JunJunの備忘録

2007年1月11日〜2012年10月31日

読書記録

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陽だまりの彼女

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『陽だまりの彼女』

越谷オサム著


新潮文庫,平成23年4月

定価:本体514円(税別)


金曜ロードショーでテレビ初登場「借り暮らしのアリエッティ」を見ないでブログを更新します。
先日、大学生協の書籍店で立ち読みをしていたら、「新刊」のところに『越谷オサム』の文字が!
越谷オサムは『ボーナス・トラック』でデビュー。
実力派として名前が浸透しつつあります。
僕がどこで越谷オサムを知ったのかと言うと…
はい、自分の出身高校のOBなんです。
高校時代には、図書館に『ボーナス・トラック』がまとまって貸し出されておりました。
大先輩というだけでなく、内容もエキサイティングで以来信頼を寄せておりました。

そこで埼玉から遠く離れた福島の本屋で越谷オサムを見つけてしまったのですから、衝動的に購入しちゃいましたね。
そして本作品も僕の期待を裏切ることなく楽しませてくれました。
今年は結構さまざまな本を読みましたが、2011年のマイ・フェイバリット・ブックスは、『陽だまりの彼女』に決定です!!
JunJun氏、推薦します。

『陽だまりの彼女』
奥田浩介は、中学3年の時に転校して以来顔を合わせることのなかった渡来真緒と、約10年ぶりに偶然の再会を果たす。
浩介が真緒と出会ったのは中学1年の2学期の始業日のこと。小柄で愛らしい顔だちの真緒は、性格の素直さもあって初めのうちは皆の人気者だった。しかし徐々にクラスメイトは、勝手気ままで団体行動を乱し、勉強のできない彼女をイジメの対象としていき、いつしか教師まで加担するようになっていった。
そこで浩介は真緒を守るためにクラスを敵に回すのだが、失敗。「いつキレるか分からない子」のレッテルを張られ、郊外への引っ越しを機に転校することになる。
それからしばらくの月日が流れ、忙しく働く中で弊社と御社という取引関係で再会する。取引先でありながらプライベートな関係が発展していき、やがて結婚にたどり着く。
しかし真緒には知られざる過去があり、真緒の両親は浩介との結婚に慎重な意見を出す。思いもよらなかった両親の対応に真緒と浩介は駆け落ちを決意し、実行に移す。そして幸せな日々を送る。

と、思いきや?真緒は病気持ちなのか、とそわそわさせ、一瞬「余命1ヵ月の花嫁」をイメージさせたかと思ったら違うぞ今度は、ミステリー小説かと思わせたら次は魔法使いか?と誘導する。最後はある有名な絵本のような展開を見せ、すべての謎が解決する。
読み終えてみれば伏線だらけで、勘の良い人なら結末がなんとなくわかるかも!と。全体的に込み入ってなく読みやすい。ただの恋愛小説のようで推理小説でもあり、子ども向けの物語(ファンタジー)のようでもある。恋人のいないクリスマスを過ごすには、憤りを感じることなく気持ちよく読めるちょうど良い小説だと思う。
読み終えてから30分くらい、感傷に浸った。
13年越しの恋か。

《背表紙の解説文》
幼馴染みと十年ぶりに再会した僕。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、僕には計り知れない過去を抱えているようで―その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる! 誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらい切なさも、すべてつまった完全無欠の恋愛小説。

経済学の哲学

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「経済学の哲学」
19世紀経済思想とラスキン

伊藤邦武

中公新書(2011)

定価:本体840円+税


(要約1200)

クセノフォンやプラトンは、銀などでできたいわゆるコインが、物々交換を容易にするための純粋な媒体として存在することを認めていたが、コインそのものがそれ自体として価値を有するという発想を取ることはなかった。
これにたいして、アリストテレスは貨幣が他の物品と変わらぬ交換価値をもつ独立の財であるとともに、他の財に比べてもその価値が気候その他の外的要因に影響されることのない、比較的安定した実質的価値をもつものであるとして、金属としての貨幣の独立の価値を認める議論を展開した。
アリストテレスは、貯蓄や交換という本質的役割を果たすコインについて冷静な分析を展開している点で、経済思想が単なる家政という主題を超えた「社会化された家政」としてのポリティカル・エコノミーという発想に合致しているのである。

