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仏説 無量寿経
悲化段(3)
かくのごときの世人、善をなして善を得、道をなして道を得ること
を信ぜず。人 死して さらに生じ、恵施して 福を得ることを信ぜず。
善悪の事 すべて これを信ぜずして、これをしからずと謂うて つひに
是(ぜ)とすることあることなし。
ただ これに坐するがゆゑに、また みづから これを見る。 たがひに
もとより善をなさず、道徳を識らず、身愚かに 神闇く、心塞り意閉づ。
死生の趣、善悪の道、自から見ることあたはず、語る者あることなし。
吉凶・禍福、競ひて おのおのこれをなすに、ひとりも怪しむものなし。
子、父に哭す。兄弟・夫婦 たがひに あひ哭泣す。顛倒上下することは、無常の根本なり。みな まさに過ぎ去るべく、つねに保つべからず。
教語し開導すれども これを信ずる者は少し。ここをもつて 生死流転
休止あることなし。かくのごときの人、矇冥抵突(もうみょうたいとつ)
にして 経法を信ぜず、心に遠き慮りなし。各々意を快くせんと欲へり。
これに坐して道を得ず、まさに悪趣の苦に更(かえ)り、生死窮まり
やむことなかるべし。哀れなるかな、はなはだ傷むべし。
ある時は 室家の父子・兄弟・夫婦、ひとりは死し ひとりは生まれ、
たがいに 哀愍し、恩愛思慕して、憂念 結縛す、心意 痛着して たがひに
顧恋す。日を窮め 歳を卒(お)へて、解けやむことあることなし。
道徳を教語すれども 心開明せず、恩好を思想して 情欲を離れず。
昏矇閉塞して 愚惑に覆はれたり。深く思ひ、つらつら計り、心みづから
端正にして 専精に道を行じて世事を決断することあたはず。
便旋として 竟(おわ)りに至る。年寿 終り尽きぬれば、道を得ること
あたはず。いかんともすべきことなし。総猥憒擾(そうえけにょう)にして
みな愛欲を貪る。道に惑へる者は 衆(おお)く、これを悟る者は 寡
にして ために 妄りに事を興す。天地に違逆し、人心に従はず。
自然の非悪、まづ随ひて これに与し、恣(ほしいまま)に 所為を聴(ゆる)
して その罪の極まるを待つ。その寿 いまだ尽きざるに、すなはち
たちまちに これを奪ふ。悪道に下り入りて 累世に勤苦す。その中に
展転して 数千億劫も出づる期あることなし。痛みいふべからず、
はなはだ哀愍すべし」と。
(続)
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