恋愛!FX♪

恋も為替も似たもの同志。

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一方、タケシは片桐のウサ晴らしに付き合わされていたのは言うまでもない。
 

女の浮気は男と性質が違う、女の浮気の方が罪深い
 
 
などと世間では言われているが果たしてそうだろうか?
 
 
 
男性的な女性もいて、人妻であるからこそ後腐れなくうまくやっている場合もあるだろうし、男性でも不器用な性格の場合は取りかえりのつかないことになってしまうこともあるだろうと思う。
 
なので一概に男とか女とか言うべきではないのではないだろうか?
 
 
 
と隣で
 
 
「女の浮気を認めない」
 
 
ごく普通の会社の近所の居酒屋での片桐の発言に世界を観てきたタケシはちょっと同意しがたいものがあった。

しかし、ここは上司がひどい目にあっているのにそれを議論したって、何の解決にもならないし余計に話がこじれて自分の立場が危うくなるだけなので

うん。うん。

とうなづいて、今夜は片桐の愚痴を思いっきり聞いてやろうと心に誓った。タケシであった。
 

しかし意外と片桐はタケシを遅くまではひっぱらずに日付が変わる手前で
 
「一人になりたい」
 
と言い残してタクシーに乗り去っていった。
 
 
早くに解放されたタケシはほんの少しだけほっとしたが、しかしやはり片桐の気持ちもわかるだけにもやもやした思いで夜道を歩いていた。
 
 
 

「?」
 
 
ふと、横断歩道の向こうから泣きながら歩いてくる若い女性に目がとまった。
 
 
かわいそうに、変な男にでもひっかかった・・・・あれ?
 
 

「小谷さん!?」
 
 

呼びかけられて佳子はびくっと肩をふるわせ涙目でタケシを凝視した。
 

「あ、か、課長・・・。」
 

かすれた声の佳子。少しの間二人の間に沈黙が続いた。
 
とりあえず信号がもうすぐ赤に変わりそうなので渡ろうとしていたタケシだが、佳子を自分が今来た歩道へと誘導した。
 
 
 
 
 
近藤と佳子の間に何が起こったのか、タケシは

これはきっとオレにとってはまたとないチャンスに違いない

そう感じた。
 
 

つづく。
ホテルの客室へとエレベーターで向かう男女の姿があった。
 
すっかり心地よくシャンパンに酔っている佳子は近藤に軽くもたれかかっていた。
そんな佳子を支えるように近藤は部屋へと進んだ。
 
 
 
カギを使ってドアを開けるとそこはダブルベッドが一つ置いてある部屋だった。

間接照明の部屋はトロンとした表情の佳子をさらに妖艶に見せた。
 
 

近藤は上着を脱ぎ捨てると佳子を抱き寄せた。
 
 
 

「あっ」
 
 
 

小さく佳子は言葉をもらしたが次の瞬間、近藤の顔が迫ってきて唇をふさがれた。

どちらも待ち望んだ瞬間。
 
 
 
佳子は近藤の背中に手を回しきつくしがみついた。
 
 
 
 
 
 

〜♪
 

・・・ふと近藤の携帯が鳴った。
 
「ちっ。誰だこんなときに!出なくても構わないよ」
近藤は鳴っている携帯の画面も見ずに佳子の首筋へと唇を這わせた。

しかし、鳴り止んではまた再びけたたましくなり続ける携帯。
「ねえ、出た方がいいんじゃない?何か緊急の用事かも」
と佳子は近藤をなだめた。
 
不機嫌そうに鳴る携帯の画面を覗き込んだ瞬間、近藤は顔色が変わった。
それは傍目にいる佳子も充分わかる変化だった。
 
 
 
 

女だ。
 
 
 
 

佳子は直感でそう思った。
 
 

「い、いや、出なくていい。緊急じゃない・・・。」

しどろもどろの近藤に佳子はキツイ言葉を投げかけた。

「どうして出てもいないのに、緊急じゃないとわかるの?おかしい・・・!早く電話に出て!!」
 

渋々近藤が通話ボタンを押すとけたたましい女の声が漏れてきた。
 
 
「さっきから何度も電話してるのになんで出ないのよ!!??今どこにいるの!!??まさか他の女と一緒じゃないでしょうね!!!!!」
 
 
 
 
 
 
 
やっぱり。
 
佳子は酔いも一気に醒めて大声で電話に向かってどなった。
 
「ええそうよ!!今から私、帰るところだから!!!」

近藤はバツ悪そうな顔をしながら手を口元にあて、冷や汗をかいていた。
携帯の電源を切っておかなかったことに今更ながら後悔していた。
 
 
 
