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原作 アガサ・クリスティー
訳 じゅりー
邦題 『管理人と花嫁』
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「どうです」ドクター・ヘイドックはたずねた。「今日の調子は」
ミス・マープルは枕ごしに弱々しく微笑みかえした。
「そうね、よくなったと思うわ、かなりね」彼女は認めた。
「でもものすごく憂鬱なのよ。あのまま死んでいたら本当によかったのにと思ってしまうわ。
どうせ、わたしはおばあさんだからねぇ。必要とする人もいないし気に懸けてくれる人もいないもの」
ドクター・ヘイドックはいつものように、ぶっきらぼうな調子で遮った。
「まあ、まあ。この種のインフルエンザの典型的な病み上がりの症状です。
あなたに必要なのはくよくよしなくないようにするための何かです。まずは精神強壮剤」
ミス・マープルはため息をついて首をふった。
「そして」ドクター・ヘイドックは続けた。「私の薬も持ってきましたよ!」
彼は長い封筒をベッドの上にぽん、と投げた。
「さしあげましょう。あなたの専門のパズルの一種です」
「パズルですって?」ミス・マープルは興味をもったようだった。
「私の文学的取り組みです」ドクターは少し赤くなって言った。
「ある話を一般化してみたんですよ。『彼は言った』『彼女は言った』『その子はこう考えた』
…みたいに。話の内容は事実ですがね」
「でもなぜこれがパズルなのかしら?」ミス・マープルはたずねた。
ドクター・ヘイドックはにやりとした。「解釈があなた次第になるからですよ。あなたがいつも自分で証
明してみせるくらい賢いのか、こんども見てみたいと思いましてね」
そんな捨て台詞を残して、彼は出て行った。
ミス・マープルは手書きの原稿をとりあげ、読み始めた。
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