保守の源流を訪ねて

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◆古森義久・編集特別委員 ウォールストリート・ジャーナル寄稿 「歴史問題」から脱却の時
 米紙ウォールストリート・ジャーナル(アジア版)が四日付のオピニオン面で、産経新聞の古森義久ワシントン駐在編集特別委員による長文の寄稿を掲載した。中国国内の反日デモを受けた中国政府の対応や日本の立場に論及したもので、中国総局長を務めた古森委員の寄稿掲載は、この問題に対する米国やアジアでの関心の高さを示している。寄稿の全文は次の通り。
                  ◇
 日本の首相にとって、いわゆる「歴史問題」をめぐって中国との交渉に当たるのは辛いことに違いない。日本の首相はけんか腰の中国に対し、あたかも過去二十五年間十一代にわたる歴代首相の誰一人として謝罪しなかったかのように(事実はどの首相も謝罪したのだが)、前世紀に起きた出来事について謝罪する対応をしなくてはならないのである。
 悲しいことに、首相は自分の謝罪が決して十分とされないことに気付く。中国側は、日本の謝罪を受け入れる代わりに、ハードルを上げ、謝罪は「正真正銘の反省に基づき」とか「行動を伴う」ものでなければならない−といった、あいまいな要求や追加的条件を積み上げてくる。日本の首相はさらに、軍事志向の強い中国の指導者たちによる日本の過去と現在の「軍国主義」を非難する説教を忍耐強く聴かなければならないだろう。
 これが、四月二十二日のアジア・アフリカ首脳会議(インドネシア)で、日本の過去の中国への侵略について謝罪表明した後に、小泉純一郎首相がおかれた苦境である。案の定、中国の胡錦濤国家主席はこの翌日、謝罪を不十分だとして拒否する北京の従来のやり方にならい、日本の反省は「誠実な行動を通じて」表明されるべきだと小泉首相に告げた。これに対し小泉首相は、中国政府が許容した暴力的なデモ参加者による日本大使館や日本人の商店などへの攻撃に対する謝罪や補償を求めなかった。
 もう一歩踏み込んでみれば、最近の暴力的な出来事の原因と宣伝されている日中のいわゆる「歴史問題」は、大部分が中国共産党によって作られたものであることに気付く。それは歴史自体というよりも、外交的計略や現代政治から派生したものなのだ。
 中国における一般的な主張とは逆に、戦後の日本は戦争と軍国主義の歴史を苦い教訓とし、軍国主義の完全なる拒絶を含む平和と民主主義の原理の下で建設された。その好例の一つが、自国領土の防衛を除いては軍事力の行使を禁じた戦後の日本憲法九条である。
 この六十年間、日本の自衛隊は決して戦闘に従事することはなかった。イラク駐留の自衛隊でさえ、オランダ軍やオーストラリア軍に守られる必要がある。軍国主義と軍隊への強い忌避感とともに制度上の制約が日本を世界で最も平和主義的な国家にしたのである。
 第二次大戦の敗北の結果、日本は千人以上の死刑を含む数万人を処罰するという国際戦犯法廷の判決を受け入れた。その上、一九五〇−六〇年代には戦争の賠償としてアジア諸国に約二十億ドル(現在の千二百億ドルに相当)を支払った。また、中華民国と中華人民共和国の両政府が公式な補償の請求権を放棄したにもかかわらず、中国に対して六百億ドル以上の経済支援を行った。中国政府はこれらの「歴史」はあえて無視するのである。
 中国政府は、戦後の日本について自国民には教えない方針を選んだ。中国の歴史教科書は、多くが立証されていない日本の残虐行為について山ほど記述する一方で、戦後中国に対する日本の援助に関しては無視し、戦後日本については事実上、触れていない。一九九〇年代までの八十年の歴史を述べたとされる「中国近代現代史」という高校生用の教科書を例に取れば、「反日闘争」には二十三章のうち九章をさく一方で、六十年に及ぶ戦後日本との関係についてはたった二行の記述しかない。教師向けの公式な指導教本は「日本の帝国主義者による侵略という犯罪に対し、強い憎悪と恨みを持続させるための触媒を学生に与える」よう明確に指導している。若者が現代日本に対する敵意を持続するよう仕向けているのだ。
 同様に、中国の国営報道機関は平和で友好的な日本の活動を伝えるのを避けてきた。日本が第二次大戦で降伏した日に毎年行っている、戦争放棄を誓う政府主催の記念式典も報道しない。日本の歴史観への中国の分析はいつも、中国側の視点と事実の説明による一方的なものなのである。
 歴史に関するより客観的な枠組みを示そうという日本側のどのような試みも自動的に「過去の過ちをごまかそうとする試み」とのレッテルがはられ、中国版の歴史における事実誤認や矛盾を指摘しているに過ぎない日本側の努力もいつも却下されてしまう。
 小泉首相の靖国神社参拝を過去の侵略と軍国主義復活を称賛する行為として描く中国は、重要な点を見逃している。小泉首相は参拝するたびに、軍国主義を非難し、日本による過去の攻撃について反省や謝罪を表明してきた。靖国神社は第二次大戦だけでなく、近代に戦死した日本人二百五十万人を追悼する場所であり、そこに参拝することは純粋に国内的な平和志向の意思表示なのだ。まつられている魂にA級戦犯十四人の名が含まれていることは、死者を許そうとする慣習に由来する。戦争を推進するためではない。
 日本の政治指導者たちがやや見当はずれの歴史的な罪悪感や対立を避けたいという習性から中国に謝罪し続ける一方で、日本の国民は中国の指導者たちが決して過去から脱却しないことに気付いている。中国政府が暴力的な反日デモを許容したことについての謝罪を頑固に拒否していることは、前向きでないことの一例だ。
 小泉−胡会談の直後に日本で行われた世論調査によれば、回答者の71%は歴史に関する中国の要求を拒否した。日本の国民は今、いわゆる「歴史問題」とは、日本を便利な悪者のままにしておきたいという中国共産党の政治目的に他ならないと認識しつつある。いまや中国がこのことを留意すべき時である。
                 ◇
 (Reprinted from The Asian Wall Street Journal(c)2005 Dow Jones & Company,Inc. All rights reserved.)

Copyright; 2005 The Sankei Shimbun
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