|
◆【主張】米誌の誤報 日本も他山の石としたい
米誌ニューズウィークは、「米軍がイスラム教の聖典、コーランを冒涜(ぼうとく)した」と伝えた記事の誤りを認め、謝罪し、全面撤回した。日本のマスコミにとっても、重要な教訓を含んでいる。
問題の記事は、キューバの米軍基地の尋問官が収容者の証言を促すため、コーランをトイレに流して動揺させたという内容である。この報道をきっかけに、イスラム圏各国で反米デモが発生し、鎮圧部隊との衝突などで十六人が死亡、百人以上が負傷した。
ところが、同誌が改めて情報源にあたったところ、「確実に見たわけではない」と不確かな話だったことを認めたというのだ。同誌は、根拠が確認できなかったとして、記事の全面取り消しに踏み切った。
しかし、不確かな情報に基づく報道が国際問題に発展し、十六人も死亡する事態を招いた責任は重い。事実はどうだったのか。不確かな情報をなぜチェックできなかったのか。改めてきちんとした検証記事が必要だ。
日本でも、二十三年前の昭和五十七年夏、旧文部省の検定で教科書の記述が「侵略」から「進出」に書き換えられたと、新聞やテレビが一斉に誤報する事件が起きた。この報道をきっかけに、中国と韓国が日本の教科書検定を批判し、外交問題に発展した。
その結果、中韓両国に過度に配慮した検定基準「近隣諸国条項」が追加され、教科書に自虐的な記述が増えた。今回のニューズウィーク誌の誤報とは違った意味で、重大な過ちを犯したといわなければならない。
産経は同年九月七、八日付で、「読者に深くおわびします」「発端はマスコミの誤報からだった」とする謝罪記事を掲載し、誤報の経過も詳しく報じた。これに対し朝日は、「『侵略』→『進出』今回はなし」「問題は文部省の検定姿勢に」とし、毎日も「本質を見失わず」と同じように論点をすり替えた釈明記事を載せた。他のほとんどのマスコミは誤報を黙殺した。
誤報は大きく分けて、記事に書かれた当事者だけが傷つくケースと、国際問題化して国の名誉、国益まで損なわれるケースとがある。教科書誤報事件と今回の米誌誤報は後者だ。本紙を含め日本のマスコミは、今回の事件を他山の石としなければならない。
Copyright; 2005 The Sankei Shimbun
All rights reserved.
|