遠い蒼空

末期ガン患者入院記録

私立吉行淳之介研究会

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「吉行淳之介を読もう」という意図だけの何の特典も義務もない研究会です。ご参加下さい。
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銀座百点(7 ) ケータイ投稿記事

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1982年 332号。
この号には、後藤明生のエッセイ、吉田知子のショートショートが載っている。
銀座サロンは、ゲスト田代素魁、ホスト役は円地、吉行、小田島である。
銀座サロンから一部引用。

吉行 ぼくは二十年代に「モダン日本」にいたんですが…あのころは、わたしはたしかお目にかかったことないんです。まだ二十代半ばでしたけど、部下がいまして、その女の子にもっぱら…。
田代 いや、吉行さんに初めてお目にかかったとき、「初めまして」ってご挨拶申し上げたら、「いや、ぼくは田代さんに借金があるんです」って、おっしゃった。
吉行 そうです。社としてね(笑い)。
田代 あなた、あのころ責任者なんでしょう。  
吉行 そうなんです。「モダン日本」とは別にもう一冊ありましてね。そっちのほうのです。それが責任者というべきか、借金断り係というべきか、変なものにならされちゃって、閉口しました。
円地 だめだわ、そんなの(笑い)。
吉行 最初にぼくが描いていただいたのは「唇と歯」のときでしたかね。田代さんの画風がガラッと変わって、ぼくはこれはおもしろいから早く予約してくれと言って、「週刊読売」に頼んだことありますよ。
田代 そうでしたか。
吉行 ちょうど漫画のようなタッチの、とても新鮮な感じで…。あれは石川達三さんが最初だったですか。
田代 そう。「僕達の失敗」。
吉行 わたしはあのタッチのもので毎日新聞もお願いしましたね、「浅い夢」っていうのも。

吉行 悪人は田代という時代がありましたね。「白い巨塔」のあたりですか。
田代 あの前後ですね。あれは山本嘉次郎さんあたりが言い触らしたのかもしれませんが、「女の岩田に男の田代」というふうなことですね。あのときぼくは石川さんの「傷だらけの山河」を「週刊朝日」に描いていましてね。それに対抗して「サンデー毎日」が山崎豊子さんを立てまして。ですから二十数名の絵描きさんピックアップして、編集長はじめ全部で選んだらしいです。それで向こうとしては、いちばんにあがってくるのが宮本三郎なんですね。当時宮本三郎は芸術院会員を狙っていましたから、もう挿絵描かないんですよ(笑い)。

円地 それじゃ、両方描いたの。
田代 ええ。そのときに悪人画家という名称をつけられた。

田代 ほんとうに悪人を描ける画家というのは、実はいないんだそうです。非常に善人のごとくにみえて内心腹黒いやつ、そういうのを、心理描写を描けるやつがいないというんです。みんな悪人面を描く。そうするとどうしても宮本と田代になるらしいんです。
円地 あの財前五郎は、色悪みたいなものですものね。
吉行 あの絵は今でも目に浮かんで、出てきますよ。

田代 でもやっぱり、男を描く人っていうのは、女を描く人に比べると損ですね。
吉行 どういうところで?
田代 女を描く人のほうが売れますよ。鏑木清方はじめ、伊東深水にしても岩田専太郎にしても売れますけど、男で売れる画家というのはそういないんですよ。

吉行 いや実はね、さっきでてきた「浅い夢」の主人公の女性のイメージと、田代さんの絵がぴったりなんですよ。それでね、ベッドで体をねじって裸でいる姿勢なんかも、もうぼくのイメージとうり二つなのね。田代さんがぼくの頭の中を覗きに来て描いたようで、びっくりした。
円地 女でしょ。
吉行 ええ。体の形、顔から姿勢までそっくり。なんであんな絵が描けたか。

吉行 あれは驚いたな。やっぱり女に関しても隅におけない。
円地 そうねえ。やっぱり男の画家なんてことないわ。女の画家よ。

銀座百点(6 ) ケータイ投稿記事

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1982年、331号。
「銀座サロン」はゲストは小沢昭一、ホスト役は円地、吉行、小田島。
タイトルは「「四畳半的こころ」の話」。
冒頭の一部分を引用。
吉行 きょうは小沢さん、いいんですよ。広いでしょう。いつも狭い部屋でね。
小沢 (見回しながら)すごいや、金屏風で。
円地 こんなこと、しばらくないんですよ。
吉行 いつもあなた好みのとこでやってたんだけど…。いまここは改装中でしてね。
小田島 四畳半という感じでね。

小沢 四畳半が好きで、自分のうちを四畳半だけのうちにしたんですよね。
小田島 ほう。
小沢 五部屋と台所と風呂場ですが。
小田島 五DKというやつだね。
小沢 その五部屋を全部四畳半にした。
吉行 卓抜だね。
円地 何組入るかしら。
小沢 それはですね。ほんとに若いときから女郎屋のおやじになるのが憧れだったわけですよ。だもんだから映画でも森繁さんのやったみたいな女郎屋のおやじの役をやりたくて、やりたくてしようがないんです。いまだに女郎屋のおやじってやったことないんです。
小田島 ありそうな役だな。
小沢 ありそうでしょう。下働きはいっぱいやっているんですがね。
吉行 そうなんだよ。ポン引きとか…。

