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◆【主張】欧州憲法仏否決 東アジア共同体の教訓に
二十五カ国に拡大した欧州連合(EU)の新しい理念やルールを定めた基本法、欧州憲法(欧州憲法制定条約)の批准の是非をめぐってフランスで行われた国民投票は、予想を上回る大差で否決という結果となった。
EUの創設メンバー(六カ国)で、ドイツとともに戦後半世紀を超す欧州統合の牽引(けんいん)役となってきた大国フランスでの否決の意味は重い。
欧州憲法はすでに九カ国で批准されたが、フランスの否決で、六月一日に予定されているオランダや、来春の英国での国民投票への影響は必至だ。いずれも反対派が根強い。
来年十一月の発効を目指す欧州憲法は、一カ国でも批准しなければ発効しない。フランスでは早くも再投票が取りざたされているが、憲法修正を迫られる事態も否定できない。欧州統合の停滞は免れまい。
シラク大統領の国内での求心力やフランスやドイツによるEU内での主導権発揮にも影響が出よう。
欧州憲法は、EU拡大に伴い、意思決定の効率化、民主化を進め、「大統領」や「外相」ポストを新設してEUの強化を図ろうというものだが、批准に失敗すれば、統合は停滞どころか後退するとの観測もある。日本としても推移を注視する必要がある。
今回のフランスでの否決は、失業への不安など内政面での不満もあったようだが、国家のあり方(国家主権や自国文化の重視)と欧州のあり方(主権移譲と統合の理念)をめぐる価値観の違いも表面化した。
欧州統合が、同じキリスト教国、自由民主主義体制という比較的同質な国々の間でも困難を極めていることを見れば、宗教、文化、政治体制に至るまで多様さで知られるアジアでの「東アジア共同体」構想が、いかに困難かは容易に想像できる。
もちろん、アジアでの経済連携は進み、いずれはアジア共通通貨構想すら議論されよう。しかし、欧州のように政治や安全保障面を含めた統合は、現状のアジアでは不可能に近い。
東アジア共同体構想に熱心な中国は共産党独裁である。東アジア共同体に幻想を抱くのは危険ですらある。今回のフランスの否決を東アジア共同体を考える上での教訓ともしたい。
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