アダム・スミスは、経済発展の「原因と結果」を吟味するための研究を行い、それを『国富論』にまとめた。
スミスは、社会の繁栄とは物質的な富が永続的に増加することであると想定した上で、それがもっとも容易に達成されるのは、必要以上に個人の自由を制限することのない社会であろうと考えた。
また、「富」というものの意味を、生産的労働と結びついたもの、すなわち生活の必要と便益に直結したものとして特定しており、その発生の源泉が労働にあることを確認している。

ジョン・ステュアート・ミルは、功利主義でいう「功利」とは、何かに役立つこと、有用であることであり、道徳の原理としての功利性とは、人々の幸福の実現に有用であるということであると考えた。
ミルは、自由放任からのあらゆるタイプの逸脱は、それが非常に大きな善をもたらすことがきわめて明白でないかぎり、基本的に「悪」であり、できるだけ避けるべきであると強く主張した。
しかしその一方で、政府が介入的な役割を果たすべき「大きな例外」として、教育や労働時間の管理、貧民の救済、文化遺産の保護などがあることを主張し、態度が分裂している。

そしてラスキンは、生産は消費のためにあり、消費は生のためにあるのであるから、生こそがあらゆる価値の究極的源泉として認められる必要があると説いている。
彼は商業主義的、貨幣偏重的経済感に対置して、人々が労働に誇りをもち、自分たちの社会を労働の精神的志向の高さによって建設しようとする経済のシステムを構想し、そのシステムにおいて追及されるであろう「名誉ある富」からなる社会を提唱した。
名誉ある富が追求される社会とは、人間の生に内在的な労働と価値の生産の意味が正当に評価されている社会システムであり、人々の利己的な権力の追求を抑制し、働くものの協働、助けあいを増大させようとする「穏やかな経済」からなる社会のことである。
今日のエコロジー的意識の表明は、名誉ある富の追求の存在いかんを問題視する姿勢を堅持するという意味で、現代社会のきわめて重要な契機となりうるのである。
(1200字)


(感想)
正直に言って難しかった。意味不明。ちんぷんかんぷん。
「序章」は、ほとんど理解できなかった。でも読み進めるうちにだんだんと書いてある文字が読み込めるようになってきて、ラスキンがどういう考えをもった人間だったのか、ということと、その歴史的な経緯を知ることができた。

そこでネットで調べてみると、学者先生の講評が見つかったので、参考までに転載しておく。

評・堂目卓生(経済学者・大阪大教授)
経済と環境の調和へ

「エコノミー」(経済活動)と「エコロジー」(環境への配慮)は、対立する言葉として用いられることが多い。
しかし、両者は、それぞれ「生活圏」(エコ)に関する「法則」(ノモス)と「論理」(ロゴス)のことであり、どちらも生活圏を安全・快適にするための資源の管理方法を意味する。エコノミーは、いつから本来の意味を忘れてしまったのか。どうやってエコロジーとの類縁関係を取り戻したらよいのか。
本書は、こうした問題意識に立って、19世紀イギリスの芸術評論家ジョン・ラスキン(1819〜1900)の経済学批判を再検討する。ラスキンによれば、経済学者の誤りは、生きるとは快楽を追求することであり、労働は苦痛以外の何ものでもなく、富とは苦痛を補い快楽を増す手段だと教えたところにある。あくなき富=快楽の追求は、自然環境を含めた他者への配慮を二次的なものにし、共同体や地球の生活圏を脅かすことになるだろう。
生きるとは理知や霊魂、肉体の完成を求めることであり、労働は完成のための創造的作業であり、富とは創造的作業のために無駄なく割り当てられた財産である。諸個人が「生」「労働」「富」を正しく認識し、誠実に活動すれば、共同体や地球の生活圏は、真の意味で豊かになるだろう。経済学者は、諸個人を育成し、社会の健全性を守る「守護者」でなくてはならない。
ラスキンの思想を机上の空論と一蹴することはできない。実際、彼の精神を受け継ぐ人びとによって1895年に「ナショナル・トラスト」(イギリスの歴史的建造物や自然的景勝地の保存を推進する基金)が設立された。また、インドではマハトマ・ガンディーが、ラスキンを師と仰いで非暴力の独立運動を展開した。思想が空論で終わるか現実のものとなるかは、受け取る者の信念に与える影響次第である。
本書を日本の新しいエコノミーを願う著者からのエールとして受け止めたい。