同じく、遠藤周作VS吉行淳之介、と題された対談。一部引用。

遠藤 きみは、おれが美しい女とみにくい女を、根本的に区別できん男だと思っているらしいな。

吉行 しかし、正直なところ、きみはわかりやすいタイプを好むところがあるね。

吉行 きみは女優というと目がないねえ。これを少し心理分析していただきたい。

遠藤 女優というのは、おれにとって特別な存在だという気が本能的にするんだよ。オナラもしないし、ウンチもしないというイメージがある(笑)。

吉行 どうすりゃなおる。
遠藤 でもぼくは、いつまでも期待をもっていたいという気がなきにしもあらず、なんだ。
吉行 ウンコすることがわかったらいかんか。
遠藤 おれも、もうおとなだからウンチしてもいいけど…

遠藤 おまえはあんな翳のないやつ嫌いなんだろう。だいたい痩せ型で、ちっちゃいやつだな。おれはデブで少し大柄なのがいい。
吉行 母性を感じさせるか。
遠藤 そうなんだね。女優にも、少年時代の母性的なものを感じてるんじゃないかな。そうだ。お姉さん意識と結びついているんだ。ぼくはいまでも、姉と弟の出てくる映画を見ると興奮する。

同じ「夜の噂」の月報。
遠藤周作の文章と遠藤周作と吉行淳之介との対談が載っている。
まず、遠藤の文章。
「     紙きれ
もう十五年ほども前に胸をやられて長い間、入院していたことがある。…恢復一向にはかばかしくなく、二度にわたる大手術にも失敗すると、さすがに意気消沈してしまった。原稿が書けなくなると入院費はおろか、家族の生活費もなくなってしまったのもこたえた。なにしろ三年間、病院にいたのだから。
その時、九官鳥を飼った。病室に九官鳥をおいて真夜中、こやつだけに本心を話しかけた。…
家族も見舞客も医者も看護婦も、私がなぜ、九官鳥を飼ったのか、もちろんわからない。退屈をまぎらわすため、と考えていたようだ。…私は三度目の手術の危険は予想していたから、ひょっとすると今度はおさらばかもしれぬと寂しく思った。私が死ぬ。空が晴れている。その時、この九官鳥が突然、私の声で一言、二言、なにか面白いことを言う。そうすると皆、びっくりするだんべえというのが私の最後の悪戯になる筈だった。
三度目の手術が迫ってきて、私が検査か何かで部屋にいなかった時、吉行がたずねてきてくれた。
部屋に戻った私は彼が来たことを、ベッドの上においてある小さな紙で知った。
吉行は九官鳥に目をつけ、すぐに私がなぜこんな鳥を飼ったかを見ぬいて、オヌシハ気ガ弱クナッテオルヨウダ、というような意味の言葉を紙きれに書いていた。彼の眼力にもおそれ入ったが、その優しさにじんときた。あの紙きれのことは忘れることはできぬ。
…吉行にはいろんな意味で優しくしてもらった。」

銀座百点(4 ) ケータイ投稿記事

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同じ 1981年 318号。
「銀座サロン」。ゲスト、尾崎一雄、松枝夫妻。ホスト役は、円地文子、吉行淳之介、河野多恵子。
「「私小説」的な話」というタイトルで、出張版。

河野 尾崎さんはいまでも、高校生と渡り合ったり…。
尾崎 湘南電車の中でね。
尾崎夫人 そういうことしたら、危ないですよね。
尾崎 だけど年寄りでしょう。彼らにしてみりゃ、一発でノック・ダウンできるような老人ですよ。それが、まじめな顔して、本気で、目をつりあげて言うんだから、手をあげないですね。
円地 どうなすったの?
尾崎 いやいや、たいしたことじゃない。
河野 なんか高校生が、ドアのところにもたれたりするので、車掌が注意したら…。
尾崎 高校生がそのとき、車掌の悪口言った。「なんだ、安サラリーマン」て。それでぼくが怒ったんですよ。
円地 どういうふうに怒ったの?ちょっと、怒りぶりを。
尾崎 「そういうことを言うもんじゃない」と、ドスをきかして言ったわけ。
吉行 ドスをきかして(笑い)。
尾崎 ぼくは暴力団みたいなやつにも、タバコやめろって言ったけどね。殴らないですよ、彼ら。

尾崎夫人 この人、自分が我慢してますから、人が喫んでると、気に入らないんですね。
尾崎 癪にさわるんです。「わしゃ、七十五だ。二十歳時分から吸ったけども、それでもこのとおり、我慢しているんだ」。そうしたら肩越しにね、横目で見て、またプーッと煙を(笑い)。
吉行 そりゃ…感じあるなあ。
尾崎 こりゃあ、冷戦だと思って、がんばろうとしたところへ、車掌がやってきて…。

河野 湘南電車に乗りますと、私は尾崎さんのお書きになっている車中のお話があれこれ思いだされてきましてね。
尾崎夫人 平塚―東京間は、タバコがいけないんですね。

河野 あの高校生との渡り合いでも、最後は両方でニヤッとなさるんでしょ。
尾崎 そうですね。そういう爺さんが珍しいんですよ。おそらくそんな爺さんに初めて会ったんじゃないかと思うんです。ホームに降りてから、窓ガラスをトントンと叩くんです。

尾崎 吉行さんは立回りなんかやったことないでしょ。
吉行 ないです。
円地 ないですよ、二枚目だから。
吉行 弱いから。
円地 女が止めに出るわ(笑い)。
吉行 そんな格好のいいことは…(笑い)。冗談じゃない。
尾崎 ぼくはやったんですよね。だいたい、心掛けがよくない。お巡りをからかったりするんですよ。銀座でね。


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