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今日の物語は、ひとによっては怖い話かも!? **** **** **** 「それでは、お客さま。始めさせていただきます」 白衣をまとった女性が大串幸雄に話しかけた。 「お願いします」 「まず肩の力を抜いて、深呼吸してください」 「ハー、フーッ」 「それでは、お預かりした写真をディスプレイに映します。彼女のことだけをイメージしてくださいね」 ディスプレイには波月(はづき)ミサの写真が映し出された。 「あっ…… か、かわいい方ですね」 「えぇ、まぁ」 「失礼しました。では、検査を始めます。これから彼女のお話を、少し聞かせていただきます。これは検査を正確に行なうためには必要なことですので、御了承ください」 「彼女のお名前は?」 「坂田桃子です」 「坂田桃子さん・・・・・・ ですか。お名前は検査結果証明書に記載されますが、間違いございませんね」 「はい。大丈夫です」 大串幸雄には付き合っている桃子という女性がいた。付き合って2年になる。今回は彼女の方から、検査の話を持ちかけられたのだった。大串幸雄は最初反対したが、あまりに反対するのもマズイ気がした。 二人が別々の場所で検査を受けることには、桃子も賛成だった。 「坂田桃子さんと初めて出会われたのは?」 「ネットです」 「そうですか。そう言えば、桃子さんってネットアイドルの波月ミサに似てません?」 「えっ? だ、だれですか? それ」 「ごめんなさい。余計なこと言っちゃって」 「いえ」 「続けますね。坂田桃子さんの一番素敵なところは?」 「彼女は僕のことを裏切らない。絶対に嘘もつかない・・・・・・」 その後、彼女に関する質問が30分も続いた。 数年前のことだった。人が怒りを感じた際に脳から分泌される物質が発見された。その後、脳内物質発見ブームとも言える研究成果が続き、その成果のひとつが『愛情物質』だった。血液からでも脳内物質を正確に測定できる技術が開発されると、それはビジネスとして注目され始めた。 「お疲れさまでした。次が最後の質問です」 「はい」 「あなたにとって坂田桃子さんはどんな存在?」 「特別な存在です」 最後の質問が終わるとやっと採血が行なわれ、大串幸雄は解放された。 ◇ ◇ ◇ ちょうど同じ日。都内某所にある他の脳内物質検査センターで、検査を終えた女性スタッフが所長と話をしていた。 「所長、いいんですか? 今日の坂田桃子さん」 「なに? ちゃんと陽性反応が出たんだろう?」 「ええ。レベル10です」 「なんの問題も無い。彼女の気持ちに嘘は無い訳だ」 「でも、あの写真。お相手の方じゃないんです。木下拓哉なんです」 「誰だそれ?」 「人気グループのヴォーカルですよ!」 「そうか。とにかく余計な詮索はいかん」 「詮索というレベルじゃないですよ。これは」 「まぁまぁ。そもそも愛情の深さを、ドーピング検査みたいに量ろうというのが間違ってるんだ。中にはじわじわ深まる愛だってあるだろうに」 「ホントです」 「そう言えば、君も来月結婚だったな」 「ええ。彼の気持ちはもう確認済みです・・・・・・」 <おしまい>
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想像以上の良さに驚きました。
2009/9/21(月) 午前 11:26 [ メル友 ]
全然更新しておらず、久しぶりに見に来たら、コメントをいただいていて嬉しかったです。ありがとうございます!
2009/9/23(水) 午前 1:05 [ ペンネーム じゅんた ]