遠い蒼空

末期ガン患者入院記録

夏目漱石

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「三四郎」より(1 ) ケータイ投稿記事

以前に同じ部分を引用した。もう一度。以下引用。

 三四郎はその日から四日ほど床を離れなかった。五日目に怖々ながら湯に入って、鏡を見た。亡者の相がある。思い切って床屋へ行った。その明る日は日曜である。
 朝食後、シャツを重ねて外套を着て、寒くないようにして、美禰子の家(うち)へ行った。玄関によし子が立って、今沓脱へ降りようとしている。今兄の所へ行く所だという。美禰子はいない。三四郎は一所に表へ出た。
「もうすっかり好いんですか」
「ありがとう。もうなおりました。里見さんはどこへ行ったんですか」
「兄さん?」
「いいえ、美禰子さんです」
「美禰子さんは会堂(チャーチ)」
美禰子の会堂へ行く事は始めて聞いた。どこの会堂か教えてもらって、三四郎はよし子に別れた。横丁を三つほど曲るどすぐ前へ出た。三四郎は全く耶蘇教に縁のない男である。会堂の中は覗いて見た事もない。前へ立って、建物を眺めた。説教の掲示を読んだ。鉄柵の所を往ったり来たりした。ある時は寄り掛かって見た。三四郎はともかくもして、美禰子の出てくるのを待つつもりである。
 やがて唱歌の声が聞えた。賛美歌というものだろうと考えた。締切った高い窓のうちの出来事である。音量から察するとよほどの人数らしい。美禰子の声もそのうちにある。三四郎は耳を傾けた。歌はやんだ。風が吹く。三四郎は外套の襟を立てた。空に美禰の好きな雲が出た。
かつて美禰子と一所に秋の空を見た事もあった。所は広田先生の二階であった。田端の小川の縁に座った事もあった。その時も一人ではなかった。迷羊(ストレイシープ)、迷羊。雲が羊の形をしている。


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