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「近頃、マナーの悪い奴が多いよなぁ〜」
俺は都内の保険会社に勤めるサラリーマンで、他人のことをとやかく言えた義理じゃないが、少なくとも今日出会ったどの奴らより、俺は社会常識をわきまえているつもりだ。自分でも『約束は必ず守る』ということを信条にしている。
駅前の歩道橋ですれ違った若い二人組の男は、正面から俺が歩いてくるのに、道を少しも譲ろうとしなかった。橋の幅いっぱいを塞ぐように並んだままだ。俺は歩道橋の手摺りにぶつかるようにして、やっと奴らとすれ違った。その瞬間ですら、奴らは俺に一瞥もくれなかった。
電車に乗った時もそうだ。混んでる電車のドア近くにかろうじて乗り込んだ俺に向かって、ひとりの男が突進してくるじゃないか。かなりの大男で、しかも発車のベルとともに奴は加速した。奴はその電車に飛び乗ることだけを考えていて、もしその勢いでぶつかったら吹っ飛んでしまうような俺のことは眼中に無かったのだろう。俺は奥の隙間になんとか身を滑り込ませ、奴との激突を回避した。しかし、ついに奴からは「すみません」の一言も無かった。
満員の電車もターミナル駅を過ぎると空いてくる。俺の正面に座っていたサラリーマン風の男も、降車駅に着いたのか席を立った。
(おっ、ラッキー!)
俺がそう思った瞬間、3メートルほど離れた場所に立っていたオバサンが、まるでそれが当然であるかのように、空いた席に座ろうと歩き始めたのだ。
(はぁ? どう見ても、俺だろー?)
しかし、オバサンは俺の存在など無視だった。結局、俺は一度座りかけたその席をオバサンに譲った。そうしなければ、オバサンは「よっこらしょ」とか言って俺の膝の上に座りかねなかったからだ。
今日俺は凛子と夕食の約束をしており、時計を見ると約束の7時を既に回っていた。
(おかしいなぁ。かなり余裕をみて出たはずだけど。今日は凛子と俺にとって特別な日だというのに! 今日、俺は凛子に生涯の誓いを伝えるつもりだったのに!)
凛子に遅れると電話したかったが、なぜか携帯が見つからなかった。俺は結局、凛子に連絡が取れないまま、30分も遅れて待ち合わせ場所に到着した。
「ごめーん、凛子」
凛子は俺が連絡もせずに遅刻したことで怒っているのか、返事もしてくれなかった。俺はひとつ深呼吸をしてから、凛子に話しかけた。
「遅れて悪かった。でも、今日は凛子に・・・・・・ 凛子にどうしても話したいことがあるんだ」
よく見ると凛子はなにやら神妙な顔つきで電話をしており、まだ俺に気付かない。
「はい・・・・・・ はい・・・・・・ そうですか。幹雄さんの携帯に私のメッセージが・・・・・・」
「おーい!」
俺は凛子の目の前で手を振ってみた。凛子が俺に気付く気配はない。
すると突然、凛子はその場に崩れ落ちた。
「幹雄さんが事故だなんて……。 即死? 嘘でしょ?」
「なにバカなこと言ってるんだよ。俺ならここにいるじゃないか!」
それでもなお、凛子は俺の方を向いてくれなかった。
(俺が事故にあったなんて、誰がそんな悪戯を? こんな悪戯、マナーがどうのといったレベルじゃない! こんな悪戯をした奴だけは絶対に許さないぞ)
「凛子、安心しろ。俺はここに・・・・・・」
俺は凛子を優しく抱きしめた。いや、抱きしめようとした。しかし、俺には凛子を抱きしめることができなかったのだ。
「なぜだ? なぜ俺の腕が、凛子の体をすり抜けるんだ・・・・・・」
<おしまい>
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(^^)/
it_novelさん、そういう展開だったんですね・・・
最初は、もちろんこうなるなんて想像もつかなかった・・・
恋人に会う時点で、もしかしたらと思ったけれど(*^_^*)
また、楽しみにしています(^_^)v
2008/5/31(土) 午後 9:31
mariannnaさん 感想ありがとうございます。伏線が多すぎて途中でラストがバレバレかな・・・と思ってました。
2008/5/31(土) 午後 10:16 [ ペンネーム じゅんた ]
あら、本人だけ知らなかったんですね。
これから自分の状況を知ったときがどうなるのでしょう
ちょっと怖いかな^^
傑作ぽち
2008/6/3(火) 午後 10:28 [ - ]
はるさん 感想ありがとうございます!めったに頂けないポチまで・・・
2008/6/3(火) 午後 11:11 [ ペンネーム じゅんた ]