出典:読売新聞公式Webサイト http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20111017-OYT8T00494.htm

推薦文の模範解答を読んだ後に自分の要約を読み返すと、要約する時の視点がずれていたということに気がついた!

貧困の克服

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アマルティア・セン著
大石りら訳

『貧困の克服 ―アジア発展の鍵は何か』

集英社新書(2002)

定価:本体640円+税


(本文要約1000)

日本では百年以上も前、非常に早い時期から学校教育の普及と人間的発展を優先させてきた。
発展のために何よりも最初になされるべきは、金持ちや地位の高い人びとのためにではなく、むしろ貧しい人びとのためになるような、人間的発展と学校教育の普及の実現である。
一方インドでは、基礎教育をはじめとする、さまざまな人間的発展の中心的要素は、つねに無視され続けてきた。
その結果として、インドの成人人口の約半分は、今なお識字能力を欠いている。
文字が読めない一般の男女が国際的な規格と仕様に合わせた生産体制への関与、まして品質管理すらもできないのでは、グローバル化された貿易に参加する機会を利用することが難しい。

経済が急成長している最中はさまざまな社会集団がすべて同時に利益の恩恵を享受するが、経済危機が発生した時は、どの社会集団に属するかによって、境遇にかなり激しい格差が生じる。
過去の経済全体の成長がどのようなものであろうとも、その社会集団に属する人びとはほとんど無収入になりかねず、全体的な経済危機においては、飢饉と同様、最も不運な人々から次々に見捨てられていく。
そのために「保護のための安全保障」が手段としての自由として、重要視されなくてはならないのである。

民主主義形態の政府や比較的自由なメディアが存在する国々では、大飢饉と呼べる事態は一度も起こったことがないという事実がある。
発展というものは、相互に支え合い、人間のさまざまな自由の拡大のためのプロセスである。
外国人であっても、人権が特定の国の国民としてではなく人間としての権利とみなされている限り、それに対応する義務の範囲は市民権に関係なく、あらゆる人間を含めることができる。
現代世界においては、異なる文化の多様性を認めることが重要で、「西欧文化」「アジア的価値観」「アフリカ文化」などについての単純すぎる一般化は、私たちの生きる世界に分裂をもたらしている。

20世紀において世界の各地で発生した「飢饉」の原因は自然災害による食糧の供給不足ではなく、民主主義の欠如など政治的原因によることが多いということを明らかになった。
現在の安全保障の問題は、もはや東西問題ではなく南北問題である。
そこでは、途上国における貧困、階級や所得格差に基づく不平等などが内戦、紛争を引き起こす主な原因であり、社会や政治における民主主義こそが、世界平和を実現する道である。
(992字)

2011年3月11日14時46分18秒(JST)、東北地方太平洋沖地震が発生した。

私は福島の大学に通うので、この地震により精神的な苦痛を受けた。

自宅にいても何も手がつかず、どうすることもできないもどかしさを抱えていた時、ある友人がそっと助言をくれた。


「この1ヶ月を無駄に過ごしたら自分のやりたいことはできん、くらいの危機感っていうかがむしゃらさは必要かもね。
意外と今がこの先夢を叶えられるかどうかの分岐点やったりして。
やるべきこと思いつかんのなら残りの春休みの間に50冊本読んでみたら?」


