保守の源流を訪ねて

いざいざと友に盃すすめつつ泣かまほしかり醉はむぞ今夜

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◆【正論】上坂冬子 靖国論争に欠かせない4つの認識 同じ土台なき国との交際術とは

《戦犯は「罪人」とはいえず》

 低俗な論争ほど不愉快なものはない。靖国論争の蒸し返しを防ぐために問題のポイントを整理しておこう。

 まず第一点は、靖国神社に対する認識である。日本の神社を管理している神社本庁の名簿に靖国神社は見当たらない。国難に殉じた人々の慰霊の場として、靖国神社は一般の神社とは性格を異にしている。

 神崎公明党代表は政治と宗教のかかわりを厳密に避けて、首相の参拝に反対しているのであろうが、靖国神社は宗教と直結しているわけではない。またA級戦犯の分祀論は非常識で、神社の意志としていったん祀った霊を選り分けて外すことはありえまい。

 第二は、戦犯に対する認識である。たとえば木戸幸一内大臣が戦犯容疑の指定をうけたとき昭和天皇は、戦勝国から見れば戦犯であろうが「我国にとりては功労者なり」として夕食に招いた、と『木戸日記』にある。戦犯の「犯」の字が災いして罪人扱いされているが、勝者が敗者を裁くのは裁判の形式として成り立たず、したがって戦犯はいわゆる罪人ではない。

 ならばなぜ当時、堂々と主張しなかったのかということになるが、時代がそれを許さなかった。たとえば原子爆弾の被害者として死亡した有名な永井隆博士は、病床で原爆投下の不当を訴えて戦犯裁判の供述書として提出したが、取り上げられていない。戦犯法廷で原爆を持ち出すことは禁止されていたからだ。

 戦勝国の報復裁判だと承知しながら戦犯たちは、その遺書に平和のために命を提供すると書き残して処刑されている。現に、戦犯の処刑後に平和条約が締結された。

 平和条約とともに独立した日本では、昭和二十八年八月三日付で衆議院本会議で戦犯の赦免に関する決議を採択し、巣鴨プリズンに拘留されていた戦犯を日本の責任においてすべて釈放した。以後、この件には日本の法律が適用されるのが当然で、日本国憲法には「不遡及、一事不再理」が明記されている。過去の戦犯裁判の内容を六十年目に蒸し返すのは憲法違反だ。

 第三は、A級戦犯に対する認識である。A級戦犯は平和に対する罪を問われたが、東京裁判の判事を務めたインドのパール博士は、国家に交戦権がある以上、戦争は犯罪でないと述べている。当時の日本には交戦権があったから、平和に対する罪を犯したといわれる理由はない。まして負けた側だけに戦犯が存在するのは納得いかない。

《普選制度なき常任理事国》

 百歩譲って、あれを国際裁判と認めるとしても、刑期を全うした者は晴れて自由の身になるはずだ。たとえばA級戦犯として服役した重光葵外相が、刑期を終えて釈放後に日本初の代表として国連総会で演説したことなどは好例であろう。同じ論理を適用するなら、死刑に処された東条英機首相が六十年目に蛇蝎のごとく扱われる理由はない。

 第四に、中国という国に対する認識である。ともすれば私たちは国連常任理事国たる他の近代国家と同等に扱いがちだが、中国は普通選挙を一度も行ったことのない特殊な国家だ。しかも国定教科書にしたがって全土で画一教育を行っている。およそ自由とかけ離れた大方針を掲げた国家と日本とが論争の場を持つこと自体無理な設定である。

 日本はこれまで中国に三兆円のODA(政府開発援助)を供与し、二〇〇八年のオリンピックまで経済援助を続けていくことになっている。その見返りが反日かと糾弾するつもりはないが、中国は日本が援助を継続している相手国だという事実は明らかにしておきたい。

