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◆家電メーカー 大型投資が「国内回帰」 先端技術の海外流出防止
家電各社が相次いで国内で大型投資を計画している。一時はコストが安い海外での生産を拡大していたが、韓国や台湾などアジアメーカーの追い上げが急速に進んでいる。このため、各社は先端技術の海外流出を防ぐことで競争力を維持し、収益の拡大を狙う戦略に転換している。デジタル家電や半導体などの先端分野では、世界市場を舞台にした競争の加速は必至であり、今後も家電各社の「国内回帰」の動きが強まりそうだ。(大柳聡庸)
キヤノンは、プリンターや複写機に使われるトナーカートリッジやインクの新工場を大分市に建設する。総投資額は約八百億円にのぼる見通し。同社は、東芝と共同で次世代の薄型大画面テレビ用のパネル「SED(表面伝導型電子放出素子ディスプレー)」の量産工場を兵庫県太子町に建設する計画も進めている。SED工場は、両社がそれぞれ約九百億円を投じる計画だが、今回の事務機器関連工場の投資規模は、これに匹敵する水準になる。
キヤノンがアジアよりもコストが高い国内で大型投資に踏み切るのは、付加価値の高い製品については生産や技術管理を徹底し、海外への技術流出を防ぐ「ブラックボックス化」を進める狙いがある。
このブラックボックス化の先鞭(せんべん)をつけたのが、液晶テレビ世界最大手のシャープだ。同社は平成十六年一月に約千五百億円を投じ、当時世界最大の液晶テレビ生産拠点となる亀山工場(三重県亀山市)を稼働させた。さらに来年秋には新たに約千五百億円を投じて第二工場を稼働させる計画。収益の柱となる液晶事業については「部材メーカーや必要な技術者がいる」(シャープ関係者)国内に集中することで技術流出を防ぎ、ライバルとなる韓国や台湾メーカーに対抗する構えだ。
こうした国内回帰の動きは他社にも広がっている。松下電器産業では、昨年四月に大阪府茨木市で稼働させたPDP(プラズマディスプレーパネル)工場に続き、今秋にも兵庫県尼崎市にPDP新工場を稼働させる。松下が75%、東レが25%出資する製造子会社が工場を建設する。
東芝は、四日市工場(三重県)に約二千七百億円を投じて建設する半導体の新生産棟を七月に稼働させる。工場のブラックボックス化を進めることによって、「適正な利益を得ることができる」(岡村正社長)とみている。
また、国内投資が拡大しているのは、税収や雇用といった経済効果に期待する地方自治体の熱心な企業誘致も理由の一つだ。シャープの亀山工場を誘致した三重県と亀山市は合計で百三十五億円の補助金を交付した。こうした企業誘致制度を拡充する動きが各自治体に広がっており、企業の国内回帰を後押しする要因の一つになっている。
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