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「銀座サロン」は再録されていないから、引用しておく意味はあると思い、気のついたところを少しずつ引用する。
「隠された素顔は熱血漢」と題され、ゲストは芦田伸介。
吉行 芦田さんとは、もう二十年以上の付き合いだけど、こういう形で話をするのは二度目だね。それは山本富士子がコップで冷や酒を飲んでるとこ見せたら具合悪いでしょう。それと同じなんだ、この旦那は。「氷点」のころはイメージが崩れるから(笑い)。
芦田 吉行に「芦田さん」って言われると、気持ち悪いね(笑い)。
円地 いつもは、なんて呼ぶの。
吉行 「アッちゃん」とか「役者」とか(笑い)。でも、年もずいぶん上のほうだし(笑い)。しかし、芦田さんはおどろくほど身体頑健だね。マージャン、ゴルフ、バーとつづけてやれるものね。
円地 もともとお強いんですか。
芦田 いや、それほど強くないですよ。
吉行 強いっていうのは、体がですよ(笑い)。
芦田 わかってるよ(笑い)。ぼくは自動車事故をやって、それから胃潰瘍切って、胆のう切って、十年おきに手術してきたもの。
吉行 一度、酔っ払ってる芦田さん乗っけて運転してたら、検問にぶつかってね、芦田さん、窓あけて「ヤッ、ご苦労さん」って言うんだ。向こうも「あ、どうも」。やっぱり警官同士の応対ね。「七人の刑事」のキャップになっちゃっているわけ(笑い)。「氷点」については、なにかそういうことなかった?
芦田 …民芸の大先輩の女優さんが「アッちゃんって、けがする前までは、アンパンみたいな顔してたけれども、けがして顔が引き締まって、いい男になったわね。あれがけがの功名っていうのかしら」って。頭にきましてねえ(笑い)。洒落も度が過ぎるといけませんね。
吉行 どうですか?もう「氷点」のポーズをとらなきゃいかんという、そういう気分からは逃れられましたか。
芦田 もうないですね。
吉行 じゃ、もう地を出しても…
円地 でも、「氷点」って、どうしてあんなに当たったんでしょうね。
吉行 …あれは主婦層に人気があったの?どんな男なの?
芦田 なにかこう、男の苦しみを一人で背負って、耐えてるみたいなところなんだろうね。
吉行 そういうのが好きだからね、女は。
円地 吉行さんみたいなのは、ダメね(笑い)。
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