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文楽に登場する寺社

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  前回『西国33観音霊場』の札所(ふだしょ)になっている寺院を紹介しましたが、この札所群の中に浄瑠璃の話に境内を貸しているところが幾つかあります。今回はそれを取り上げてみようと思います。

  ひとつめは六角堂、『西国33観音霊場』の18番札所です。『桂川連理柵(かつらがわ れんりのしがらみ)』に境内を貸しています。六角堂の正式名称は、紫雲山六角堂頂法寺(しうんざん ろっかくどう ちょうほうじ)と言います。華道家元池坊の寺という方がとおりが良いのかもしれません。天台系の単立寺院で、開基は聖徳太子、本尊は如意輪観世音菩薩(にょいりんかんぜおんぼさつ)、創建は用明天皇2(587)年です。http://www.ikenobo.jp/rokkakudo/ 場所は京都市中京区です。

  2つめは書写山、『西国33観音霊場』の27番札所です。『鬼一法眼三略巻(きいちほうげん さんりゃくのまき)』に境内を貸しています。書写山の正式名称は、書写山圓教寺(しょしゃざん えんきょうじ)と言います。宗派は天台宗で、開基は性空(しょうくう)上人、本尊は六臂如意輪観世音菩薩(ろっぴ にょいりんかんぜおんぼさつ)、創建は康保3(966)年で、 姫路市にあります。西の比叡山とも言われ古くから鎮護国家の道場です。あの武蔵坊弁慶もここの学生(がくしょう)であった時代があるとされています。映画の撮影にも使われるそうで、「ザ・ラスト・サムライ」にも出ているそうです。1970年代の国鉄キャンペーンディスカヴァージャパンで取り上げられ、全倍版のポスターが制作されています。http://www.shosha.or.jp/

  『鬼一法眼三略巻(きいちほうげん さんりゃくのまき)』では、ほかに2つの寺院が境内を貸しています。1つは鞍馬寺(くらなでら)もうひとつは延暦寺です。2つとも牛若丸と弁慶ゆかりの寺です。
鞍馬寺 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9E%8D%E9%A6%AC%E5%AF%BA
    http://kuramadera.com/
延暦寺 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BB%B6%E6%9A%A6%E5%AF%BA
    http://www.hieizan.or.jp/

  4回目は「説話」を元にした作品を取り上げてそこに登場する寺社を取り上げます。その前に、「説話」ってどんなものか御存知ですか?「説話文学」とか「仏教説話」とも言いますが、仏教や神道などの「説教」(「教えを説く」、すなわちその根本原理を説明すること)や「説法」(「法を説く」、すなわちそのしくみを説明する)を大衆に解り易くするために物語化したものを言います。古典における説話を集めた最も有名な物語は『今昔物語』です。仏教の伝来は、天竺(インド)から震旦(中国)、そして本朝(日本)という経路をたどり、この三つの国の関係は日本の文化にとって大きな意味を持っていくとされ、『今昔物語』の構成もこの3ヶ国を取り入れています。更にこの物語が筆写・口伝等で現代まで千年ほど伝わってくる中で、失われたものを拾い集めた『宇治拾遺物語』があります。『今昔物語』とダブっている話もありますが、見かけないものもあります。ただ、文体は少し劣るようで作者・編者の質は『今昔物語』を作った人のほうが優れているようです。
 
  文楽での説話系のものは、私の知る限りでは2つです。どちらも原作者未詳となっていて古典の物語に取材しながらも筋や話の展開は文楽オリジナルです。2つは時代物と世話物に別れていますがともに明治時代の脚色・補筆で2世豊澤段平後妻の加古千賀が文楽に仕立てています。曲は勿論、2世豊澤段平のてになるもので初演は『壷坂霊験記(つぼさか れいげんき)』明治12(1879)年大阪大江橋席(明治20年新曲にて大阪稲荷彦六座で再演)『良弁杉由来(ろうべんすぎの ゆらい)』明治20(1887)年大阪彦六座で、明治の佳作と言われています。共に観音霊験記『卅三所花の山』の一節です。

  『卅三所』というのは西国33箇所観音霊場の事です。 http://www.saikoku33.gr.jp/
『良弁杉由来』では二月堂(東大寺)を良弁と母との出会いの場にしているために、(本尊に十一面観音観音<じゅういちめんかんぜおんぼさつ>を有する)二月堂が33所のひとつかと見えるが実はそうではなく、母が子の産着に縫いつけた志賀の里の「如意輪観音<にょいりんかんのん>の御守」を出している寺が33所のひとつでした。ですから、人形浄瑠璃の中では大きくは取り上げられませんが、志賀の里と呼ばれる現在の大津市の一部にあってその御守を出している園城寺(通称:三井寺、14番観音札所)も『良弁杉由来』関連寺院になるわけです。