 ついでながら他国の国旗を焼き、大使館を損傷し、高官の面談を一方的にキャンセルしたにもかかわらず、中国はこれまで一度も日本に謝罪していない。

《中国追従は国益にならず》

 参考までに、一九九七年にインドを訪ねたエリザベス女王は、かつて虐殺事件を起こした地で謝罪要求を掲げた民衆のデモに迎えられたが、彼女は慰霊碑に献花したあと、

 「歴史は書き直したくとも書き直せない、悲しみから学び喜びを築こう」

 と述べている。これが事実上の謝罪として受け入れられたのは共通の判断力を持つ国同士だったからだろう。

 国益を考えて中国の言い分に従えという説がある。しかし、それが効果を生むには国家間に共通の土台がある場合に限られよう。

 中国がリーダーを普通選挙で選ぶ国になるまで、せめて日本国内での靖国論争は打ち切りにし、首相の判断に任せてはどうか。

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◆【外信コラム】台湾有情「トロ」ブーム到来

 台湾で「トロ」が高騰している。台北の日本料理店では刺し身ひと切れが中トロで二百台湾元(約六百八十円)、大トロなら三百台湾元(約千二十円)は覚悟しなければならない。地元の板前さんによれば、この三年ほどで仕入れ値が二倍から三倍もハネあがったのだという。

 もともとナマで食べる習慣のない台湾の人々にとって刺し身は敬遠の対象。南部の屏東県などで水揚げされたマグロの大半が日本に売られ、グルメ天国の台湾では見向きもされなかった。

 ところが五年前のこと。当時の屏東県長(知事)が北海道旅行で「さっぽろ雪まつり」をみて、「雪でさえ観光客を呼べるのだから、水揚げされるマグロで町おこしもできるはず」と思いついた。

 マグロ水揚げ量が最も多い五月から七月までの三カ月を「マグロ文化観光シーズン」と銘打って屏東県がPRしたところ、ここ数年の日本食ブームにも乗ってマグロの刺し身が台湾中で大ヒット。

 陳水扁総統がマグロの競りを行うパフォーマンスも行ったところ、今年は三百キロ近い初もので、なんと八百八十万台湾元(約三千万円)もの過去最高値をつけてしまった。台湾の人々もマグロの味を知ってしまい、ひと切れ千円もする大トロ刺し身に目を輝かすようになった。もはや日本人の出る幕などなさそうだ。(河崎真澄)

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◆露、中印と連合狙う 3カ国外相会談 豊富な資源を武器に

 【モスクワ=内藤泰朗】ロシア、中国、インドの三カ国外相は二日、ロシア極東のウラジオストクで会談した。これら三カ国の外相会談が設定されたのは初めて。政治的影響力の保持に動くロシアは、豊富なエネルギーを武器に、アジアの二大国を巻き込んだ三カ国連合の創設をもくろむ。だが、反米的なにおいが漂う新たな連携に、日本や米国からは警戒する声があがっている。

 ロシア東方進出の拠点で、極東戦略の最先端基地ウラジオストクは、中国が強い関心を示すシベリアの石油、さらにインドが参画するサハリンの石油・天然ガス開発の中心に位置する。経済を軸にした「戦略トライアングル」の主導者となることを夢見るロシアにとって、ふさわしい晴れ舞台といえる。

 訪日を終えたロシアのラブロフ外相はこの東の拠点で中国の李肇星外相と会談、懸案の国境問題を最終的に決着させて両国関係の進展をうたい、続いてインドのシン外相とも個別に会談した。

 これまで国連総会などで三回ほど非公式に会談し意見を交換してきた三カ国外相はさらに二日、交通、エネルギー、情報技術、国際問題など「幅広い分野での協力」について協議し、三カ国が反テロ共闘でいっそう密接に協力することで合意。三カ国の連携が、「第三国に敵対するものではない」と強調した。

 露中印の「戦略トライアングル」構想は一九九八年、ロシアのプリマコフ元首相が米国の一極支配に対抗するために創設を提言したが、潜在的な敵国である中印両国の反対で「構想」の域を出なかった。

 だが、中印両国が経済発展に伴いエネルギー需要を増大させるなかで、インドはエネルギー開発で中国との協力を模索する方向で対中改善に方向転換しており、三カ国の利害は接近し始めた。

 プーチン政権が、東シベリアで建設を計画する石油パイプライン経由でシベリア産石油をまず中国に送ることを決め、今年末にも石油生産を開始する「サハリン1」への大型投資や新規鉱区開発などに新たにインドを加えていることにも三カ国連合強化の姿勢がくっきり表れる。しかも、中印両国はロシア製兵器の大手顧客でもある。

