|
今日の物語です!
** ** ** **
気が付くと、僕は砂漠の真ん中に立っていた。
強い陽射しが、僕の黒い衣装にどんどん吸収されてゆく…… とても暑い。
遠くに丘が見える。だが、どうもその距離感がつかめなかった。その丘まで10分で辿り着けるのか。半日かかるのか。あるいは逃げ水のように、決して辿り着くことはできないのか。
距離感がつかめないのは、なにも砂丘との距離ばかりではない。全ての距離感がつかめなかったのだ。『自分と世界との距離感』と言ってもいい。自分がずいぶんと小さな存在に思えた。
僕はここで何をしていたのだろうか。記憶が曖昧だった。自分がどうやってここに来たのかも覚えていない。そして、さらに以前の記憶まで、僕の記憶全体が深い霧の底に沈んでいた。
「僕の名前はなんだっけか?」
「ん……? 名前? 最初から僕に名前なんて無いのかも」
思い出されるのは、強烈なひとつの記憶だけ。その記憶は、僕の頭に突き刺さった釘のように、深く記憶に刻み込まれていた。
僕は行列の中にいる。
先頭も最後尾も見えない。
誰が指揮を取っている訳でもないのに、全員が等間隔で連なっている。
皆の肩には荷物が乗っている。
肩の感覚は完全に麻痺していた。
誰ひとり言葉を発しない。
全員がただ黙々と前の者の背中だけを見つめていた。
誰も目的地を知らない。
あと10分で目的地に辿り着けるのか。
半日かかるのか。
あるいは、一生このまま歩き続けるのか。
今の僕に残された唯一の記憶。僕はその記憶にあるような日々から逃げ出して来たのかもしれない。
雲ひとつ無かった空が、突然大きな黒い影に覆われたかと思うと、大粒の雨が落ちてきた。
足元の砂がみるみる黒く染まり始める。悪魔の影か僕を飲み込もうとしているように思えた。その時、目の前の砂丘が突然崩れ、泥流が僕のすぐ横の砂を押し流していった。
「世界が壊れそうだぁー!!」
「コウちゃん! アリさんにジョウロの水なんか、かけちゃ駄目」
「……」
「やめなさい! お砂場にもう連れて来ないわよ」
「このアリ。きもちわるい。
さっきから、なにか……」
<おしまい>
|
(^^)/
it_novelさん、正体は蟻でしたか・・・
ディズニーの、バグズライフの世界ですね・・・
よくある光景でしょうが・・・生き物はそう思っているかもしれませんね・・・(^^;)
2008/6/10(火) 午前 7:00
mariannaさん 感想ありがとうございます。
正体は蟻でしたか・・・ ・・・じゃないんです。ホントは。
なにせ『さっきから、なにか喋ってるよ』と言われるんですから!
2008/6/10(火) 午後 10:28 [ ペンネーム じゅんた ]