  もうひとつの『壷坂霊験記(つぼさか れいげんき)』ゆかりの壷坂寺(壷坂山南法華寺)は6番札所です。夫婦の情愛と不幸、壷坂への参詣と十一面千手千眼観世音菩薩による奇蹟が描かれているのが浄瑠璃です。

真言宗  壷坂山南法華寺 http://www.tsubosaka1300.or.jp/ 十一面千手千眼観世音菩薩
天台寺門宗総本山 三井寺 http://www.shiga-miidera.or.jp/ 如意輪観世音菩薩
東大寺二月堂 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E5%A4%A7%E5%AF%BA 十一面観世音菩薩

  それではひとつめ。『芦屋道満大内鑑(あしやどうまん おおうちかがみ)』からとりあげましょう。『信太の杜(しのだのもり)』として登場しますが、まずは大阪府和泉市の「葛葉稲荷神社(くずのは いなり じんじゃ)」と本社の和泉三之宮:聖神社(ひじり じんじゃ)。これは葛葉稲荷自体が聖神社境内にあるというということで、語り口的には「葛葉稲荷神社」(泉州信太森葛葉稲荷)で良いと思います。ほかには、阿倍野区阿倍王子神社(あべおうじじんじゃ)で、飛地には晴明神社(せいめい じんじゃ)があります。文楽・人形浄瑠璃の原作は大阪界隈の歴史や謡曲などに題材を取りますので2つほどもその土台として背景が見えれば、物語の解釈の手助けになれば良いのです。

  信太森葛葉稲荷神社 http://www2.ocn.ne.jp/~kuzunoha/ 大阪府和泉市葛の葉町2
  JR阪和線 北信太駅から徒歩5分
  由緒は神社ホームページで見てください。

  阿倍王子神社 http://abeouji.tonosama.jp/ 大阪市阿倍野区阿倍野元町9−4
  大阪市バス 天王寺(阿倍野橋)バス停より住吉車庫前行に乗り王子町王子神社前にて下車。
  阪堺電鉄上町線 東天下茶屋駅下車。南東へ徒歩2分。
  現在はこちらが本社で安倍晴明神社が末社となっていますが、室町・安土桃山時代頃は、
  安倍晴明神社の社家の保田氏が神主を兼務した時期があり、逆の時代もありました。
  現在は安倍晴明神社側が阿倍王子神社の飛び地になっています。

  安倍晴明神社 http://moura.jp/uranai/abeseimeijinja/annai.html 
  大阪市阿倍野区阿倍野元町5−16
  アクセス・阪堺上町線東天下茶屋駅下車、東南へ徒歩5分
  由緒等はホームページで。

  あまりにも有名な話なので今更解説でもないのですが、芦屋道満(法師陰陽師で播磨の弓削の出身)や白狐など持ち出して安倍晴明という陰陽師とその時代をワンダーランドの中において、異様さを強調する手法をとることで目立つ存在にしていたのでしょう。おそらく今の我々よりも埋もれてしまった歴史が多く、その人となりを想像することができなくなっていた時代の産物として、スペクタクルは楽しめたのだと思います。

  と、ここまで話して私まだこの演目(『芦屋道満大内鑑(あしやどうまん おおうちかがみ)』)を見ておりません。是非、文楽特有の表現の仕方を楽しんでみたいものだと思いました。

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  前回は時代物のピックアップを行ないました。今回は世話物をピックアップします。また、第3回以降は、(知っていれば)文楽への登場の仕方とその寺社の説明をしようと思います。>見たものもありますし、まだのもあります。行ったことがあるのもありますし、ないのもあります。それぞれ経験のあるものについては、ガイド以上のお話ができると思います。

  それでは、世話物のピックアップを始めます。
<世話物>
『生玉心中(いくたま しんじゅう)』
天満社<天満天神社(てんまのてんじんしゃ)

『女殺油地獄(おんなごろし あぶらのじごく)』
野崎観音(のざき かんのん)

『桂川連理柵(かつらがわ れんりの しがらみ)』
六角堂(ろっかくどう)

『曽根崎心中(そねざき しんじゅう)』
生玉社(いくたま しゃ)

『壷坂霊験記(つぼさか れいげんき)』
壷坂寺(つぼさかじ)

