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素材は暗黒工房様より頂きました
転載は不可でございまーす。
月夜の戦場ヶ原
大戦に散った戦士達の亡骸がいまなお残る地 女は唄う。 それは男を愛して愛して愛し尽くした唄。 女は舞う。 肌が透ける程、薄い衣装を振り飛び散るは深紅の雫 女は泣く。 己の悲しみを全て吐き出すように血涙が流れ染みる。 女は憎む 白く染まった月に吠える時、彼女は人生を終えた 今、帝都で話題になっているもの。 一つ、大女優の隠し子発覚 一つ、隣国の不穏な動き 一つ、野球の全国大会 一つ、神出鬼没の怪盗 そして、最大の話題が遷都祭。 帝都に今、薄暗い闇が覆おうとしていました。 先の大戦で大勝利を果たした帝国。しかしその勝利に酔い痴れたつかの間、戦争景気の反動で経済が低迷します。 これにより帝国議会は増税を決定するのですが、国民の反対運動が勃発。一時、軍が鎮圧に出るほどの暴動が起きるほど今、帝国は先行きが見えにくくなっていました。 そんな暗い世の中を変えようと、「政」(まつり)が考えるのは、古来より「祭」(まつり)。 帝国議会は帝都の遷都千七百年を記念した祭を開催を決めます。 この変わりなき発想は、人が進歩していない証拠かもしれません。 ですが、「祭」が一時とはいえ人民の心を明るくすることは、路線電車の窓から記念祭の準備で追われ忙しく働く多く人々の充実した表情に見て取れました。 記念祭まで後何日と記載された巨大看板が掲げられた風景が通り過ぎる頃、車内で隣の人が広げた新聞の記事が目に入りました。 記事にはこう書かれていました。 久遠院家のご令嬢が緊急入院。 帝国貴族の一つ、久遠院家は昔、関白も務めたこともある、由緒正しき大貴族です。 確か、記念祭の催しの一つとしてこの久遠院のご令嬢と剣持家の嫡男様が披露宴を行うというの聞いたことがありました。 剣持家とは士族から貴族に格上げされた家柄で、軍に数多くの一族出身者がいます。由緒正しき久遠院の姫を手に入れたとなれば、さらに剣持家は軍の影響を持つことでしょう。そして久遠院は剣持を後ろに持つことで政への再度権力復活を目論んでいる。というのが世間の見方です。 政略結婚 家の繁栄に全て捧げるのが、権力者の家に生まれた者の宿命なのでしょうか。 そう思いながら僕は夏龍七条の駅で降りました。 夏龍地区北西部住宅密集地、通称「道化師の迷宮」、はじめての者は必ず道案内がなければ帰って来れない、この複雑怪奇に溢れた魔境の奥深くには奇形高層建築物があります。 さまざまな形の建築物を繋ぎあわせたこの建築物を人はこう呼ぶのです。 魔女の館。 「先生、只今戻りました。」 館の最上階にあるドアを開けると、円形の広大な部屋の壁はすべて本棚に埋め尽くされ、天井には天体地図、宙に浮かんだ球状の世界が秒後とに回る。その真下にある大きな円卓で向かい合うように黒星魁(くろぼし かい)先生と、軍服がお似合いの九鬼慶一郎(くき けいじゅうろう)中尉様がいた。机には大量の書物が積み重ねられており、そのなかで唯一空いた場所で二人は、将棋の真っ最中。 「お帰り、晦(つごもり)君」 「いらっしゃいませ九鬼様」 ご友人である、九鬼様と先生はよくこの将棋を刺されます。九鬼様の余裕の表情と、眉間にしわ寄せた先生の表情を見るかぎりどうやら今回も将棋は九鬼様の勝のようです。 「魁(かい)、君の負けでいいね」 「慶一郎、私をここまで追い詰めるなんて強くなったわね。」 必死にすましているが悔しがっているのは表情にあらわれていた。 「僕は君に負けたことがないのだが。」 「仕方がないわね、そんなに言うのなら今日のところは、あなたの勝にしてあげるわ。」なぜか、上から目線です。 「・・・・潔くないな」 やれやれと九鬼様はため息をつく。 「わかったよ魁、私を勝たせてくれてありがとう。但し約束を通り、仕事をしてくれよ。」 「いいわ、他ならぬ慶一郎の頼みだから聞いて上げるとしましょう。晦君、私と慶一郎にお茶を用意してくれるかしら。」 「わかりました。、只今お茶をご用意いたします。」 「それと晦、(つごもり)君、あれは手に入れたかしら。」 「はい、先生のお言い付け通りの時間に出発、道も方角も指示どおりに向かい、春姫の洋菓子店でフランロマーニュを買ってまいりました。それにしても驚きです。僕の番でフランロマーニュが売り切れてしまいました。これも、先生の予想どおりですか」 「別に驚くことじゃないわ。四真を学べば真理に近付き魔術は成す。これはその初歩。覚えておきなさい。全てに意味があり、意味を理解さえすれば無駄はなくなり真理だけがのこることを」 とか、言いながら あっ危なかった〜と小声で言う先生。 僕が用意したお茶とお皿に乗せた生クリームをたっぷりのフランロマーニュに先生は一口食べて、「メチャウマ、バカウマ!もう最高!」などと喜んでいます。 「それにしても残念ね、誰さんが厄介事を持ってこなければ、今日はこれで素敵な一日で終わったのに。」 「すまないね。」九鬼様は 魁先生の唇から漏れた毒を美味しく戴く余裕を魅せる。 「ところで晦君、九鬼殿がここに来た理由がわかるかしら。」 「久遠院の姫様のことでございましょう。」 「なぜ、そう思うの。」 「九鬼様と剣持の御嫡男、剣持匡(けんもち ただし)様は軍大学の同期、許婚様が重いご病気ならば噂に聞く先生を九鬼様に紹介してもらいたいと、いつもならば新聞に載る前に手を打ちそうですが。」 驚いた表情を浮かべ、九鬼様は手を叩く。 「見事だ。」 「ちゃんと世の中を学んでいるようね。世をしることは人として生きるには重要なことよ。」 「はい、先生。」誉められるのはとても嬉しいです。 「さて」フランロマーニュを食べ終えた先生は席から立ち上がりました。 「では九鬼殿、早く終わらせて、晦君のお茶をゆっくりといただくとしましょう。」 |
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タヌキワールド全開ですね。続きが楽しみです♪
2012/10/10(水) 午後 10:05