|
◆【正論】明治大学教授 入江隆則 明治の日本人の地政学的見識に学べ 大中華覇権主義を阻止する為に(1月26日付) 《日本の死命制す半島情勢》 現代の日本人が百年前の明治人に学ぶことは多いが、その一つは地政学的な見識である。明治時代に日本は朝鮮半島と台湾を領有したが、これはマッキンダーの海洋地政学の理論から考えれば、まことに理に適った行動だった。 日本のような海洋国家が大陸国家に呑み込まれないためには、半島部分と島嶼部分を押さえることが必要だとマッキンダーは言っている。彼は世界史を通観してそれを証明してみせた。私はそのことを十年前に、韓国のソウルのあるセミナーで控えめに言ってみて、マスコミの袋だたきに遭ったことがある。 しかし、いくらたたかれても真理が真理でなくなるわけではない。戦後の日本人がこの真理を、忘れたような顔をして生きてこられたのは、日本に代わってアメリカが、韓国と台湾の安全保障に、責任を取ってきたからである。 拉致問題をきっかけに、北朝鮮への正当な怒りは、やっと日本国民のなかに浸透してきた。経済制裁やその先の軍事制裁を口にする人も出てきたが、その場合に日本が考えておかねばならないのは、金正日政権が崩壊した後の半島全体がどうなるかである。 現在の韓国は太陽政策が裏目に出て、「親北・反米」という捩れた国情にある。日本に関しては、北朝鮮も韓国も、歴史問題をめぐって「反日」という共通点がある。また中朝国境では中国軍が展開していて、朝鮮戦争末期のように、いつでも介入する構えを見せている。 その中で、いかにして日米主導で北を崩壊させ、中国の介入を排しつつ日米韓が協力して、将来の自由統一韓国をつくるか、が問題となる。そのための協議をアメリカが提案しているのに、日本外務省が拒否しているという話を聞いた。事実だとすればなんと愚かなことだろうか。 これに比べると台湾情勢はより単純に見える。台湾は現在すでに事実上、独立した平和的な民主国家であって、その事実を明言するかどうかだけが当面の問題になっている。日本があらゆる意味で台湾を支援しなければならないのは、火を見るより明らかである。台湾が共産党一党独裁の中国に呑み込まれてしまえば、中国海軍は一挙に太平洋に張り出し、東南アジアは雪崩(なだれ)を打って、これにひれ伏すだろう。それを阻止できるのは、アジアでは日本以外にはないからだ。 《たたくほど日本人を覚醒》 昨年の暮れに日本が台湾の李登輝氏に査証を発給したのは上出来だったが、言論統制がきつすぎたのではないだろうか。 日本は中国と違い、言論の自由が保障された国である。誰がどんな発言をしても、それを判断するのは国民の自由に任せられている。統制国家のまねをする必要がどこにあるだろうか。さらにまた、戦後日本の長い眠りを覚ますのに、李登輝氏ほどの適材はいないのだから、惜しいことをしたものである。 しかし、その日本の眠りについては、中国がこのところ靖国問題で日本たたきに躍起なのは周知の通りだが、中国がたたけばたたくほど日本人が目覚めるという皮肉な効果が上がっている。 靖国神社に合祀されている昭和殉難者たちは、概して忠誠かつ高潔な姿勢で国難に対処した人々であり、何冊もの良い伝記が書かれている。それらを読めば、この人々への深い同情が、日本国民の間にあることが分かる。 したがって小泉首相が、おっかなびっくり靖国神社に参拝し、中国が居丈高にたたき、それをさも大事件が起こったように日本のマスコミが報道すると、殉難者たちへの沈黙の同情が一層深まるという寸法になっている。 この循環構造を一人で作り上げた小泉首相は天才的だと言うしかないが、それがけがの功名か、意図的な行為かはまだ分からない。 《日米協力望むアジア諸国》 ここで最初の地政学に帰ろう。マッキンダーはいかなる国も強力な大陸国家であって、同時に強力な海洋国家であることはできない、と言っている。第一次大戦以前に、カイザーのドイツがそれを狙って失敗したのは良く知られているが、現在の大中華覇権主義の中国は、それを東アジアで繰り返そうとしているかに見える。 しかし、その実現はアジアと世界の不幸であって、その不幸を阻止することができるのは、同じ海洋国家のアメリカとがっちり手を組んだ日本しかない。アジア諸国もまた、それを望んでいる。 現代の日本が百年前の明治の日本に学ぶべき点は、そこにあると強調しておきたい。(いりえ たかのり)
|
過去の投稿日別表示
[ リスト | 詳細 ]
2005年06月09日
|
常任理入り 米国からのつれない電話 (6月8日朝日社説) |
|
町村外相発言 すれすれはどちらか 朝日社(斜?)説6月9日 |
|
◆【正論】国学院大学教授・大原康男 靖国分祀が無理なこれだけの理由 事実誤認に基づく不見識を糾す |
|
◆【主張】W杯出場 強い精神力見せてくれた |


