宮崎県及び
鹿児島県
都城盆地硝酸性窒素削減対策実行計画(第1ステップ)
| 平成17年8月 | 都城盆地硝酸性窒素削減対策協議会 | 宮崎県の1市6町(都城市、三股町、山之口町、高城町、山田町、高崎町、高原町)と鹿児島県曽於市の一部(旧財部町、旧末吉町) | 都城盆地硝酸性窒素削減対策実行計画(第1ステップ) |
家畜排せつ物対策
1 現況
都城盆地内の1市8町においては、畜産部門が農業の主軸としての位置付けにあり、生産振興を図ることと併せて、家畜排せつ物の適正な管理を図ることが重要な課題となっています。
平成11年11月から、「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」(以下、「家畜排せつ物法」という。)が施行されており、平成16年11月からは管理基準の遵守が義務化されています。
こうしたことから、畜産部門においては、家畜排せつ物処理施設等の整備を進め、たい肥化処理や浄化処理等により家畜排せつ物が適正に管理されるよう努めています。
また、処理施設の整備に要する投資額が多額である等、施設整備が困難な畜産農家においては、ビニールシート等不浸透資材を利用した簡易な方式による管理も行われています。
さらに、家畜排せつ物の利用にあたっては、多くの畜産農家の場合、それぞれ個別で農地への還元や近隣の耕種農家への譲渡等により対応している状況にあるが、経営の専業化や規模拡大化が進む中、家畜排せつ物の利用については農家個別での対応が困難になっており、適正利用の促進が今後の大きな課題となっています。
地下水の硝酸性窒素濃度分布は、平成12 年8月時点の分布として求めており、平衡状態の測点では解析対象期間の平均値を、上昇または下降傾向の測点については平成12 年8月時点の値を用いた。
志和池地域が水道水の水質基準の10mg/L を越える測点の割合が極端に高く42%であり、庄内地域、中央地域は10%程度であった。
また、硝酸性窒素濃度10mg/L を越える測点の割合は約14%であり、平成8年度に行った398 自治体の調査結果の5.3%に比べて高い。
結果
地下水の硝酸性窒素濃度は1.1〜28.4 mg/L の範囲にあり、32(約65%)の井戸で水道水の水質基準(10 mg/L)を超え、調査地区における地下水汚染が深刻であることが確認された。硝酸性窒素のδ15N 値は4.2〜17.8‰の範囲にあり、19(約39%)の井戸で9‰を、5(約10%)の井戸で12‰を超えた。
硝酸性窒素濃度はCa イオン濃度と水温を除くすべての水質変数と有意(P<0.05)な相関を示し)、Ca/Cl 比とは負の関係(r =–0.386、P=0.006)に、δ15N値とは正の関係(r =0.444、P=0.001)にあった。
また、硝酸性窒素濃度は、標高が高い井戸ほど(r =0.304、P=0.034)、また、半径100 m 圏内の畜舎面積が大きい井戸ほど(r =0.433、P=0.002)高かった。
さらに、硝酸性窒素濃度は飼養畜種(P=0.044)や耕地への糞尿散布の有無(P=0.008)により有意に異なり、豚>鶏>牛>“なし”の順に高く、耕地への糞尿散布“あり”の場合が“なし”の場合より高かった。井戸の用途の効果も比較的有意(P=0.121)であり、畜産>その他であった。
硝酸性窒素濃度の井戸間変動の約45%(P=0.0000)が5種類の説明変数をもつ重回帰モデルにより説明できた(表4-5-6)。硝酸性窒素濃度は、標高が高いほど、半径100 m 圏内の畜舎面積が大きいほど高く、標高1 m の増加につき0.19 mg/L、畜舎面積100 m2 の増加につき0.33 mg/L 増加した。また、周辺耕地がない場合や田の場合に比べて、畑の場合には約3.41 mg/L 高く、田畑の場合には約0.65 mg/L高かった。
さらに、家畜(牛、豚もしくは鶏)を飼養している場合には飼養していない場合よりも約2.97 mg/L 高かった。
硝酸性窒素の由来
硝酸性窒素のδ15N 値は化学肥料由来では‐6〜+2.6‰、土壌窒素由来では平均+8.8‰、生活排水の土壌処理の結果では平均+11.1‰、家畜排せつ物由来では平均+14.4‰とされている7)ことから、δ15N 値が12‰を超えた井戸の硝酸性窒素は家畜排せつ物に由来する部分が多いものと考えられる。
同時に、硝酸性窒素濃度が高い井戸ほどδ15N 値が高かったことから、汚染が進んだ井戸ほど家畜排せつ物に由来する部分が多いものと考えられる。
このようなδ15N 値と硝酸性窒素濃度の正の相関関係は、化学肥料の影響が比較的大きいとみられる畑作地帯における関係7)とは対照的である。
さらに、硝酸性窒素濃度が、
①人畜の影響の指標とみなされる7)Ca/Cl 比と有意な負の相関を示したこと(表4-5-5)、
②半径100 m 圏内の畜舎面積が大きいほど高かったこと、
③家畜を飼養している場合には飼養していない場合よりも高かったことは、家畜排せつ物が地下水の汚染源であることを示す間接的証拠としてとらえられる。
硝酸性窒素濃度が、標高が高いほど高く、耕地への糞尿散布“あり”の場合がない場合より高く、周辺耕地が畑の場合に高かったことは、家畜排せつ物がもっぱら畑に散布され、畑が他の土地(田など)よりも標高の高い場所に分布することを反映するものととらえられる。
硝酸性窒素の動態