そしてこの提案に乗って、1ヵ月で50冊を読むことを決めた。

読み始めるとすんなりいくもので、今まで何も手がつかなかったことが嘘だったかのようにあらゆることがうまく回り出した。

東京で短期のアルバイトも始め、順調に読書数も増え、ストレスも解消された。

しかし1日2冊のペースで読んでいくことはなかなか厳しく、電車に乗っている時はもちろん、アルバイトの休憩時間、夕食の後、就寝前など、可能な限り読書に時間を割いた。
今まで電車の中では音楽を聴いたり、Eメールを返信したりしていたが、読書プロジェクトをはじめて音楽を聴く時間はなくなり、メールも電車の乗り換え時や自宅から駅まで歩いている時に打ち込むなど、最大限時間を有効活用した。

おかげさまで1ヵ月延長となった春休みを、非常に有意義に過ごすことができた。

そして5月8日、予定よりも3日早くプロジェクトを達成できたので、ここに読書記録を残しておこうと思う。



以下、目録。
Twitter上で随時ツイートしていたものを、ここにまとめた。



4/12,「暗夜行路」志賀直哉(新潮文庫)【1冊目】

4/13,「風に舞いあがるビニールシート」森絵都(文春文庫)【2冊目】

4/13,「海の向こうで戦争が始まる」村上龍(講談社文庫)【3冊目】

4/14,「不撓不屈(下)」高杉良(新潮文庫)【4冊目】

4/14,「博士の愛した数式」小川洋子(新潮文庫)【5冊目】

4/15,「ナイフ」重松清(新潮文庫)【6冊目】

4/16,「田中角栄 その巨善と巨悪」水木楊(文春文庫)【7冊目】

4/16,「連合赤軍『あさま山荘』事件」佐々淳行(文春文庫)【8冊目】

4/17,「都市と水」高橋裕(岩波新書)【9冊目】

4/17,「蟹工船・党生活者」小林多喜二(新潮文庫)【10冊目】

4/18,「株主総会」奥村宏(岩波新書)【11冊目】

4/19,「地域再生の条件」本間義人(岩波新書)【12冊目】

4/20,「公共事業は止まるか」五十嵐敬喜・小川明雄(岩波新書)【13冊目】

4/21,「能力主義と企業社会」熊沢誠(岩波新書)【14冊目】

4/21,「神仏習合」義江彰夫(岩波新書)【15冊目】

4/22,「思想としての近代経済学」森嶋通夫(岩波新書)【16冊目】

4/22,「現代たばこ戦争」伊佐山芳郎(岩波新書)【17冊目】

4/22,「信州に上医あり—若月俊一と佐久病院—」南木佳士(岩波新書)【18冊目】

4/23,「狂牛病—人類への警鐘—」中村靖彦(岩波新書)【19冊目】

4/23,「豊かさとは何か」暉峻淑子(岩波新書)【20冊目】

4/24,「西の魔女が死んだ」梨木香歩(新潮文庫)【21冊目】

4/24,「ゆっくり歩け、空を見ろ」東国原英夫(新潮文庫)【22冊目】

4/25,「マイ・アメリカン・ノート ポトマックの両岸」筑紫哲也(朝日新聞社)【23冊目】

4/25,「旅をする木」星野道夫(文春文庫)【24冊目】

4/26,「最後の一葉」オー・ヘンリー(角川文庫)【25冊目】

4/26,「私とは何か」上田閑照(岩波新書)【26冊目】

4/27,「“It”(それ)と呼ばれた子 幼年期」ディヴ・ペルザー(ヴィレッジブックス)【27冊目】

4/27,「“It”(それ)と呼ばれた子 少年期」ディヴ・ペルザー(ヴィレッジブックス)【28冊目】

4/28,「“It”(それ)と呼ばれた子 完結編さよなら“It”」ディヴ・ペルザー(ヴィレッジブックス)【29冊目】

4/28,「“It”(それ)と呼ばれた子 指南編許す勇気を生きる力に変えて」ディヴ・ペルザー(ヴィレッジブックス)【30冊目】