 サハリンの資源をめぐり、中印と日本や韓国との競合も予想されるほか、「米国の一極支配に反発するアジアの三大国が、経済に次いで軍事面を含む政治的な提携を深めることは、アジアの新たな不安定要因になりかねない」との懸念が西側消息筋の間では出ている。

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◆河野衆院議長、歴代首相呼び「靖国」慎重論 行政府へ“介入”に異論

 河野洋平衆院議長が一日に歴代首相を集め、小泉純一郎首相の靖国神社参拝について意見交換したことについて、二日、三権分立の観点から批判が出るなど波紋を広げた。河野氏サイドは会合について「参拝には慎重に対応すべきだとの見解で一致した」と説明。これに対し、首相は二日の衆院予算委員会で「首相経験者といえども私と違う」と述べた。

 一日の意見交換会には、海部俊樹、宮沢喜一、村山富市、橋本龍太郎、森喜朗の各元首相が出席。河野氏は「議長としてではなく元外相として呼びかけた」(秘書)としているが、会場は議長公邸。衆院議長が首相経験者を個人的に集め、政治的問題の意見交換を行うのは極めて異例だ。

 歴代首相のうち、中曽根康弘元首相は欠席。中曽根事務所によると、河野氏が五月三十一日、中曽根氏の事務所を訪れ、会合について相談したが、中曽根氏は「立法府の長が行政府の長の経験者を呼ぶのは、三権分立に照らして問題だと思うので賛成しない」と出席を断ったという。このほか羽田孜、細川護煕両元首相も欠席した。

 意見交換の内容は会合後、河野氏から概要を聞いた議長秘書が記者団に説明。それによると、河野氏が「近隣諸国との関係の悪化は看過できない。原因のひとつに首相の靖国参拝があることは否定できない」と述べ、出席者から意見を聴取。出席者からは「首相として参拝すべきではない」「日本にも問題があるが、中国も考えてほしい」といった意見が出たが、最終的には「首相の参拝は慎重の上にも慎重に対応すべきだ」との見解で一致したという。

 河野氏は十五年十一月の衆院議長就任以来、昨年八月の講演で「憲法を改正してまで国連安保理常任理事国になる必要はない」と述べるなど、小泉首相と真っ向から対立する言動が目立つ。

 河野氏の歴代首相との会合について、自民党内からは、「議会と政府の関係が憲法に書かれているように粛々としておらず乱れている」(伊吹文明元労相)、「議長が公邸に歴代首相を呼んで都合のいい発表をするのはおかしい」(幹部)など批判が噴出。河野氏の議長としての適性を疑問視する声も出ている。

◆【主張】河野氏発言 中国の分断策に乗る恐れ

 河野洋平衆院議長が一日、五人の首相経験者を招き、小泉純一郎首相の靖国神社参拝取りやめを提起した。各氏は首相に慎重な対応を求めることで一致したという。

 立法府と行政府の長の経験者が集まり、現職首相の外交に圧力をかけようとするのは適切だろうか。中曽根康弘元首相は「立法府の長が、行政府の長の経験者を呼びつけて意見を聞くことはあり得ない」と出席を断ったという。これが常識である。

 憲法六五条は「行政権は、内閣に属する」と明記している。

 河野氏は席上、「昨今の日中、日韓関係の急速な悪化は看過できない。大きな原因の一つに、首相の靖国参拝がある」と述べたという。

 この発言は、中国の胡錦濤国家主席が「目にしたくない動き」として、首相の靖国参拝などを批判したことと同一歩調を取っていると受け取られかねない。これは結果的に小泉首相を中国とともに揺さぶることになる。

 忘れてならないのは、戦後四十年間、首相の靖国神社参拝は慣例として春秋の例大祭や終戦記念日に行われてきた事実である。

 中国は、靖国神社にいわゆる「A級戦犯」が合祀(ごうし)されていることを問題にしているが、「A級戦犯」は昭和五十三年秋に合祀され、マスコミに報じられたのは翌五十四年春である。そのとき、中国は表立って抗議していない。大平正芳首相もその年の春の例大祭に予定通り参拝している。

