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ずいぶん、ご無沙汰してしまいました・・・・ 久しぶりにしては駄作ですが、例によってショートストーリーをどうぞ! ** ** ** ** ** ** ** 「わたし、今日はコータのこと、ずっと待っています」 僕は、今朝届いたその短く不可解なメールを眺めながら考えた。 <誰だろう?> 今日は誰とも約束などしていない。アドレスにも見覚えはなく、クラスの友人でも、ゼミ仲間でも、バイト仲間でも無いはずだった。僕のメールアドレスには「kouta」という文字も入っている。きっと別のコータ宛ての間違いメールに違いない。 夕方になって、僕はふと再びメールのことを思い出した。僕はもう一度、過去にアドレスを教えたことのある人を順に思い出してみる。あれこれ記憶を辿っている瞬間、再びメール着信を知らせるアラームが鳴った。 「今日は寒い。吐く息が白いもの。でも、わたしはここでコータを待ちます」 まだ11月初旬だというのに、今日は12月並みに冷え込んだらしい。こんな日に、彼女は朝からずっと僕を待っているというのか。まさか屋外ではないだろうが、いったい何処で僕を待っているのだろう? 彼女のことを考えているうちに、僕は少し心配になってきた。実は僕の方が、誰かとの約束を忘れてしまっているのではないか。 「ゴメン。ケータイを机に置き忘れてて、夕方になって君のメールに気付いたんだ。今日の約束、待ち合わせ場所は何処だっけ? 本当にゴメン。 from コウタ」 僕は思い切ってメールを返してみた。しかし、とても本当のことは書けない。もちろん、「君は誰?」などとも聞けなかった。次の返事で何か思い出すかもしれない。 彼女からの返事は、すぐに返って来た。 「コータと約束はしてない」 「えっ? 約束もしてないのに僕を待っているのかい? 何処で僕を待っているというんだ」 「とても遠いところ。でも大丈夫。コータはここに来る」 「場所が分からないのに行けないよ! そうだ。何か場所のヒントは無いのかい? 手掛かりがあれば、君を探せるかもしれない」 「わたしを探すって、コータはわたしを知ってるの?」 それはこっちが言いたい台詞だった。ますます訳が分からなくなってくる。 携帯がまたメール着信を告げた。 「あと30分」 「30分って、どういう意味?」 「コータに会えるまでの時間。あと29分」 「そんなこと言われても、何処に行けばいいんだ? それに、そこは遠いんだろ? そもそも、君はいったい誰?」 「あと27分。わたしは、ずっと前からここでコータを待っている」 「どうして僕を待っているんだい?」 「待つしかないから。コータに会えるまであと25分」 僕は彼女のメールを幾度も読み返しては、何とか状況を理解しようと努力した。冷たい外気で頭を冷やしてもみた。しかし、いくら考えたところで、得られる結論などあるはずがなかったのだ。 「駄目だ。意味が分からないよ」 「いいの。あと3分」 僕はなんだか恐くなってきた。これが誰かの悪戯なら、かなり上出来だ。 「あと2分」 「あと1分」 僕は、このカウントダウンの最後を決して迎えてはならない気がした。部屋の時計は9時59分を示している。 「30秒」 「10秒」 まさにカウントダウンと言えるそのメールを読んだところで、僕の手から携帯がスルリと滑り落ちた。知らぬ間に、僕の掌は冷や汗で濡れていた。 ◇ ◇ ◇ 窓からは朝日が射し込んでいる。 誰もいない部屋の真ん中にポツンと携帯電話が残されていた。 誰かに置き去りにされたような携帯電話。 この携帯電話の持ち主は、朝からどこかに出掛けているのだろうか。 よく見ると、携帯のメール着信ランプがオレンジ色に点滅している。 この携帯電話の持ち主が、再びこの部屋に現れることはもう無いないように思われた。 ◇ ◇ ◇ 何年かが過ぎた。 洋子はその日、知らない相手から妙なメールを受け取った。 「僕はヨーコのことを、ずっと待っています・・・・・・ 浩太」 <おしまい>
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