4/28,「“It”(それ)と呼ばれた子 青春編」ディヴ・ペルザー(ヴィレッジブックス)【31冊目】

4/29,「カカシの夏休み」重松清(文春文庫)【32冊目】

4/30,「天皇の肖像」多木浩二(岩波新書)【33冊目】

4/30,「田舎教師」田山花袋(新潮文庫)【34冊目】

5/1,「地球環境報告」石弘之(岩波新書)【35冊目】

5/1,「豊国論 日本の未来のために」堺屋太一(文春文庫)【36冊目】

5/2,「アメリカの環境保護運動」岡島成行(岩波新書)【37冊目】

5/3,「人間失格・桜桃」太宰治(角川文庫)【38冊目】

5/3,「岳物語」椎名誠(集英社文庫)【39冊目】

5/3,「政治家の条件—イギリス、EC、日本—」森嶋通夫(岩波新書)【40冊目】

5/4,「スカイ・クロラ ―The Sky Crawlers」森博嗣(中公文庫)【41冊目】

5/4,「ナ・バ・テア ―None But Air」森博嗣(中公文庫)【42冊目】

5/5,「『死の医学』への序章」柳田邦男(新潮文庫)【43冊目】

5/5,「檸檬」梶井基次郎(新潮文庫)【44冊目】

5/6,「いつかパラソルの下で」森絵都(角川文庫)【45冊目】

5/6,「言語学とは何か」田中克彦(岩波新書)【46冊目】

5/7,「金融入門」岩田規久男(岩波新書)【47冊目】

5/7,「都市計画 利権の構図を超えて」五十嵐敬喜・小川明雄(岩波新書)【48冊目】

5/8,「会社法入門」神田秀樹(岩波新書)【49冊目】

5/8,「20代にしておきたい17のこと」本田健(だいわ文庫)【50冊目】

南木佳士の世界

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【ダイヤモンドダスト】南木佳士、文春文庫1992年
定価380円(本体369円) ※消費税率3%にて計算されている

【医学生】南木佳士、文春文庫1998年
定価(419円+税)


私が南木佳士と出会ったのは、昨年12月のことである。
夜半から降り続いた雪は朝になってもやまず、その日は一日中吹雪いていた。
そんな暗く寒い冬のある日に、私は東北地方のとあるターミナル駅の近くにあるレストランで、親しい友人と食事をしていた。
コースの食事を済ませお手洗いへ行く為に席を立ちしばらくしてから戻ると、テーブルの上には「ダイヤモンドダスト」の本が置いてあった。
この寒い日に共に食事をできた記念にと、彼からのプレゼントであった。

本をやり取りする。

この高度な知性のやりとりを二人とも気に入っている。

その日の帰りの電車の中で、早速プレゼントしてもらった本を開いた。
「ダイヤモンドダスト」は、「冬への順応」「長い影」「ワカサギを釣る」「ダイヤモンドダスト」の計4つの短編小説から構成されていた。


「冬への順応」は、タイ・カンボジア国境で3ヶ月間の難民医療活動に参加して、帰国したばかりの医師が主人公である。幼いころから知り合いだった女性が末期がんで入院し、その世話を焼きながらこれまでの自分の人生を振り返るという流れである。
振り返る中で、小学校の頃に父親の仕事の都合で信州から東京へと転校し好きだった女の子と離れてしまったこと、現役で大学に合格せず浪人時代に代々木駅で久しぶりにその子と再会してしまったこと、浪人しても首都圏の大学に受からず秋田の大学へと進学し文通しながらその子に思いをはせていたこと、遠距離からその子の気持ちが他へと移ってしまったこと、それ以来音沙汰はなかったのだが突然末期がん患者として入院してきて、その最期を見送るというストーリー展開である。

