遠い蒼空

末期ガン患者入院記録

深沢七郎

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以前、「ある文学少女」というようなタイトルで書いたことがあるが、その時は自分の記憶だけに頼って書いた。
本を渡した関係で、詩を書いているというので読ませてもらった少女がいて、数年後、深沢七郎の「人間滅亡的人生案内」のなかにその名前を見つけた。

長いので、部分的に引用する。

「私はごく普通の少女だと自分で考えています。この手紙を書く理由も実はよく分からないのですが、毎月いろいろな人たちの文を読んでいて、何となく刺激されたのです。
昭和四十ニ年の末に、父を亡くしました。脳いっ血です。でも、父は胸も悪かったのです。とてもよく太っていたので、それを知った時は驚いてしまいました。でも、それが相談の内容ではありません。
私は小学校五年ぐらいの時から小説に興味をもって、いくつか短編を書きました。…雑誌に投稿しても一篇を除いてみんな落ちてしまいました。書いた時はみんな自信があるのですが、落ちてみると、なるほどと思わざるを得ないのです。
亡くなった父は、新聞を発行していました。土地などの専門誌です。若い頃から遊びがひどくて、母を苦しめました。妹に会わされた時は、私もショックでした。でも、私は父が大好きなのです。
他の人が父親をどう愛するのか知りませんが私は父が結核と知っても、夜はいっしょに寝たかったし、そばにいたくて仕方がありませんでした。よく、坐っている父の背におぶさったり、寝ころんでいる上にまたがったりしました。自分の創作を父に見てもらうのも喜びでした。
病気は悪化し、入院しなければならなかったのに、父は相変わらず働かなければなりませんでした。…父のためにも、経済的にも、私は働かなければいけなかったのに、そうしなかったのです。…私は父の死を予期していたのです。
私は、今母方の郷里の神戸に住んでいます。でも、愛する故郷、名古屋以外の街はどこも大嫌いです。

…今、とにかく何をするのもいやなのです。できれば毎日家で寝ていたいのです。誰かに思いきりもたれかかったり、腕を組んで歩いたり、したいのです。それが私の相談なのです。
小説のことを書きましたが、それにしても今のところ劣等感が育ちすぎて情熱ももとないし、たまに書きたい題材があっても、どこから手をつけてよいのか、全くとほうにくれてしまいます。コンプレックスがあるのです。
私は恋人もボーイフレンドもいないし、女の子の友もありません。とにかく、私は寂しくて甘えたいのです。…

(実名が書いてあるが、前に書いたようにMさん、としておく。17歳とある。深沢七郎の回答はまた次回)


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