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◆【潮流】モーロワ著「フランス敗れたり」 「平和至上主義」への警鐘

 日本の真珠湾攻撃一年前に出版され、わずか四カ月間に二百回もの増刷が行われた戦前のベストセラー、アンドレ・モーロワ著「フランス敗れたり」(大観堂書店刊)が戦後六十年を経てウェッジ社から復刊された。ナチスドイツを批判的に描いた本がドイツとの同盟関係にあった当時の日本の読者をなぜこうも引きつけたのかという興味もあるが、関心の中心はやはり今の日本とのかかわり方だろう。

 日本を代表する国際政治学者の一人、京都大学大学院教授の中西輝政氏が復刊にあたり二十四ページにわたる長文の解説を付け、その中で「ドイツを遥かに上回る経済力と政治力、そして国民の大きな可能性を秘めていた当時のフランスが何故かくもあっけなく崩壊したのか。これこそ繁栄を享受する民主主義国家、現代日本が持っているのと同質の脆弱性とストレートにつながっている」と、「現代日本」と「当時のフランス」を結びつけている。

 「当時のフランス」とはナポレオン三世の第二帝政崩壊で登場した、いわゆる第三共和制のことだ。経緯を要約すると、数々の植民地戦争を繰り広げて国民の歓心を買い、国民的英雄でもあったナポレオン三世は一八七一年、鉄血宰相ビスマルクの率いる新興軍事国家プロシアに挑んで大敗する。

 第三共和制とはこの敗戦とともに誕生した民主主義国だった。当時の為政者も国民も敗戦の原因を圧政(戦前)とみなし、良い風習も悪い風習も含めてすべて戦前を否定し、極度の「平和至上主義」になってしまった。

 つまり、第二次大戦の悲惨な敗戦の中から生まれ、戦前を否定することでスタートした日本の戦後と実に似通った状況にあったわけだ。

 もう一つ、当時のフランスが抱えていた問題点は、戦争回避のため国際主義の象徴ともいえる国際連盟に過度の期待をかけたことだった。モーロワは国際連盟と平和を求める動きについて「(国際世論の)一斉射撃は大砲を圧倒するだろう」と皮肉を込めて書いた。ナチスドイツのようなむき出しの脅威に対し国際世論がいかに無力だったか。これもまた、今の日本で散見される過度の国連期待を彷彿(ほうふつ)とさせる。モーロワは著名な文芸評論家であると同時に歴史家だった。その彼がわずか六週間で祖国が崩壊したことに大変なショックを受け、その過程を記録したのが同書だが、祖国防衛に必要なものとして一番にあげたのが「戦う気概」だった。

 モーロワは具体的には▽国民は自由を守る気概を持ち続ける▽指導者は民意(世論)に媚びず、国家の道を示す▽政治家は高潔で、外国の影響から世論を守る−などを列挙しているが、要は全体主義国家の脅威に立ち向かうには民主主義国家も「国を守る気概を持ち続けなければならない」ということだろう。

 一九三八年のミュンヘン会談で、フランスのダラディは英国のチェンバレンとともにチェコスロバキア・ズデーテン地方割譲というヒトラーのむき出しの要求を受け入れた。だが、後にミュンヘンの屈辱とまでいわれたその協定をフランス民衆は「平和のための国際協調の成果」として歓呼で讃えたのである。

 こうしてみると、六十四年前のフランス崩壊とその「歴史の教訓」は実に重い。いまの日本周辺にはいまだに独裁者が君臨する全体主義国家が存在するのだから…。(東京本社編集長 前田徹)

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2次大戦前のフランスと現在の日本の類似性は興味深いですね。歴史は繰り返すといいますが、繰り返しにならないことを願います。

2005/6/17(金) 午前 5:39 spr*ght*hak*ba

私もこれを読んで「日本敗れたり」にならないようにと願うのみです。

2005/6/17(金) 午後 10:48 blo*g*r2*05jp


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