保守の源流を訪ねて

いざいざと友に盃すすめつつ泣かまほしかり醉はむぞ今夜

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「江戸時代の日本では、武士はもちろん町人、百姓を含めた世間一般に、死をそれほど大層なことと思わない風潮があった」

翻って我が身はこの心境になれるだろうか。社会的身分や金への執着は既に遥か彼方のものだが、死をどう捉えるか、それこそ一生(?)の課題だろう。

◆【追悼】杉浦日向子さん 江戸時代の気風、染みついた死生観

 平成十五年十一月二十八日、私はNHK総合テレビ「コメディー お江戸でござる」の収録に杉浦日向子さんの代役で出演した。ご病気だった日向子さんの手術日がその日に決まったため、前の週に突然依頼を受けたのだ。次週の最終回も私が代役を引き受け、九年続いた人気番組は終わった。

 日向子さんのご病気のことは、以前からある程度知っていた。わが家へお花見を兼ねて飲みにいらっしゃったとき、淡々とした口調で、私は白血病になったけれど、せっかくこの体を選んで来てくれた病気さんだから、無理して追い出そうとは思わないという意味のことをおっしゃったので、びっくりしたものだ。

 他人の病気ならともかく、まだ若い日向子さんがご自分の難病についてここまであっさりと話されるのは意外だったが、手術の後で何度か手紙を差し上げてその都度お葉書を頂き、やはり普通の人とかなり違った死生観で生きてきた人なのだと知った。

 「癌研」へ入院された直後の葉書に、自分は癌など気にしていないのに、周囲の人が気をつかって、癌という言葉さえ避けるが、ここでは病院スタッフ以外すべて癌患者なので気楽でいい、と書いてこられた。

 禅の修業を積んで悟りを開いたはずの高僧に癌宣告をしたら鬱病になって自殺したという話を聞いたことがあるが、日向子さんの淡々とした死生観は、悟ったつもりでいる取ってつけたものではなく、西洋思想至上主義になるずっと前の、江戸時代人の感覚なのだ。

 ここで詳しく説明する余裕はないが、江戸時代の日本では、武士はもちろん町人、百姓を含めた世間一般に、死をそれほど大層なことと思わない風潮があった…と書けば「人命軽視の封建時代」というような反応しかできない人が多そうだが、その人たちは放っておいて、何がなんでも我がいのちにしがみつきたいと思わない人が、特別な教育を受けない人の中にも大勢いたことは確かなのだ。

 江戸に生きたいと本気で思っていた日向子さんには、その気風が染みついていたように思う。

 私は日向子さんの父親相当の年齢だが、残念ながらとてもそんな心境にはなれない。(作家石川英輔)
                    ◇ 
 七月二十二日、下咽頭がんのため死去、享年四十六。

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初めてお邪魔しました。
とても興味深かったです。色々と勉強させて頂きます。

2008/3/2(日) 午後 10:38 [ シュウジ ]


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