼ぎだった」「上司から頼まれて断れなかった」と認めた。同社側もいったんは事実関係を認めたが、その後は「個人のプライバシーに関わるので、これ以上は答えられない」と取材を拒否した。
同社のホームページには「法律のスペシャリスト」が問題集を作成しているとあるが、関係者は「警察内部の通達や規定は公表されないことが多い。捜査など実務に関する設問を自前で作るのは難しく、警察官に頼んでいた」と証言した。
同社は09年設立。昇任試験の対策問題集「KOSUZO」(コスゾー)を毎月発行し、全国向け「全国版」と、大阪や福岡など10道府県警に特化した「県版」がある。市販はしていない。民間調査会社によると、社員数は20人程度。販売部数は不明だが、年商は数億円とみられる。
小遣い稼ぎ、悪質だ 田中孝男・九州大大学院教授(行政法)の話
公務員が特定業者の営利活動に協力するのは不公正だ。金銭が伴うと業者に取り込まれる恐れがあるし、癒着の温床にもなりうる。組織として昇任試験対策の問題集を必要としているのなら、公的な手続きを経て無報酬で執筆すればいい。
公務員には職務専念義務があり、公務に支障を来しかねない副業は制限されている。勤務時間外でも無許可で反復・継続的に執筆していれば、国家公務員法や地方公務員法に抵触する恐れがある。反復・継続的の判断は各行政機関の裁量に委ねられているが、同じ年に2回執筆していれば該当しうる。今回のケースは頻度や報酬額からみて小遣い稼ぎの要素が強く悪質だ。
執筆料が年間20万円を超えていれば確定申告が必要で、仮にしていなければ脱税だ。法律を取り扱う警察官は特に襟を正さなければならない。