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同じ 1980年 308号。
銀座サロンは、ゲスト山藤章二、ホスト役は円地、吉行、小田島。
タイトル「山藤流アングル」。一部引用。
吉行 あなたのはさ、他人のひどい似顔絵の隅に、サインがわりに自分の顔をよく描いているんだもの、純情そうに。
山藤 そうかなあ。本人は鏡を見て写実的表現をしてるんだけど(笑い)。ま、自分の顔を悪く描きゃ評判いいんだろうけど、それじゃおもしろくないからね。
吉行 そうね、自分だけよくするってとこがミソだもんね。
山藤 いや、そうじゃないんですけどね。
吉行 いや、あれはやっぱしそうだ。似顔絵の隅に、自分のあどけない顔を描くんだ。あの落差だよ(笑い)。
山藤 吉行さんはいささか被害妄想のケがあるんですが、小田島さんご覧になって、ぼくの絵って、そんなにヒトをひどく描いてますか。
小田島 たとえば近藤日出造なんかだとね、ある意味で、人間味がないというか、もっと冷たい目で見た感じですね。山藤さんの絵っていうのは、愛憎ともに人間的だって感じがするんですよ。そうなるとね、機械的に描かれれば腹も立たないけれど、山藤さんに描かれると腹が立つ人もいるだろうって気がしますね。
山藤 なるほど。こういうふうにかみくだいていわれると納得がいく。
吉行 ぼくは被害妄想ないよ。それはね、どっかであなたが誤解してるか、あるいは、ぼくが被害妄想のフリをしてみせたこともあるかもしれないけれども、それはまったくないですね。でもぼくの似顔絵は、善意のフィルターを通して出てきてるってことは分かるものね。
小田島 だけど山藤さんの描いた吉行淳之介っていうのは、実物よりいいんじゃないかってくらい…。
吉行 いや、このあいだ、初めての高校生の女の子から手紙が来て、「わたしは山藤さんの描いた吉行さんの顔のファンです」と。
円地 すごいじゃない。
吉行 だから、こういう人がいるなら、山藤さんは十のうち九は、悪意をもたないで描いているのであろうと…。
山藤 悪意なんてゼロですよ、吉行さんに関して。
吉行 ゼロなの、っていうと、また何か言われそうだから(笑い)。
小田島 吉行さんの目がいいですね。あの絵の。
山藤 いいでしょう、色っぽいでしょ。
吉行 癇癪筋もいいでしょ、コメカミに出てるの。あれもぼく、気に入ってるのよ。
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