佳子は無我夢中で部屋を飛び出してエレベーターまで走った。しかし近藤は追いかけてはこない。
くやしかった。
 
 
「私、遊ばれてるのも知らないで、なんてバカなの・・・!!」
 
 
佳子は涙が溢れて止まらなかった。
 
宿泊客やボーイなどが泣きながら走って行く佳子を怪訝そうな表情で見ていた。

佳子はホテルを出ると、立ち止まった。少し落ち着こうと自分に言い聞かせるが涙が全然止まらない。
 
 

ひっく。ひっく。
 
 
 
道行く人々も泣きじゃくる佳子を不思議そうに見ていた。
 
 
佳子はもう何もかもどうでもよかった。そんな気分だった。
 
 
行くあてもなく、夜の闇へと佳子は消えていった。
 

つづく。
弥生は元モデルだ。
 
片桐の一目惚れで知り合って半年後に結婚に至った。
金を持っている片桐。誰もがうらやむ美貌の弥生。二人は似合いのカップルだったし、何の障害もなかったのでこの結婚は当然といえば当然だった。

今年38歳になる弥生だが、子供が2人いるとは思えない抜群のスタイルを維持している。
毎週エステに通い、好きなフラワーアレンジメントも習い、何不自由のない毎日を送っていた。
 

仕事が絶好調の片桐、家庭を守る弥生。周りから見れば誰もがうらやむ理想的な夫婦像である。
 
また弥生は片桐の多少の女遊びには目をつぶっていた。この生活を手放すことに比べればそんなことはほんの些細なことに過ぎなかった。
 
 
 
 
しかし、そんな二人の夫婦生活に影を落とし始めたのはあることがきっかけだった。
 
夫婦も長くやっていると夜の営みはまったくと言っていいほどなくなってくるのが一般的。
特に片桐はこっち方面においてはとても淡白なタイプであった。

だから女遊びと言ってもこっちのことは心配はしていなかったのである。
 
しかし、弥生の方から求めても

「疲れているから」
 

と断られ続けていた。
 
 
次第に弥生は心に小さな穴が開きつつあった。
元モデル時代はそれは弥生はモテた。ちやほやしてくれる男が大勢いた。
それが今や「誰々ちゃんのママ」であり「片桐の奥さん」であり、自分という居場所が無いことに次第に寂しさがつのっていった。
 
 

そして片桐のそっけない態度。
 
 
 
 
 
 

いつの間にか弥生は一人の年下独身男性と親密な仲になっていったのである。
 
 
自分のことを「きれい」と言ってくれる。

ヘアスタイルが変われば気づいてくれる。

疲れていれば「どうしたのか?」と心配してくれる。
 
 
弥生は普段の生活にもハリが出てきて、充実した毎日を取り返していた。
 
 
 
 
片桐はこんな弥生の変化を見逃してはいなかった。
 
元々綺麗な弥生が綺麗になりすぎていたのだ。
 
疑惑の段階で片桐はまだ見ぬ男に嫉妬していたのである。
 
 
 
 
 
嫉妬深く姑息な片桐は探偵を雇って調査させた。

その結果はクロで決定的な現場の写真もいくつかあった。
弥生はその年下男性のマンションに通っていた。しかも家賃や身の回りの世話もしてやっていた。
食事に出かけるときももちろん弥生が全部出してやっていた。
 
 
 
片桐はやるせなかった。
金が何よりも大切で人は
 
「金と恐怖で必ず動く」
 
と信じていたのにその金にこんな形で裏切られようとは・・・。
 
 
 
 
タケシはすすり泣く片桐をみつめることしかできなかった。
 
 
つづく。
一方同じ頃タケシはタケシでとんでもない出来事に巻き込まれていた。

佳子に残業を断られてしまったので、次は近藤をなんとか行かせないようにとあの手、この手と試したが結局はどれもうまくいかず、みすみす近藤を佳子の元へと行かせてしまったのである。
 
タケシとしても自分の好きな女を説得させることもできなくて、でもあんなに綺麗で嬉しそうな佳子を見ると何も言えなくなってしまうし、だからと言ってそれが自分に向けられたものではないのでとても悔しい。

おそらくタケシが佳子に惚れていることは佳子本人もうすうす感づいているとタケシも思っている。

惚れている異性に対しての対策としては
 
・どう攻めるのか?どう攻略するのか?
 
 
これだけを考えていれば相手になめられることはまずない。
 
 
しかし
 
 
・相手は何を考えているのか?何を思っているのか?
 