 当時も一部に問題視する声があり、大平首相は国会で「A級戦犯、あるいは大東亜戦争についての審判は歴史が致すであろう」と答えている。国のために死んだ人々を慰霊することが、いずれの国でもみられる自然な光景であることを言いたかったに違いない。

 河野氏は宮沢内閣の官房長官だった平成五年八月、「従軍慰安婦の強制連行」を認めた談話を発表した。だが、後に石原信雄元官房副長官の証言などによって、公式文書には強制連行を裏付ける資料はないことが判明した。ただ誤解は内外に広がり、取り返しのつかない負の遺産を残した。五年前の外相時代も北朝鮮へ巨額のコメ支援を行ったが、何の成果もなかった。

 政治家には常に国益を踏まえた行動が求められている。

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「朝日社説」靖国参拝 重鎮たちからの忠告 (6月3日)

 近隣国との関係がいかにこじれようとも靖国神社参拝は続ける。小泉首相のかたくなな姿勢に、河野衆院議長と歴代首相が異議の声をあげた。

 「日中、日韓関係の急速な悪化は看過できない。大きな原因のひとつに首相の靖国参拝がある」。そんな河野氏の呼びかけに海部、宮沢、村山、橋本、森の5人の元首相が応じ、「首相の靖国参拝には慎重なうえにも慎重を重ねるべきだ」という意見で一致した。

 立法府の長が行政府の長の経験者を集め、現職の首相に注文を付ける。三権分立のなかでは極めて異例の出来事だ。河野氏や歴代首相の危機感がそれだけ強いということだろう。

 自民党内ではこれまで、首相の靖国参拝を擁護する声ばかりが目立ってきた。

 安倍幹事長代理は「首相が靖国神社をお参りするのは当然で、責務だ。次の首相も、その次の首相も行っていただきたい」と述べた。

 厚生労働政務官の「東京裁判は一方的な裁判だ。A級戦犯は日本国内ではもう罪人ではない」という問題発言も飛び出した。

 中国ではデモや投石など反日の動きが続いた。呉儀副首相が小泉首相との会談を直前にキャンセルした。そんな中国に一方的に譲歩する必要があるのか。勇ましい主張には若手議員を中心に賛同者が少なくない。

 首相が参拝を続ける姿勢を崩さず、「他の国が干渉すべきではない」などと言い続けることが、党内にそうした気分を広げる一因となってきた。

 その一方で、首相の参拝に反対する声は党内にほとんどあがらなかった。

 中国との付き合いに熱心だったかつての橋本派や宮沢派が衰退し、分裂したことの影響もあったろう。党の幹部たちには「小泉さんはどうせ持論は曲げない」という思いもあった。

 そんななかで、河野氏らが首相に異議を唱えたことの意味は大きい。この十数年の日本の政治と外交の責任を担ってきた人びとである。

 旧社会党の村山氏は戦後50年の節目で植民地支配と侵略にけじめをつけようと、反省とおわびの「談話」を出した。かつて日本遺族会の会長でもあった橋本氏は、一度は靖国神社を参拝しながら中国などの反発で中止した過去を持つ。森氏は小泉首相の後見人を自任する。

 それぞれの信条は別にして、日本の国益が損なわれているという共通の思いが6人を突き動かしたに違いない。

 河野氏の集まりには加わらなかった中曽根元首相も、講演で「個人的信条より

 国家利益を考えてやめるべきだ」と首相に参拝中止を求めた。

 中曽根氏はこうも言った。「やめる方が勇気を要するが、勇気のあることをするのが政治家だ」

 首相は「適切に判断する」と繰り返すばかりではなく、重鎮たちの忠告を重く受け止める必要がある。

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【正論】作家・深田祐介 疑念消えない中国への新幹線輸出 [2003年07月23日 東京朝刊]

■極めて漠然とした「導入の論理」≪日本の技術移転に疑問も≫

 中国への新幹線輸出に強い意欲を見せるJR東日本に対し、新幹線の技術ノウハウを握るJR東海の葛西敬之社長が慎重な姿勢を示している(七月九日付産経新聞)。

 葛西氏は、日本の技術移転によって中国側が製造・建設する方式にも疑問を示し、「契約という形で債権債務が明確にならない限り、日本の動きを支援する気はない。政治ではなくビジネスの問題だ」と突っぱねたというが、これは中国への新幹線輸出を懸念する多くの国民の内なる声を代表するものと思える。

