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(「雪国」のなかに「徒労」という字句が十二回出てくるそうだ。)
日記の話よりも尚島村が意外の感に打たれたのは、彼女は十五六の頃から、読んだ小説を一々書き留めておき、そのための雑記帳がもう十冊にもなったということだった。
「感想を書いとくんだね?」
「感想なんか書けませんわ。題と作者と、それから出て来る人物の名前と、その人達の関係と、それくらいのものですわ。」
「そんなもの書き止めといたって、しようがないじゃないか。」
「しようがありませんわ。」
「徒労だね。」
「そうですわ。」と、女はこともなげに明るく答えて、しかしじっと島村を見つめていた。
全く徒労であると、島村はなぜかしらもう一度声を強めようとした途端に、雪の鳴るような静けさが身にしみて、それは女に惹きつけられたのであった。彼女にとってはそれが徒労であろうはずがないとは彼も知りながら、頭から徒労だと叩きつけると、なにか反って彼女の存在が純粋に感じられるのであった。
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名文のような、悪文のような、不思議な文体ですね。
2008/7/11(金) 午後 2:29 [ 吉田ツグオミa.k.a.伊丹甚左 ]
川端の文章、というより他ない文章ですね。真似をするとひどい文章になりそう。
2008/7/11(金) 午後 3:29 [ jyhs0114 ]