保守の源流を訪ねて

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◆【パリの屋根の下で】山口昌子 「偽和食」駆逐すべし

 「メード・イン・チャイナ」のTシャツや男物ズボンなどがパリをはじめ欧州を席巻し、欧州連合(EU)が中国の繊維製品の流入を抑える緊急輸入制限(セーフガード)発動を訴える騒ぎが発生したが、パリで和食愛好家の間でささやかれているのが寿司や刺し身など和食に関する“セーフガード”の必要性だ。

 パリではこの数年来、日本食がダイエット料理や健康食としてブームになっており、この四年間で日本レストランも倍増、約六百店を数える。ところが、フィガロ紙の最近の調査によると、このうち85%は日本人経営でもなければ日本人の板前さんもおいていない。おまけに生ものを扱うにもかかわらず、衛生状態も約40%が問題ありの怖い状態だ。

 つまり、和食がブームでもうかるとみた中国人らの経営者が中国料理から乗り換えて、日本レストランを開店。和食のシェフとして必要な「最低十数年の修業」(同紙)や、「細心、器用、美的センス、包丁さばき」(同)などの必須条件も無視して、シロウトが見よう見まねで調理した「偽日本料理」を不潔な状態で食べさせているというわけだ。

 本物の寿司も刺し身も知らないフランス人の多くが値段が安いだけの理由で、こうした「偽日本レストラン」に流れた結果、閉店の憂き目をみた日本レストランもある。こうした中で、同紙の料理批評専門のフランソワ・シモン記者が推薦するのが、パリ四区の「勇鮨」とパリ一区と八区の「衣川」ら数軒だ。

 「勇鮨」の中村勝男シェフは日本での修業の後、カルティエラタンの店で十三年の経験を経た後、オーナーシェフになって十三年。カルティエラタン時代には隣の星付きレストランの有名シェフが毎夜、中村シェフが握る寿司をつまんでから自分のレストランの厨房(ちゅうぼう)入りしていた。

 「衣川」はホテル・レストランのガイドブックの権威、ミシュランが二〇〇五年から新設した「あと一歩で」星付きになる「希望の星」に選ばれた。日本レストランとして初の星入りが期待されている。

 衣川清志シェフは京都の名門「たん熊」で修業した本格派。一区の店は今年で創業二十二年目になる。「先日、ジュネーブの空港のカフェで冷蔵庫の中に寿司があったのにはびっくりしました。サンドイッチ感覚なんですね。なんだか寂しい」という。中村シェフも、「和食に興味を持つ人が増えたのは良いけれど」と偽日本レストラン急増に困惑顔だ。本物のわさびを出しても粉わさびに慣れているので、「あっちがいい」という自称“食通”も。

 自分で和食を作るフランス人も増えている。日本で約七百万部のベストセラー本を出した料理研究家の栗原はるみさんが英語版に続いてこのほど、パリで出版した仏語版「今日、私は日本料理を作ります」も話題を呼んでいる。約七十のレシピ付きで、お米のたき方から緑茶の湯の温度は五〇−七〇度など、日本の若者さえ知らないお茶の正しい入れ方などを親切に説明し、日本食の神髄に触れている。握り寿司や刺し身など自宅では難しい料理を避けているのも良心的だ。

 「メード・イン・チャイナ」の「偽日本料理」駆逐を目指し、私もフランス人の友人を自宅に招き、同書片手に日本食に挑戦してみよう。

Copyright; 2005 The Sankei Shimbun
All rights reserved.

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