 そもそも中国が新幹線、特にリニアモーターカー導入にこだわるのは何故か。裏に隠された意図が潜んでいるのではないかとの疑念が国民の胸から離れないからである。

 日本の新幹線についてはすでに台湾が先行して輸入を決定している。台北−高雄間の高速鉄道建設に関し、独仏の高速鉄道との仮契約を最後の段階になって破棄してまで導入を決定したのであった。この理由について私は、九九年九月に起きた台湾大地震のお見舞いで訪台した折、当時、台湾総統だった李登輝氏より直接伺ったことがある。

 一つは台湾の厳しい自然環境である。大地震を招くプレートは台湾中央で地表に露出し、「ニイタカヤマ」(現在の玉山)を始め三千、四千メートル級の山が山脈を形成している。従って鉄道は高い橋梁(きょうりょう)とトンネルの連続となる可能性がある。加えて台風は年中行事で襲ってくる。

 二つ目は、これに対応する技術的側面であった。独仏の新幹線は、汽車の思想を引きずって先頭に強力な機関車を配置して引っ張り、最後尾にも機関車を置いて押していく。これに対し、日本の新幹線は電車の発想で作られている。一両置きにモーターのついた電車が配置されて走るため、雨や地震に強い。

 「私は自然条件が日本と似ているから、台湾には日本の新幹線が一番だと思っていた。とはいえ、共産主義の独裁国家じゃあるまいし、総統が鉄道の選定まで口を出してはいかんと思って、すべて民間と専門機関に任せていた。しかし、台湾大地震が私に決断を促したんだ。これは台湾人の生死にかかわる政策だ、だから総統が動くべきだ、と思ってね」。地震の体験と技術知識の豊かさに裏打ちされた李氏の話は、極めて説得力のあるものだった。

 ≪有事の兵力急派に活用?≫

 これに対し、中国の新幹線導入の論理は極めて漠然としている。そもそも、なぜ北京−上海間に新幹線を導入する必要があるのかだ。米ボーイング社に大量の旅客機を発注しているのだし、運賃を下げシャトル便を運航すれば、それで十分なはずであるからだ。にもかかわらず、新幹線導入にいかにも執着するごとき態度を日本や独仏に見せるものだから、この三国は外相を訪中させたりして中国側の思う壷にはまり、手の上で踊らされている印象が強い。

 しかし、私を始め中国の行動に不信感を抱く者たちは、共通した一つの疑念を抱いている。つまり、中国は華北と華南をレールで結び、「いったん緩急あるとき」は一挙に数十万の兵力を運ぶ軍用路線を構築しようとしているのではないかという疑念だ。

 私は幸運にも、韓国の陸軍参謀総長として朝鮮戦争を指揮した経験をもつ白善●(ペクソンヨップ)将軍の謦咳(けいがい)に接する機会に恵まれているが、将軍は先の大戦終了直前の極東ソ連軍の急増に非常に強い印象を受け、それを著作「若き将軍の朝鮮戦争」(草思社)の中でも強調しておられる。

 当時、ソ連軍がドイツ降伏の一九四五年五月から八月の三カ月間に極東に送った戦力は、兵員四十万人強、迫撃砲七千門、戦車・自走砲二千両、航空機千四百機に及ぶ。このうち航空機を除く兵力が、ことごとくシベリア鉄道を利用して移送されたのである。この増強の結果、すでに南方戦線補強のため、戦力の落ちていた関東軍は、ほとんど瞬く間に駆逐され、壊滅されてしまうのだ。

 ≪台湾や米国も行方を注視≫

 中国軍はこのシベリア鉄道の役割を、北京−上海線で演じさせようと期待しているのではないか。台湾侵攻を決断した途端、この新幹線がフル稼働して、華北、南京軍区から華南へ兵力を急送し、兵力を急増しようと考えているのではないか。そうとすれば、まさに中国への新幹線輸出は武器輸出の側面を持つことになる。

 白将軍、台湾そして米国当局は、この問題の行方を注視している。浮かれ囃(はや)し立てているのは日本外務省のチャイナスクールと鉄道ファンばかりだろう。(ふかだ ゆうすけ)
●=火へんに華

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