|
10月30日の待機の時に初めて、組織型プラスミノーゲンアクチベーター(T-PA)を脳梗塞に対して使用しました。
それに関して、記載しておこうと思います。
組織型プラスミノーゲンアクチベーター(T-PA)と言うのは、血栓溶解療法で使われる薬で、簡単に言うと詰まった血管を再開通させる薬です。
T-PAがこの10月11日脳梗塞に対する適応が取れました。効果があることは以前からも言われていて、脳卒中ガイドラインでも推奨グレードAの治療法で、海外ではとっくに適応が取れている薬なのですが、日本でもついに認可が下りました。
似た薬で、ウロキナーゼという血栓溶解をする薬がありますが、その薬が、全身で効果を出すのにたいし、T-PAは血栓でのみ効果を出すので、一番問題になる出血の率がかなり変わります。ウロキナーゼよりT-PAのほうがより安全で、効果が大きいのです。
今まで、脳梗塞の治療といえば、抗凝固薬や抗血小板薬、脳保護薬といった薬が中心で、どれも進行を予防するのが主な目的で、劇的に改善させる薬はありませんでした。それが、詰まった血管を再開通させるという画期的な薬がついに認可が取れたのです。
症例は57歳男性、右利き、体重85kg
現病歴と経過
平成17年10月30日(日曜日)、18時30分頃駐車場で倒れている所を発見され、救急搬送された。
来院時、右片麻痺(MMTで2-3程度)、失語、右半盲あり、CT上出血がなく、心房細動も認めたため、
心原性脳塞栓と診断した。(NIHSS14点)
20時40分からT-PA(アルテプラーゼ2880万単位)の投与開始、1時間で投与終了した。
終了直後、右片麻痺のレベルがやや悪化しMMT1-2程度となったが、直後のCTでも出血を認めなかった。
その後、速やかに右片麻痺は改善、MMT4-5まで回復した。
10月31日MRIを施行、左中大脳動脈領域に拡散強調画像で高信号が広範囲に見られたが、MRAでは再開通を反映して正常であった。高信号もまだら上の高信号で、再開通が示唆される所見であった。
同日よりエダラボン60mg/dayの投与を開始した。運動性失語は強く残るものの麻痺はわずかに残るのみと改善した。(NIHSS8点)
11月1日CT撮影、前日のMRIでのDWIの高信号領域に一致して、脳梗塞の領域を認めたが、明らかな出血は認めなかった。(NIHSS7点)同日から抗凝固療法、ヘパリン1万単位を投与。
11月2日より言語療法を開始。11月4日から嚥下訓練食開始予定。
ざっとこんなところです。
血栓溶解療法の成功例といっても良いでしょう。心原性脳塞栓にT-PAは非常に有効ですが、致死的な出血を起こすリスクが高まります。といっても、何もしなくても1割くらいの人がなくなるのが十数パーセントになる程度です。でも、一例目でこけたら今後使いにくくなるでしょうから、成功してよかったと思います。
うちの病院での第一例目の使用で、休日で自分ひとりであったため、最初の1時間は本当にドキドキしましたが、本当にうまくいってよかったです。
これからも、この治療により重度の障害を免れる患者さんは沢山いるでしょうし、ぼくも、それに関われるというのは幸せなことかもしれません。
|