保守の源流を訪ねて

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◆【出版インサイド】『紫禁城の黄昏』 岩波文庫版は何を隠したか
 清朝最後の皇帝、溥儀(ふぎ)の生涯を描いた映画「ラストエンペラー」の種本として知られるR・F・ジョンストン著『紫禁城の黄昏』(一九三四年発行)の完訳版(祥伝社)が売れている。上下二冊、合わせて四千二百円という大作にもかかわらず、発行部数は一万セットを超えた。
 このヒットの背景には、映画の公開を受けて平成元年に出版された岩波文庫版に対する疑念の広がりがあった。岩波文庫版には原著を知る者にしか分からない、重大な削除が施されており、「隠蔽(いんぺい)された事実を知りたい」という声が、ネット上に飛び交っていたのである。

 岩波文庫版のあとがきに、訳者(入江曜子、春名徹)はこう記している。「原著は本文二十五章のほか、序章、終章、注を含む大冊であるが、本訳書では主観的な色彩の強い前史的部分である第一〜十章と第十六章『王政復古派の希望と夢』を省き、また序章の一部を省略した」

 完訳版を発行した祥伝社の角田勉編集長は「原著を全部翻訳すると一巻に収めることができないし、一章から十章には、映画に登場したジョンストンが出てこない。商売として考えれば、ここまでは理解できます。しかし、十六章全体と序章の一部削除は、政治的意図が働いたとしか思えません」と話す。

 『紫禁城の黄昏』は、溥儀の家庭教師として五年余り紫禁城に暮らした英国人学者ジョンストンが、清朝末から満洲国建国にいたる歴史の動きを内側から詳細に記した作品で、歴史資料としても一級の価値を持つといわれる。

 問題の十六章で扱われているのは、中華民国の成立(一九一二年)から満洲国建国(一九三二年)にいたるまでの君主制主義者の動静だ。

 ここでジョンストンは「当時のシナの多くの地域で人々が共和国に幻滅しきっていたことは間違いない」「シナはすでに満洲人を異民族、すなわち『夷(い)族』であると宣言し、その根拠にもとづいて、満洲人を王座から追放した」と記し、君主制主義者の希望が、万里の長城の北にある清朝の故郷、満洲に向いていたと、当時の状況を伝える。そのうえで「日本と中華民国が抗争すれば、自分たちが待ち望む好機が訪れるだろうと君主制主義者は考えていた」と書く。

 つまり、君主制主義者は、日本を利用して満洲に建国を企てていたというのである。「満洲国は大陸侵略を企図した日本が溥儀を傀儡(かいらい)にして建てた」とする「東京裁判史観」とは、まったく逆の事実をジョンストンは記していたわけだ。

 完訳版の監修者である渡部昇一上智大学名誉教授が「『紫禁城の黄昏』が極東軍事裁判(東京裁判)に証拠書類として採用されていたら、あのような裁判は成立しなかったであろう」と述べる理由はここにある。

 削除について岩波文庫編集部は「訳者のあとがきに尽きる。それ以上付け加えることはない」と話すが、同社の出版傾向を知る者にとっては、本当に同社と訳者に政治的意図がなかったのかという疑念は残る。その判断は読者に任せたい。

 桑原聡

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