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混沌の時代のなかで、真実の光を求めて

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孤独死大国 弁護士ドットコム 5/5(金)
  (ノンフィクション・ライター 菅野久美子)
〈上〉
 亡くなる直前もラーメン、35年前に姿を消した父の「迷惑な」最期

  いま日本は「孤独死大国」になろうとしている。国立社会保障・
 人口問題研究所の調査で生涯未婚率が過去最高を更新したとメディア
 各社が報じた。生涯未婚率は50歳時点で未婚である人の割合を示す。
  ※ 生涯未婚率、男性23%・女性14% 過去最高
     「いずれは結婚したい」と考える18〜34歳の未婚者の割合は
      男性85・7%、女性89・3%
 その後、結婚をすることになる人もいるが、まだ少数派。また、
 配偶者や子どもがいても「おひとりさま」になることもあるだろう。
 つまり、誰にとっても「おひとりさま」は他人事ではないのだ。

  そこで、懸念されているのが、家で亡くなって死後何日も遺体が
 発見されないという「孤独死」という デッドエンドだ。民間の シンクタンク
 であるニッセイ基礎研究所の調査によると、孤独死の数は年間3万人。

  そんな悲劇が実際に身内に生じたらどうなるのか。父親の孤独死に
 直面した会社員の徳山和也さん(仮名・55歳)の生々しい経験を
 もとに、“縁なき社会”の現状を追った。


 ●アル中、借金、35年会っていない父親

  「突然、警察から電話があってオヤジが孤独死していたことを知
 ったんですよ。土曜の朝の8時半くらいに電話がきて『お父さんが
 亡くなったんです』と。しかも、電話口の相手は捜査1課だと言う
 んです。殺人事件を手掛ける部署ですよね。とにかく びっくり
 しましたね」
  寒さの残っていたその日のことを、徳山さんはそう語り始めた。

  私と徳山さんとは、彼が依頼した千葉県の遺品整理業者を通じて
 知り合った。遺族への孤独死の取材というと、一般的な反応として
 あからさまに嫌な顔をされ拒否されることが多い。孤独死という結末
 が、通常ならば 他人には触れられたくない家族関係の根幹に関わる
 部分であるからだ。それは、取材者である私でも痛い程よくわかる。

  しかし、徳山さんは「孤独死の現状を知ってもらえるなら」と、
 二つ返事で取材を快諾してくれたのだ。


  「たまたま仕事も休みで、趣味の ウォーキングか 温泉でも行こうか
 なんて思っていたところに、そんな電話。そのまま父親が住んでいた
 という千葉県内の警察署に遺体の引き取りに行くことになりました」

  徳山さんの父親は かつては大手自動車 メーカー に勤務し、製造ライン
 で自動車の部品を作っていた。しかし、ある時からアルコールに
 入り浸るようになり、複数の飲み屋などにツケを抱え、消費者金融
 に足繁く通い借金を作るようになる。しまいには住宅ローンの返済も
 滞るようになった。

  一家の家計は火の車となり、両親は 33年前に離婚。当然ながら、
 徳山さん自身、父に関する良い思い出は全くない。さらに以後ずっと
 音信不通だったため、こう言ってはなんだが 他人同然だという。

  そのため、降って湧いたような突然の父の訃報に 徳山さんは困惑
 した。母親は とうに離婚しているので、実子で長男である徳山さんに
 警察から連絡がいったのだが、その事態を理解するまでに 少し時間
 がかかったのは言うまでもない。母親も父親の死を後ほど知らされた
 が、あからさまに関わりたくなさそうな態度だった。

 「だって、今まで散々家族に迷惑をかけてるんですよ。オヤジに
 対して、心情的には恨みつらみだけしかないんですよ。全く良い
 イメージがないですからね。だからできるだけ関わりたくなかった
 んです。どこかで借金しているかもわからないしね」


 ●焦げ付いた鍋の中にはラーメンが…

  徳山さんのようなケースは決して珍しい話ではない。通常 孤独死が
 発覚すると、警察は 徹底的に身内の連絡先を調べ上げ、実子だけで
 なく、甥や姪までもいとも簡単に突き止め、遺体の引き渡しを求めて
 連絡をしてくる。縁遠い甥や姪にしてみれば 寝耳に水であろう。

  徳山さんは、父親の遺体の引き取りを承諾し警察に赴いたが、
 ずっと疎遠な状態が続いていれば、親類による遺体の引き取り拒否
 も少なくないという。 


  徳山さんの父親が暮らしていたというアパートに 遺体が発見されて
 数日後という状況にも関らず、お邪魔させてもらえることになった。

  築30年は下らないと思われる古びたアパートは、日当たりが悪く、
 室内は寒々しかった。部屋はガランとしていて、モノは少なく、
 キッチンのガス台には、鍋にラーメンがそのままの状態で置き去り
 にしてあった。

  それが 父親の身に起こった出来事を伝えていた。

  鍋の中のラーメンは 黒く焦げ付いている。台所の冷蔵庫を見ると、
 中は空っぽ。父親は、まるで、玄関の方に助けを求めるようにして、
 突っ伏していたのだという。ガスの火は安全装置が起動して しばらく
 して自動停止したのだろう。

  その日も、いつも通りインスタントラーメンを作ろうとしたが、
 突発的な異変に見舞われ、そのまま倒れてしまったということが、
 現場の状態から一目でわかった。

  晩年は年金生活だったようだが、最後まで飲み歩く生活はやめられ
 ずに、困窮した末、毎食ラーメンという不摂生な生活を送っていた
 ことが浮かび上がってくる。遺品整理の際、押し入れから出てきた
 のは、段ボールいっぱいの袋入りのあのインスタント麺だった。

