保守の源流を訪ねて

いざいざと友に盃すすめつつ泣かまほしかり醉はむぞ今夜

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小諸市 遊子の悲しみ

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小諸は心のふるさとだ。真冬はいつも寒風が吹きすさび、親父もお袋も子供も冬の間中、皆指先があかぎれでただれたものだが、夏になると環境は一変し、高原に行くと全て緑色、小川のせせらぎで見つけた薺(なずな)や果てしなく続く草原のうねりが少年時代の心象風景としてまだ記憶にある。小学生時代、お人好しの親父が人に騙され大きな借金を作ったことから、夜逃げ同然に上京して以来心の中にしまっているふるさとである。千曲川(広くは信濃川)源流の川上村にある遠い親戚のお寺にも夏になるとよく遊びに行ったっけ。

忙しさに紛れ五月下旬に連載されていた石井英夫さんの下記記事を見過ごしていた。石井英夫さんの文章はいつも軽妙洒脱だが、その裏にはどこかはにかみのようなものが感じられる。

懐かしくなって我がふるさと、小諸市を調べてみた。人口4万5千人、民間企業収入17百数十億円、市財政は赤字、悪名高い「特別会計」が国からの補助金の半分を占めている。我が野岸小学校は小生の通った昭和34-38年が1200人規模だったが、この50年近くの歳月で今は500人弱まで減少してしまった。日本の地方都市の平均的な姿といったところだろうか(不思議だが教師の数は増えている)。それでもこれらの土地には「グローバリゼーション」、「村上ファンド」あたりとは無縁のあたたかい日常があるのだろう。

小諸が「ローカル駅」になり果てたのは残念だが、遊子の悲しみもまんざら悪くはない。懐古園を眺めながらいつも一緒に通学した同級生の女の子は今も元気にしているだろうか。

↓をクリックすると石井英夫さんの洒脱な解説が見られます(Media Player)。


◆【流域紀行 千曲川をあるく】(7)小諸市 遊子の悲しみ

 五月快晴の日曜日、うららかに日は千曲川の上空に輝いている。ところが小諸駅前の広場に立ってとにかく驚いた。人がいないのだ。人どころか犬の子一ピキ通っていない。駅前交番も客待ちタクシーもただぽかんとしている。観光都市・小諸の日曜日かくのごとしだ。駅前に「小諸名物揚げまんじゅう」の旗をだした信州そば屋があった。どうです、名物の売れ行きは?(論説委員 石井英夫)
                   ◇
≪新幹線に乗れぬ旅情≫
 「だめだね。新幹線ができるまでは一日千五百個は売れた。花見の日なんか二千八百でたこともある。それがいまは一日三百がいいとこだ」 店の主人は三百といったがそれは自分を鼓舞せんがための数字ではないか。何しろ私どもが買った五個(四百円)以外にさっぱり購買者の影がないからだ。“歴史と文学と坂”の城下町・小諸の盛衰は、そば屋主人が語った通り新幹線問題がすべてといってよかった。

 平成九年十月に開業した長野新幹線は、なぜ小諸を避けて通ったのか。なぜ小諸は“路傍の石”のごとく黙殺されたのか。いきさつをかいつまんでいえば新幹線の規格だった。小諸市は従来の信越本線を使ったミニ規格を主張し、佐久市は新しいフル規格を主張した。その誘致合戦に小諸市は敗れ、おまけに死活問題だった駅名まで「小諸」がはずされ「佐久平」にされてしまった。

 かくて小諸駅は第三セクター・しなの鉄道(旧信越本線)の特急の停車しないローカル駅になりはて、都市の活力を失った。一方、佐久平駅前はホテルや大型スーパーが林立し、通勤者をあてこんだ宅地開発などがピッチをあげている。

 その小諸駅から三分、懐古園の公園事務所の話もポイントは新幹線だった。「あれ以来、入園者は右肩下がりです。平成八年は四十五万人あったが、年々五万人近く減って昨年は二十四万人。なにしろ特急もとまらない駅ですから」

 小諸なる古城のほとり
 雲白く遊子(ゆうし)かなしむ…(『千曲川旅情のうた』)

 懐古園は小諸城跡で、その城門や石垣を背景にした撮影会らしいものが開かれていた。和装の女性がモデルだが、どう見ても素人で素朴な娘さんである。石野さんの取材だが、佐久市の和服店の成人式用のセールス活動だった。着物一式が五十万円、ほかに撮影代が五万円。娘の祖母の贈り物だそうで、そういえば田舎のおばあさんが影のように付き添っていた。これも和服店の新しい営業で、懐古園の新しい活用法か。

 島崎藤村が国語教師として小諸義塾に赴任したのは明治三十二(一八九九)年。『千曲川のスケッチ』は、日本で自然の風物が日常のことば(近代口語体)で初めて書かれた画期的な作品だった。

 自然の風物といえば、テレビの“お天気博士”としてやさしい気象解説をしてくれた倉嶋厚さん(81)は長野県人である。善光寺平で生まれ、育った。その倉嶋さんが日本の季節と風土について書いたエッセー(『四季暦』)に、心にしみる一節があった。
 「美しい五月の季(とき)が通り過ぎようとしている。降ればもう梅雨かと思い、晴れればまだまだ五月と思いなおす。五月の別れは、ふと知り合った美しいひととの、はかない別れに似ている」

Copyright; 2006 The Sankei Shimbun
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閉じる コメント(2)

よい記事を久々の休日に読ませていただきました。小諸の懐古園、高校の修学旅行で訪ねました。藤村詩集も時々紐解いています。今日、読もうかな♪

2006/6/18(日) 午前 8:21 [ KABU ]

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KABUさん、ありがとうございます。「千曲川いざよふ波の 岸近き宿にのぼりつ 濁り酒濁れる飮みて 草枕しばし慰む」。ああ、日本人に生まれて良かった。本当にそう思います。

2006/6/18(日) 午後 8:17 [ Juliamn1 ]


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