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◆【紙面批評】インターアクト・ジャパン社長 帯野久美子 中国の思うツボにならぬ世論形成を
四月に中国各地で起きた過激な反日デモの後、各紙の紙面は日中関係の報道一色だった。やがて、「いったいあれは何だったのか」とデモの背景を探る記事が目立ち始める。デモは明らかに官製で、JR東海会長の葛西敬之氏が述べるように「ねらいは民衆の不満転嫁、日本の世論分断、日米同盟の分断、国際世論の反応観測」(五月二日産経「正論」)に違いない。
■欧米紙の中国観測は冷静
その「国際世論の反応」の方は、中国にとって惨憺(さんたん)たる結果だった。四月二十三日付のワシントン・ポスト(翌二十四日産経で紹介)が、「平和的蜂起?」と題する社説で「日中関係悪化の責任はほとんどすべて中国側にある」と批判したのをはじめ、「日本の首相や政治家は何度も謝罪を行ってきた」(デンマーク・ユランス・ポステン紙)、「中国はドイツとは逆に日本は戦争犯罪について謝罪していないと信じているが、これは正しいとはいえない」(ドイツ・フランクフルター・アルゲマイネ紙)=両紙とも五月三十一日産経で紹介=など、中国は世界から非難を浴びることになる。これら海外記事の紹介には説得力があり、原因が何であれ「間違ったことは間違ったこと」という冷静な判断を日本人に示してくれた点で有意義だった。
さて四月二十四日の朝刊各紙は、前日ジャカルタで開かれた日中首脳会談の様子をとりあげていた。その内容は主に小泉純一郎首相が暴力行為の再発防止を要請、胡錦濤国家主席が歴史の反省を迫ったことであったが、台湾問題でも「『中国人民の感情を傷つけた』と述べ日本を批判した」という胡主席の発言(読売)が気になっていた。
これについては、ウォールストリート・ジャーナルが四月二十五日付社説(二十七日産経で紹介)で、「胡主席が小泉首相への抗議に台湾問題を筆頭にあげたことを注視すべきだ」と主張。デモの狙いも「日本が二月に米国との間で決めた(台湾海峡の平和と安定などについての)戦略合意から日本を後退させること」と記しているのを見て「ナルホド」の感を得た。
同じころ、台湾では陳水扁政権がゆれていた。四月二十九日に国民党の連戦主席が、五月十二日には親民党の宋楚瑜主席が、北京で胡主席と会談。連主席は両党の敵対終結に合意、宋主席は一つの中国を確認するなど、陳政権への包囲網が狭められていたからだ。
■日台財界人の発言の背景
これらに先立ち台湾独立派の大物財界人、許文龍氏が「一つの中国容認」を突然表明して世界を驚かせた。産経は許氏の謎の行動について四月二十六日朝刊で、「『商をもって政を包囲する』作戦は、想像もできぬほど陰険なものだといえる」「あれほどの人物に、中国はどうやってあの声明書にサインさせたのか」などという日本政策研究センターの伊藤哲夫所長の調査報告を掲載した。
同氏はまた、「中国の日本企業に対する圧力も、台湾企業に対する圧力と同じように陰険なものになることが今後予想される」と警告している。にもかかわらず、経団連会長の奥田碩氏らが小泉首相の靖国参拝に憂慮を示したのは残念だった。五月二十五日の「産経抄」が指摘するように、まさに「中国との商売に熱心なあまり、『誇り』という言葉を忘れたのではないか」。しかし、日本の経済人が皆同じ考え方とは思ってもらいたくない。
最後に六月八日産経の「台湾、住民投票で改憲」は久々に台湾の明るいニュースだった。しかし、「『台湾の主権確立』に道を開きたい陳政権に追い風となる」一方、中国の監視はますます強まるだろう。「靖国」「教科書」は感情的な側面の強い問題だが、台湾問題は世界の平和を脅かしかねない。「日本は中国の思うツボ」(五月二十九日「産経抄」)にならないよう、産経にはしっかりと世論をリードしてほしい。(大阪本社発行最終版による)
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