|
◆【産経抄】
日韓首脳会談とは一体なんだったのか。二時間のうち、一時間五十分を「歴史認識問題」に費やした。それでもなお論議が平行線をたどったことは仕方がない。会談を終えた盧武鉉(ノムヒョン)大統領は、共同記者発表で合意の内容をわざと読み間違えるパフォーマンスを演じ、晩餐会を「軽めにする」と言い放った。
▼なんたる非礼か。結局、会談の成果といえば、「韓国唯一の歌人」孫戸妍(ソンホヨン)さんの存在が広く知られるようになったことか。「切実な願いが吾れに一つあり争いのなき国と国なれ」。小泉首相が会談後に披露した歌の作者である。
▼孫さんが和歌と出合ったのは昭和十六年、東京の帝国女子専門学校に留学中のことだった。帰国後は、一男四女を育てるかたわら日本語で歌を作り続けた。指導を受けた歌人、佐佐木信綱からの「途中でやめるな、日本の歌のまねをするな」との激励が支えだった。
▼反日感情が渦巻くなか、孫さんに向けられる視線は冷たかった。彼女の伝記『風雪の歌人』(講談社出版サービスセンター)をまとめた北出明さんにこう語っている。「日本語教育は民族の不幸かもしれない。ならば日本語で民族の哀感を歌うことだって必要ではないか。そう自分を奮い立たせた」。
▼平成十年一月、宮中歌会始に韓国人として初めて招かれた孫さんは、チマチョゴリ姿で参列した。戦後出版した五冊の歌集のすべてに、韓国の国花「無窮花(むくげ)」の名を冠してもいる。
▼二年前に世を去った孫さんは愛国者だったからこそ、こんな歌が詠めたのだろう。「隣りいて胸にも近き国なれと無窮花を愛でて桜も愛でて」。反日政策を強めることでしか国民に愛国心を示すことのできない大統領には、理解できない歌心であろうが。
Copyright; 2005 The Sankei Shimbun
All rights reserved.
|