「長い影」は、主人公が参加したカンボジア難民医療団の帰国後1年目に開かれた忘年会の様子を題材としている。紛争地帯での過酷な医療援助を終え、チームのメンバー各々が自分の元あった職場へと戻りその1年後の再会。厳しい戦場を思い出しながら日本での豊かさに疑問を抱きつつあるメンバー達。その中のある女性が、忘年会で飲み過ぎ主人公に絡む。風呂場で散々な目に遭い、おもしろおかしくも考えさせられる小説である。

「ワカサギを釣る」も難民医療団に参加した主人公の物語である。主人公は看護士で、趣味のワカサギ釣りで余暇を楽しむ。カンボジアに派遣されていた時は、3カ月に1度ある4日間の休暇で町に出かけ女を買った。普段は暇さえあれば酒ばかりを飲んでいた。そんな主人公にはもともと日本国内でも友人は少なく、たまたまカンボジアで医療助手として通訳も兼ねたミンとは少し交流するようになり、一度だけ来日する。その時に一緒にワカサギ釣りへ行くのだが、その後再会したかは不明である。つまらない男なりの有意義な人生を描いている。

「ダイヤモンドダスト」は、芥川賞を受賞している作品である。看護士という立場から見た町の病院を描く。末期がん患者で入院しているアメリカ人宣教師マイクと主人公和夫の父親である松吉とのやりとりが、とても温かい。松吉はかつて電鉄の運転手として花型サラリーマンをやっていたが、和夫が小学校4年生の時、電鉄は廃止された。松吉にはバス運転手の声がかかったがそれを断り、たまに旅館におろすだけの商売にならないヤマメ釣りをやって毎日を送った。その頃から町の土地が別荘地として高値で取引されるようになり、松吉も土地を売って得た十分なお金でそれなりの生活をした。
一方アメリカ人宣教師マイクは、元は米軍の兵士として戦闘機を操縦していた。機械でつながった松吉とマイクだが、末期がんという病が二人を死に追いやる。田舎町の小さな病院だからできる、患者への細かい配慮。尊厳死について考えさせられる奥深い小説である。


雪の降る夜。乗っていた列車は定時運転を守り、私を確実に目的地へと運んでくれる。
ガタンゴトンと心地よい響きにふかふかなシートに身体を預けながら、親友から贈られた小説を味わう。
ふと窓の外を見ると、真っ暗な世界を斜めの方向へと白い雪が流れている。
南木佳士の小説をもっと読みたいと思った。

数日後、私は地元の古本屋に立ち寄った。
たまたま「医学生」という南木佳士の文庫本を見つけ、購入する。
今度は部屋に戻ってじっくりと読む。


「医学生」は、まだ設立されて1年しか経っていない秋田大学医学部を舞台としている。東京から都落ちした車谷和丸、村を挙げて医者を育成しようとしている信州の農村出身の桑田京子、新潟の小さな旅館の次男として生まれた小宮雄二、高校の教師を辞め28歳で入学した今野修二、この4人の登場人物を主体に医学部生の日課が小説となる。東京を忘れられない和丸、ひたすらマジメに勉強をつづける田舎娘の京子、水商売の女性との間に子どもを作ってしまいそのまま人生が決まってしまうおちゃらけな雄二、熱く医者を志望し努力を怠らない修二は年齢を感じてより多くの苦労を経験する。
最後は無事に卒業し医師国家試験にも合格した4人の登場人物の15年後を描いて幕を下ろすユーモアな小説である。
「ダイヤモンドダスト」同様、人間の最期をめぐって繰り広げられる世界は、今をどう生きるかにもつながり、人生について考えさせられる興味深い小説である。


この2冊を通じて、南木佳士という医者の考え方、生き方が伝わってきた。
素晴らしい本を紹介してくれた友人に感謝するとともに、ぜひあなたにも南木佳士の「ダイヤモンドダスト」と「医学生」をオススメする。

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