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久しぶりの投稿になってしまいました。
今日の物語は、ある意味怖い話です。
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僕はいつも、会社帰りに渋谷で私鉄に乗り換える。その日も普段とまったく変わらない一日だと思っていた。ただ少し疲れていたせいか、僕には自分の足取りが幾分重く感じられた。同時に、周囲を歩く人間がやけに足早に感じられたものだ。
「みんな急ぎ過ぎだよ・・・・・・」と、僕は小声でつぶやいていた。
翌朝、僕は普段通り仕事に出掛けたのだが、その日は車両故障により電車がひどく遅れていた。運の悪いことに、その日は朝から大切な来客予定が入っていたのだ。僕は普段から十分余裕をみて早めに家を出ることにしているが、それでも間に合うかどうか心配になってくる。
(なんでこんな日に車両故障なんだ)
(あー。またノロノロ運転)
僕は何度も腕時計に目をやっては、イライラを募らせた。
(もうこんな時間!?)
電車は遅々として進まないのに、時間だけが淡々と経過していった。僕は腕時計を睨みつける。
「早いよ! おまえ」と、思わず腕時計に話しかけた僕を、周囲は奇異な目で見つめていた。
僕は車内で携帯電話を使うことを躊躇っていたのだが、いよいよ会社に連絡しようかと携帯を手にした瞬間、幸いにも電車は急にペースを上げ始めた。そしてその後は、先ほどまでのノロノロ運転が嘘のように電車は順調に運行した。
(良かった。これなら楽勝で間に合う)
僕はその後、時刻を気にする必要も無く会社に到着した。
「まいったよ。車両故障だって。遅れるかと思った」
「流山さん、お疲れ様でした」
アルバイトの池田さんは、いつも笑顔で答えてくれる。
「そうだ。まだ僕にお客さん来てないよね」
「もーっ、大変だったんですよ。流山さんの携帯は繋がらないし・・・・・・。お客様には1時間も待っていただいたのですが、結局怒ってお帰りになりました」
「なんだって? そんな・・・・・・」
僕がそう言いかけた時、正面の壁に掛かった時計が目に入った。時計の針は11時25分。
(11時25分? そんな馬鹿な! 僕が遅れたのはせいぜい10分くらいのはずだ。これじゃあ、3時間も遅れたことになる)
「ところで流山さん? どうして今日はそんなにのんびりしているんですか?」
「のんびりしてた訳じゃないよ。電車が遅れたんだって」
「そういう意味じゃなくて。どうしてそんなにゆっくり動いたり、ゆっくり喋ったりしてるんですか?」
「どういう意味?」
「まるでスローモーションみたいですよ。なにか新しい健康法ですか?」
「馬鹿なことばかり言うなよ。そう言えば、君こそどうして今日はそんなに早口で喋るんだい?」
「私は普通ですよ。流山さんが遅いんです」
池田さんの言葉は、間違いなくどんどん早口になっていった。そればかりか、部屋の中にいる全員がまるでテープの早送りのように猛スピードで動き出している。
「いったい、どうなっているんだ・・・・・・」
もういちど壁の時計に目をやると、秒針が吹き飛びそうなくらいの速さでクルクルと回っていた。
「流山さん? ナガレヤマサン? ナガレ・・・・・・ ダイジョ・・・・・・ キュルルルル 〜」
池田さんの言葉はもうほとんど聞き取れなくなっていた。逆に彼女の目には、僕が止まって見えているのではないだろうか。僕は冷静に状況を分析していた。どうやら僕の時間だけが何故だかどんどん遅くなっているらしい。だから逆に周囲の時間が早く感じられるのだ。
(これからどうなる? 僕の時間は、また元に戻るだろうか)
僕は、僕の時間が再び本来のペースを取り戻し、皆と同じスピードになってくれることを期待した。しかし、それもどうやら無理らしい。
壁の時計は、長針がものすごいスピードで回転していた。
次に短針が猛スピードでの回転を始めた。
全ての針が見えなくなった。
周囲の景色から、あらゆる動く存在が消えた。
突然部屋の中が真っ暗になり、すぐにまた明るくなった。
明暗の間隔が短くなり、点滅を繰り返した。
(もうすぐ僕の時間は止まってしまうに違いない)
(あぁ。どうなってしまうんだ?)
(吐き気がする)
(うっ)
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【おしまい】
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どうなってしまうのかしら、みんなあっという間に年老いて
消えていくの?
それとも流山さんの時間だけが止まってしまうの?
ゆっくり流れる時間はありがたいけど、
自分だけが取り残されるのは困ります〜
すごく怖いお話しです。傑作ポチ☆
2008/7/21(月) 午前 0:46 [ - ]
はるさん 感想ありがとうございます。 ホント、どうなるんでしょう・・・ なんて無責任な作者です(笑)。それにしても時間は絶対的なものではないらしいですから、何が起きるか分かりませんね!?
2008/7/21(月) 午前 1:14 [ ペンネーム じゅんた ]