保守の源流を訪ねて

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さよなら小沢一郎

「対米関係重視派がいまや反米パフォーマンスを売りにする。日本の政治とはそんなものなのか」と古森氏は嘆く。「小沢氏の反対には米国側の超党派の反発が起きることは確実である」とも。

しかし「政権奪取という目前の政治的動機によって基本政策までを変えてしまう」ことなど、我が国のみならず世界中どこでも起きていることだろう。また米ジャーナリストが言うような、決して「旧社会党勢力の離反」を引き起こさないためなどという小さな動機でもなかろう。

小沢氏の「変節」はそんなところには無いと思う。それはこの十数年の同氏の政治遍歴を見れば分かる。一言で言えば「親爺」田中角栄への思いと小泉純一郎氏への嫉妬心が混ざったある種の情念であろう。

小沢氏は対米関係重視派などではなく、心情的には多分大多数の古参政治家同様、寧ろ「嫌米」である。田中公判を始めから終わりまで全て傍聴した政治家は同氏だけだったという。その過程でアメリカの狡さ、身勝手さを実感したことは想像するに難くない。

また同氏は「改革派」のパイオニアを自負していた。誰も言わなかった1980年代から論文を書いているのだから筋金入りだろう。それが、ご自身の「不徳の致すところ」かそうでないか、いろいろな経緯から人が集まらず「改革」不能な状況になってしまった。それが自自政権崩壊の時期だ。

ところが、いつの間に一匹狼、小泉純一郎の「自民党をぶっ壊す」という乱暴且つ単純なメッセージが民意をくすぐり、自民党は選挙で大勝、そのお株を取られてしまったわけだ。同氏がいれた小選挙区制で選挙に負け、これはやばいと本人ならずとも臍をかむのは、当然の流れだろう。

結論を急ぐと、同氏は政敵・小泉純一郎無き後、持ち前の動物的嗅覚・才能から参院選を勝った、さてこれからは共産・社民とも手を組み、衆院で勝って小泉にリベンジしようというのが本音で、政権などどうでも良く、自分は前面に出ず菅直人あたりに政権を任せることだろう。「日本改造計画って誰が書いた?」と秘書に訊ねるかも知れない。

然し敢えて同氏に同情すれば、この20年同氏の貢献もあって「改革」が叫ばれ、同氏が主張した内容を実行できる層が既に出来上がってしまったことだ。小沢一郎氏の悲劇はここにある。

思えば故江藤淳氏、石川好はじめ何人のシンパが「小沢一郎」を書き、また経世会七奉行、近くは小池百合子はじめ、一体何人の政治家、財界人が同氏から離反していったことだろう。「一度は政権を取らせてみたい」という評者もいるが、それには与しない。何故なら、これは多分「人徳」といったレベルの問題ではなく、小沢一郎そのものに織田信長あたりと通じる一種の「狂気」があるのではないか。

そして最後に言おう、「さよなら小沢一郎」と。

◆【緯度経度】ワシントン・古森義久 小沢氏「反米」への変節

 小沢一郎氏はオオカミの皮をかぶったヒツジなのか−。

 テロ対策特別措置法の延長に反対する民主党の小沢代表の態度をめぐり、米国の日本専門家たちの間では辛辣で活発な議論が続いている。「全米アジア研究部会」(NBR)という民間研究機関の日本関連論壇サイトで米側関係者たちが実名を出しての熱い論議を展開しているのだ。

 「小沢氏は結局、日本が安全保障上では国際的になにもしないという年来の態度を『国連優先』という響きのよいスローガンで隠しているだけだ。国連が現実には安保面できわめて無力なことはあまりに明白ではないか」

 だから小沢氏はオオカミを装ったヒツジだ、と説くのはもう30年来、日米関係を報道してきたベテラン・ジャーナリストである。

 「小沢氏は民主党内になお存在する日本が防衛問題で行動をとることにはすべて反対という旧社会党勢力を離反させないためにテロ特措法に反対するのだ。湾岸戦争当時、小沢氏ほど自衛隊海外派遣など安保面での対米協力を強く主唱した日本の政治家はいない」

これまた数十年間、日本研究を重ねてきた学者の言である。

 このふたりの論者はさらに小沢氏がとにかく自民党政権を揺さぶり、自分たちが政権を取るという目的のためには、たとえ自分自身の年来の主張を変えてでも、反米や反国際協力の姿勢をとるようだ、という疑念を表明する点でも共通していた。

 国防総省元日本部長のジム・アワー氏の批判はより辛辣である。

 「小沢氏は北朝鮮のミサイル脅威や台湾海峡の有事、あるいは中国の野心的な軍拡という事態に対し国連が日本の安全を守ってくれるとでもいうのか。テロ特措法による日本の自衛隊のインド洋での給油活動は日米同盟への貴重な寄与だけでなく、アフガニスタンで国際テロ勢力と戦う多数の諸国による国際安保努力への死活的に重要な協力なのだ。その停止は日米同盟と国際安保活動の両方からの離反ともみなされ、日本自体の安全保障にも大きな損失となる」

 確かに米国政界でもアフガンでの治安維持活動への支持は広範である。イラクでの米軍の活動に反対する民主党側の大統領候補バラク・オバマ上院議員や慰安婦問題で日本を批判したトム・ラントス下院議員も、日本のインド洋での後方支援を国際テロ撲滅やアジア安定への枢要な貢献だと礼賛した。

 共和党側でも大統領選に立つルドルフ・ジュリアーニ前ニューヨーク市長は、日米同盟を通じての日本の安保協力強化の意義を強調し、もしアフガンでの作戦が失敗すれば、同国は再びテロリストの楽園になるだろうと警告した。慰安婦決議の日米関係への悪影響に配慮して下院外交委員会が超党派で採択した対日同盟感謝決議も、日本のインド洋での活動への高い評価を特記していた。

 だから小沢氏の反対には米国側の超党派の反発が起きることは確実である。

 しかもアフガンでのテロ撲滅作戦にはきわめて広範な国際参加がある。程度に差こそあれ、北大西洋条約機構(NATO)を主体に合計三十数カ国が関与する。私自身もカブールを訪れ、ルーマニアやイタリアという諸国の将兵が治安維持に加わっているのを目撃して、この活動の国際性を実感させられた。しかもその活動は国連安保理決議1386で認められているというのが一般の解釈である。

 アワー氏はさらに小沢氏がトーマス・シーファー駐日米大使との会談をすべて報道陣にさらしたことを「外交儀礼に反する米国への非礼」と批判し、小沢氏が政権奪取という目前の政治的動機によって基本政策までを変えてしまうようにみえる点を非難した。

 この2点は相互に無関係とは思えない。いまの日本で米国大使をあえて粗雑にあしらい、「反米」を演出することは一面、児戯めいていても、国内の一部にはアピールするのだろう。

 小沢氏といえば、1990年代はじめ、日米経済摩擦にからむ日本市場の開放でも、湾岸戦争がらみの自衛隊海外派遣でも、日米関係重視という立場から米国の望みや悩みに最も理解を示す政治リーダーとして日米双方で知られていた。野中広務氏あたりからは「売国」に近いレッテルを張られたほどだった。そんな対米関係重視派がいまや反米パフォーマンスを売りにする。日本の政治とはそんなものなのか。
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