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えー、小説の「視点」について少し触れます。
三人称で書かれた小説は大きく分けて二通りの語り方があります。
一つはいわゆる「全智の作者」と言われるもので、語り手が作中人物のすべての内面を語る方法です。19世紀の西欧の小説にはこの型が多いです。
これは語り手がすべて説明をしてしまうので、語り手の言説に従うしかない。
二つ目は三人称を使っていても、そのうちの一人の目に写ることに限って書いてゆく方法です。これはその一人以外の作中人物の内面については語り手は説明しません。
「三四郎」はこちらの型になります。
こちらの三人称の語り方は一人称で「私」を語り手にするのとあまり変わりがないのですが、三人称を使うことによって作品と作中人物の距離が確保されます。
この型は日本では「一元描写」と呼ばれてきたようです。「多元描写」という言い方に対応するものでしょう。
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