保守の源流を訪ねて

いざいざと友に盃すすめつつ泣かまほしかり醉はむぞ今夜

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◆【正論】お茶の水女子大学教授・藤原正彦 闇雲な改革至上主義の行き着く先 不況に乗じ不安煽る責任を問う (1月25日産経)

≪信頼したい日本人の底力≫
 改革のこの地響きはどうだろう。市場経済、規制緩和、ビッグバン、時価会計、成果主義、ペイオフなど経済分野から始まり、民営化、地方分権、ゆとり教育…と果てしない。この国の形を根本から変える勢いである。その結果、金融がズタズタにされ、ついで数多くの中小企業が瀕死となり、それまで禁じ手だったリストラが大手を振って歩き出し、社会の安定性が著しく損なわれた。

 規制緩和や地方分権が言われ始めたころから、地方の駅前商店街は寂れ、農村は荒れてきた。その上、いま市町村は特例債という一時的なあめ玉と交換に、歴史や愛着を無視した合併さえ強いられている。「ゆとり教育」とか「生きる力」などに代表される子供中心主義により、世界でもっとも勉強しない子供たちの学力は急坂を転げ落ちた。すべてここ十年の出来事である。

 狂騒のきっかけは長引く不況による狼狽である。狼狽の中で冷静な思慮もなく改革に走ったから、傷はますます深くなった。十年の不況といっても国内総生産は今も世界二位である。そもそも、たかが経済である。いざとなったら全国民が一定の年月、歯を食いしばればよいだけのものである。幾多の苦難を乗り越えてきたこの国民にとって、そんなことは朝飯前である。

≪社会を支配する米国帰り≫
 不況に乗じて、国民の自信を失わせる言辞を弄し、「時代は変わった」「グローバリズムに乗り遅れるな」「官から民へ」「今こそ構造改革」などと声高に煽る勢力が跋扈した。学問的分析も祖国への深い想いもなく、先輩たちが営々と築いた独自のシステム、つい十数年前まで世界が羨んだものを制度疲労の名の下で片っ端から破棄してしまった。不安定となった社会を見て、将来に不安を抱いた庶民は当然ながら財布のひもをゆるめない。だから相次ぐ改革にもかかわらず経済回復の兆しは見えない。

 改革ラッシュには二つの底流がある。一つは「アメリカ帰り」である。改革の方向が米国一辺倒となった最大原因は、米国の大学で学んだ学者、官僚、経済人などが、わが国の言論界と政財界で支配的になったからと思う。日本が長い不況に入るや米国が長い好況に入ったため、彼らの目が眩んだ。米国がこれまでも、またこれからもずっと世界一豊かなのは、そこが世界一豊かな大陸にあるからで、政治経済のシステムや文化が他より優れているからではない。この単純な原点を忘れてしまった。

 加えて冷戦終結と同時に米国は、共産主義に対する資本主義の優越の証しとして大目に見てきた日本を、一転して米国の経済上の主敵とみなし始めた。軍事上は無二の同盟国であり続けたこともあり、アメリカ帰りを中心とした人々は米国のこの変節に気付かぬまま、米国の勧める不況回復の処方箋をうのみにし次々に改革を断行してしまった。アメリカ帰りのかつてない増大は、戦前、ドイツ帰りが日本陸軍で支配的だったことが、ナチスドイツの過大評価となり致命傷となったことを想起させる。留学先が一国に偏ることの危険である。

≪財界人主導の政府審議会≫
 もう一つの底流は「財界人」である。彼らが官たたきを主導した。日本経団連や経済同友会の幹部など財界人は、いくつもの政府審議会を掛け持ちし、今では全体の二割近い十九の審議会で会長を務めている。これら財界人は無論、中小企業、労働者、商店主、農民などの代表ではなく、大企業の代表である。強者にとっては自由競争が有利だから、規制を仕事とする官僚は目の上のタンコブである。

 官僚の不祥事や天下りに国民が怒りを爆発させた機を逃さず、「市場原理」「小さな政府」「官から民へ」「中央から地方へ」と官の弱体化に走った。不祥事は罰則強化、行き過ぎた天下りは法律による禁止ですむはずのものである。地方に移譲すべき権限や税源も当然あるが、この小さい国土での地方分権とは何か、そもそも中央集権はそれほど悪いものなのかの吟味もそこそこに、国家財政の視点だけから地方分権が行われる。地方および国双方のジリ貧を招くだろう。

 財界人の猛威は政治経済を超え、外交、文化、教育にまで及んでいる。見識家も中にはいるが大多数の頭にあるのはあくまで商売だから、「首相は靖国参拝を再考すべき」などと真顔で言う。小中学生に起業家精神や株債券を教えろ、大学は産業界にすぐ役立つ人材を育てろとも言う。アメリカ帰りと財界人の跳梁が続けば、遠からずして日本は溶解してしまうだろう。

◆【産経抄】
 「そもそも、たかが経済である。いざとなったら全国民が一定の年月、歯を食いしばればよいだけのものである」。近ごろこれほど胸がすく啖呵を聞いたことがない。二十一日付「正論」での、藤原正彦さんの言である。
 ▼改革の名の下に、日本独自のシステムをズタズタにした「アメリカ帰り」の学者や官僚、経済人らを、藤原さんは一刀両断にする。そして、彼らの跳梁は日本の「溶解」を招くとも。
 ▼日本の行く末に警鐘を鳴らす姿勢に共鳴した人は、多かったろう。最近の改憲論議の高まりにもそれは多分つながっている。憲法をめぐる議論は、法典の文言にとどまらず、司馬遼太郎氏のいう「国のかたち」を問うことにほかならないからだ。
 ▼その意味で、日曜夜のNHKスペシャル「徹底討論どうする憲法9条」は時宜にかなっていた。ただ、改憲派と護憲派の論戦は見事にかみあっていなかった。そもそも安全保障の議論をしていながら潜水艦で領海を侵犯する中国、ミサイル開発を急ぐ北朝鮮の脅威への言及がほとんどないのは面妖だ。
 ▼米国追随を批判してやまない護憲派の人たちの意見も辻褄が合わない。安全保障で自立せよというのなら軍備増強しかあり得ない。自衛隊さえ認めない「九条堅持」と、どう整合を取るのか。国際貢献に武力が必要ないことを主張したいために、マラリア制圧の方法を延々と述べた老評論家など論外だ。
 ▼本質から外れたり主張の根拠をきちんと提示しないのでは、実のある議論にならない。政治介入問題でのNHKと朝日新聞の論争と同じ構図だ。番組ではこんなのもあった。「自衛隊はなくしていく」といいながら「日本に自衛権はある」と臆面もない政党の代表者。だれとは言いませんがね。

Copyright; 2005 The Sankei Shimbun
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