硝酸性窒素濃度に対する、井戸から半径100 m 圏内の畜舎面積の密接な関連性と、井戸の存在する場所における飼養家畜単位の非関連性は、硝酸性窒素濃度が、井戸の存在する場所よりも、その近傍も含めた空間的範囲における家畜飼養状況を反映することを示し、家畜排せつ物あるいは硝酸性窒素が水平方向にある程度移動することを示唆するものである。
移動の可能性としては、地上での人間による運搬、地下水中での拡散などが考えられる。
結論
本研究から、“都城市において家畜排せつ物由来の窒素が地下水の硝酸性窒素濃度に影響を及ぼしている“という杉本ら(2000)6)の推察を支持する、いくつかの直接的・間接的証拠が得られた。
同時に、散布された硝酸性窒素の動態や地下水の硝酸性窒素濃度を制御するための示唆が得られた。家畜排せつ物は、地下水の汚染だけでなく、河川などの地表水や大気の汚染源ともなり得る。
したがって今後は、家畜排せつ物に由来する物質の動態を、陸圏・水圏の広範囲にわたって把握し、予測可能にするための研究を、さらに進めることが必要であると考えられる。
特に物質動態の予測という観点からは、本研究で得られた知見を取り入れ、硝酸性窒素の動態のより機構的なモデルを開発することが必要である。
硝酸態窒素による水質汚染と防止対策について
家畜ふん尿が原因となる水質汚染、とくに地下水汚染については硝酸態窒素による汚染の問題が大きい。わが国の飲用水中の硝酸態窒素濃度の基準は10mg/L以下となっている。
ふん尿に含まれる窒素は主としてアンモニア態と有機態であるが、有機態窒素の一部は比較的速やかに分解されてアンモニア態窒素に変化する。アンモニア態窒素は土壌に吸着されるが、土壌中に生息する硝化菌の働きで硝酸態窒素に変化する。
硝酸態窒素は土壌に吸着されにくく、雨水などによって地下に浸透しやすい。ふん尿が畜舎から流れ出したり、素堀り貯留をしたり、家畜ふんの野積みなどをすると、硝酸態窒素となって地下浸透しやすくなる。
過去に報告された小規模経営の牛舎周辺にある井戸水の水質調査では、牛舎から10mの位置にある井戸の硝酸態窒素濃度は100mg/Lを超えており、牛舎から流れ出した廃液の浸透によるものと考えられる。同様に、ふんが野積みの状態で放置された酪農家周辺の井戸水も硝酸態窒素によって汚染されていると報告されている。
しかし、現在では「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」により堆肥化施設が整備され、雨よけで堆肥が製造されるようになっており、このような問題は改善されてきた。
ところが、製造した家畜ふん堆肥を不適切に農耕地に施用すれば、硝酸態窒素が地下に浸透し、地下水汚染を引き起こす危険がある。堆肥に含まれる有機態窒素の多くは施用した当作期間中には分解されないので、過剰の堆肥を連用すれば窒素が土壌に蓄積し、土壌から供給される硝酸態窒素が年々増加し、地下浸透しやすくなる。図-1に、黒ボク土畑で年2作の露地野菜栽培を10年間継続した場合の深さ1mの土壌水中の硝酸態窒素濃度を示した。
豚ぷん堆肥に含まれる窒素の効果を化学肥料の50%として、施肥窒素の全量を堆肥で賄う栽培を続けると、3年後から濃度が上昇し、6年目以降は化学肥料と同等の濃度となる。つまり、有機質資材である家畜ふん堆肥も利用方法を間違えば地下水汚染を招く。なお、硝酸態窒素の地下浸透をコンピューターで予測するシミュレーションモデルが開発されており、図-1に示したように正確な予測ができるようになってきた。
家畜ふん堆肥の不適切な施用による地下水汚染を防ぐには、土壌から供給される無機態窒素(アンモニア態や硝酸態窒素)の多少に応じて堆肥の施用量や施肥窒素量を加減することが必要である。そのためには、土壌診断を実施し、土壌から供給される無機態窒素量の変化を把握することが求められる。また、堆肥の施用から栽培開始までの期間が長いほど硝酸態窒素の地下浸透が起きやすいので、無機態窒素を多く含む堆肥では適正な施用時期にも心がける必要がある。
上記のように、家畜ふん尿による硝酸態窒素の地下水汚染を防止する場面は、畜舎や堆肥舎から農耕地へと移りつつある。今後、適正な堆肥施用に努めることが重要である。
宮崎県の口蹄疫病は全県に広がりを見せている。新内閣は「初動対応に万全を期す」といっているが、初動対応に失敗した結果がこれではなかったのか。
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わが国の畜産業は中山間地に多く、その意味では地下水の上流域に当たる地域が当然多くなる。また、小規模自治体が地下水データを豊富に持っているとは考えにくく、農水省は指針を出しただけで終わりするのではなく、一定規模以上の畜産業を抱える地域での地下水や水源データの収集にも力を注ぐべきだろう。
後手に回った対策で補償に巨費を投じるよりも、危機管理対策として十分なデータ収集をしておく方が桁違いに安く有意義であることは歴史が教えているところだ。
口蹄疫の次の被害が拡散しないよう、対症療法的な対応は勿論必要ですが、根本的な原因の究明が必要と思います。情報がありましたら下のコメント欄等にお教えくださいますようお願いします。
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