 「このキッチンの床に、オヤジは目を見開いた状態で、仰向けで
 倒れていたみたいです。ほんと、毎日ラーメンだけの生活だったんだ
 なぁ…」

  ため息をつくように、徳山さんはポツリとそうこぼした。その
 荒れた食生活からは ごみ屋敷に代表されるような「セルフ・ネグレクト
 (自己放任)」に陥っていたと推測される。セルフ・ネグレクトは、
 孤独死の8割を占めると言われており、近年深刻な社会問題となって
 いるのだ。


 ●孤独死のコスト

  たまたま真冬の時期に死後1日で発見されたため、かろうじて遺体
 の腐敗は進行していなかったのが、せめてもの救いに思われた。
 これが真夏となると、また状況は違ってくる。何日も遺体が発見され
 ず、床下まで体液が染み込むなどすると、清掃費用が跳ね上がり、
 ゆうに100万円を超えることもあるからだ。

  そして、こうした費用の負担を巡って、遺族と大家がトラブルに
 なるケースも近年頻発している。さらに悪質なのが、後払いである
 のをいいことに、親族が費用を払わずに、そのまま逃げるケースだ
 という。

  徳山さんは、知り合いの葬儀社の提案で、火葬から納骨までを一括
 で依頼できるコースを選択した。父の骨が火葬場から最後にどこに
 いったのかは知らないし、特に知りたくもないと思っている。

 「オヤジが死んでホッとしたというのが正直な心境です。こんな面倒
 くさい死後のゴタゴタが全部、お金で解決できるなら、それでいい
 ですよ

  これらの費用を捻出する理由は、亡くなったのが曲がりなりにも
 実の父だったこと。それに尽きるのが 徳山さんの偽らざる心境だ。
 しかし、これが 現在の孤独死の遺族を取り巻く現実である。

 ●35年ぶりに会った父、死の精算は「60万円」

  大阪の特殊清掃業者によると、孤独死のほとんどが こうした離婚
 後の男性だという。この業者は、孤独死の清掃で一度も遺族が悲しむ
 姿を見たことがないと断言していた。

  徳山さんは言葉を続ける。

 「昔のオヤジの勤め先の人に、オヤジが亡くなったって伝えたんで
 す。警察の名刺を見せて『警察の世話になっちゃったよ』ってね。
 そしたら、『最後までほんとにあいつは世話を掛けるなあ』と言われ
 たんです。自分でも そう思いますよ。せめて 少しでもお金を残して
 置いてくれれば良かったのに思いますね」

  徳山さんの口からは最後まで 死者を悼む言葉は聞くことはなかっ
 た。しかし、これまでの経緯を踏まえると、それも致し方ない気が
 する。

  葬儀社へ支払った埋葬代込の費用が10万8000円、斎場代(棺桶台
 と、冷蔵庫2日分込み)が1万9744円。家財道具処分費用が28万円、
 死体検案書3万5000円。その他にも、父親が滞納した クレジットカード代、
 アパートのハウスクリーニング費用など、徳山さんは諸々総計する
 と、60万円近くを支払った。

  これが、世間ではあまり知られていない孤独死のコストだ――。
 そして、それが跳ね返ってくるのは、まぎれもなく血縁関係にある
 家族である。しかも 実子がいない場合は、会ったこともない甥や姪
 にくることもある。

 「死は生の鏡」と教えてくれたのは、孤独死対策で先陣を切っている
 常盤平団地(千葉県松戸市)の中沢卓実会長だ。いわば“発見されない
 死”とは、生前築いてきた社会における関係性の「薄さ」の反映と
 いえるだろう。それが先鋭化したのが孤独死という結末に他ならない
 のだ。





〈下〉
 墓地を求め、漂流する遺骨…独身中高年「明日は我が身」の不安

              毎日新聞 12/25(日)  


  • 顔アイコン

    まだ実子がいる場合はいいのですが、完全に障害見込んで、家族のいない場合、誰が始末するのですか。

    その人が、預金等を持っている場合は、どうするのだろうか。

    これから、そんな人が増えますから、法整備と具体的な対策がいりますね。

    みずがめ座

    2017/5/7(日) 午前 8:44

  • 顔アイコン

    「水がめ座」さんへ。こんにちわ。

    子供がいる・・・ ――― 都会では 比較的親元の近くに
    仕事が見つかるでしょうが、田舎では 子供がいても 遠くに
    住んでいて、結婚でもすれば 親元に帰るのは 今日では難しい
    ことになっています。そのため、高齢夫婦だけの所帯や 連れ合い
    に先立たれると 老人の一人世帯になる・・・。

    店も病院も近くになく、万事 不如意をかこつことになります。
    ――― 遠くの子供は 毎週末に遠方から親元に帰って掃除や
    洗濯、家の補修などをすることができる人は そう多くはない。
    それは、子供世代にとって ものすごい負担ですからね。(続)

    [ jyo***** ]

    2017/5/7(日) 午後 5:23

  • 顔アイコン

    そうした世帯は、やがて 住む者がいなくなって空き家となる。
    毎年 毎年、空き家が増えていきます。
    葬式も、今日 地元に住んでいない子供は、地域社会の手助け
    を拒んで、家族葬の方が多くなっています。

    団塊の世代以上の高齢者の年金は、それ以下の世代と比べて
    かなり恵まれていますが、やがて 年金で生活できない高齢者
    ばかりとなるでしょう。

    団塊の世代が死に絶えた時、この国の富は 蕩尽している
    でしょう。したがって、今後 高齢者を敬うという美徳・親孝行
    などは崩壊し、年寄りは 社会の厄介者として 怨嗟の対象と
    なるだろうと思います。合掌

    [ jyo***** ]

    2017/5/7(日) 午後 5:37

jyo*****
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