『夏祭浪花鑑(なつまつり なにわ かがみ)』
高津神社(こうづ じんじゃ)

『艶容女舞衣(はですがた おんなまいぎぬ)』
千日寺(せんにちでら

以上が世話物中に出てくる寺社です。引き続き、舞踊劇からピックアップします。

『小鍛冶(こかじ)』
伏見稲荷神社(ふしみ いなり じんじゃ)

『釣女(つりおんな)』
西宮戎神社(にしのみや えびす じんじゃ)

『花競四季寿(はなくらべ しきの ことぶき)』
関寺(せきでら)

『盲杖桜雪社(もうじょうざくら ゆきのやしろ)』
明石人丸神社(あかし ひとまる じんじゃ)

以上です。

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  文楽を見に行く楽しみのひとつに、「文楽の演題や物語中に登場する寺社を訪ねる」或はその逆を以ってどんな風に「設定されているのか」・「利用されているのか」があります。故事来歴・仏教説話に基づく話や、ある種のPR(CM)として話の筋に深くかかわるものから、有名地・景勝地としてローカルをイメージさせる背景として利用されるものまで色々あります。まずはそれらを最初に書き出してみて、演題に使われているものかそうでないか、どんな登場の仕方かを種類分けをしてみて次回からその寺社の紹介をします。身近な場所だったり、かつてブームや流行の渦中にあったところだったりすることで、文楽で語られる場所や物語に近づけるかもしれません。そのようなことから「古典芸能って難しくない」と思っていただければ良いかなと思います。それではまず時代物から拾い出しを始めましょう。

 <時代物>
『芦屋道満大内鑑(あしやどうまん おおうちかがみ)』
信太の杜(しのだのもり)<「葛葉神社(くずのはじんじゃ)」
・<「阿倍王子神社(あべのおうじじんじゃ)」

『伊賀越道中双六(いがごえ どうちゅうすごろく)』
円覚寺(えんがくじ)

『絵本大功記(えほん たいこうき)』
妙国寺(みょうこくじ)・本能寺(ほんのうじ)・妙心寺(みょうしんじ)

『加賀見山旧錦絵(かがみやま こきょうの にしきえ)』
『梶原平三誉石切(かじわらへいぞう ほまれのいしきり)』
『仮名手本忠臣蔵(かなでほん ちゅうしんぐら)』
鶴ヶ岡八幡宮(つるがおか はちまんぐう)

『敵討襤褸錦(かたきうち つづれのにしき)』
大安寺(たいあんじ)

『仮名手本忠臣蔵(かなでほん ちゅうしんぐら)』
光明寺(こうみょうじ)

『鬼一法眼三略巻(きいちほうげん さんりゃくのまき)』
書写山(しょしゃざん)・鞍馬寺(くらまじ)・比叡山延暦寺(ひえいざん えんりゃくじ)

『祇園祭礼信仰記(ぎおん さいれい しんこうき)』
祇園八坂神社(ぎおん やさかじんじゃ)・金閣寺(きんかくじ>鹿苑寺《ろくおんじ》金閣)
志貴山城(しぎさんじょう>信貴山朝護孫子寺(しぎさん ちょうごそんしじ))

『卅三間堂棟由来(さんじゅうさんげんどう むなぎの ゆらい)』
三十三間堂(蓮華王院(れんげおういん)と読みます。)

『出世景清(しゅっせ かげきよ)』
熱田大宮(熱田神宮(あつた じんぐう))

『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅ てならいかがみ)』
大宰府(だざいふ)・吉田神社(よしだじんじゃ)・安楽寺(あんらくじ)

『花上野誉碑(はなうえの ほまれの いしぶみ)』
志度寺(しどじ)

『彦山権現誓助剣(ひこさんごんげん ちかいの すけだち)』
彦山権現(彦山神社(ひこさん じんじゃ))

『日高川入相花王(ひだかがわ いりあいざくら)』
道上寺(どうじょうじ)

『平家女護島(へいけ にょごのしま)』
厳島神社(いつくしま じんじゃ)

『女景清八島日記(むすめ かげきよ やしま にっき)』
清水寺(きよみずでら)・熱田大宮(熱田神宮(あつた じんぐう))

『義経千本桜(よしつね せんぼんざくら)』
伏見稲荷(ふしみいなり)・吉野山<吉野神宮(よしのじんぐう)・金峯山寺(きんぷせんじ)

『良弁杉由来(ろうべんすぎの ゆらい)』
東大寺(とうだいじ)・二月堂(にがつどう)

以上時代物。

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