 
こればかりを考えてしまうと相手にとっては重荷になる一方でしかも
 

「わかりやすくて全然面白くない人」

と恋愛対象から外されてしまう。

タケシは後者に陥ってしまっていたので佳子からすると

「私に気があるのはありがたいんだけどねぇ」

という感じである。
 
 
 
暗い顔のまま、佳子と近藤のこの言いたくない報告をあげるために片桐のいる社長室へと向かった。
 
 
 
 

途中まだ先の社長室から怒鳴り声が聞こえてきた。
片桐は感情的になるとすぐにどなりちらすクセがあった。

「まーた社長、やりあってるなあ」

とタケシはいつものことだとタカをくくっていた。
 
でも、機嫌が悪い片桐にこんな嫌な報告をしたら何を言われるかわからないな、と頭の中が不安でぐるぐる回っていると、突然社長室の扉が開いて片桐が飛び出してきた。
 
 
 
 
 
片桐の目には大粒の涙が溢れていた。
 
 
「!?」
 
 
片桐の泣き顔など見たことのないタケシはそのままその場に膠着状態で片桐と見つめ合った。
そんな自分の様子を見られているのに恥ずかしさを表す余裕もなく片桐はタケシに近づいてきた。
 
 
「タケシ、オレを助けてくれ。オレはどうしたらいいんだ・・・。」
 
「社長!落ち着いてください。一体、何があったんですか??」
 
「弥生が、弥生が・・・。」
 
「弥生さん?社長の奥さんがどうかなさったんですか!!??」
 
「アイツ・・・オレをバカにしやがってぇ!!!」
 

人生は歯車がどこか一つ狂いだすと周りをも巻き込みながらゆっくりと悪い方へと向かっていく。
 
今夜はとても綺麗な満月だった。それは皆を見守っているようにも見えた。
 
 
 
 
つづく。
 
今日の佳子は一段とキレイだ。
 
いつもはカジュアルな着こなしが多いのに今日はとても艶っぽいいでたちだ。
誰が観ても「今夜はおでかけなの」と言わんばかりだった。
 
恋をすると女はきれいになると言うがそれはどうやら本当らしい。
 
「今夜は何かあるな」と思ったタケシは今日残業して欲しいと佳子にわざと言い渡した。
するといつもは笑顔で受け入れる佳子が今日はかなりハッキリと断りを入れて来た。
 
「申し訳ありませんが、今日は所要がありますので残業をお受けすることができません。」
 
それは本当に凛々しく、誰もが逆らえないような雰囲気をかもし出していた。

佳子はいつも残業していた。嫌な顔一つせずに。
なのでタケシとしてもここまでキッパリと断られると、それ以上はもう言葉が見つからなかった。
一人の男に夢中になった女には何を言っても受け入れないことをタケシは百も承知だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

仕事が終業時間になると佳子は待ち合わせのホテルの一階にあるロビーのカフェに向かった。
外がよく見えるように窓際に座っていた。
紅茶を注文して一口それを飲んだ。ここの紅茶はアッサムだ。まあまあの味だった。
 

待ち合わせ時間まであと5分。佳子はこの日をとても待ち望んでいた。大好きな近藤と初めてのデート。
こうしてドキドキしながら相手を待つのもとても楽しい時間だ。
 

佳子は平静を装いながらも、嬉しくて仕方のない自分にとまどいながら近藤の到着をまだかと待っていた。
 
すると長身でロングコートが良く似合う男が向こうからゆっくりと歩いて来た。

「!」
 
佳子はおもわず微笑んだ。近藤も笑顔で佳子に近づき

「お待たせ。それではご案内いたします。おじょうさま」

と少しおどけてみせた。
 
佳子は恥ずかしさと嬉しさでいっぱいだったが、差し出された近藤の手をとり立ち上がった。
 
 
 
 
 
 
ここのホテルに入っている鉄板焼きが近藤はお気に入りのようだ。
間接照明の店内は落ち着いたムードで客のほとんどが年配のカップルやスーツ姿の接待風な男性がほとんどだった。佳子のように若くて美しい女性は場違いなようにも見えたが、それがまたかえって二人の気持ちを引き立てた。
 
「こんなに美味しい鉄板焼きは初めて!」
 
と目の前でシェフが野菜や肉や魚介類を焼いてくれてアツアツをいただくそれは本当においしかった。

「気に入ってもらえて嬉しいよ。」
 
近藤も自分が好きなものを佳子が受け入れてくれて一安心だ。
 
 
 

近藤は会話が上手い。
 
男が女を口説くときに大切なことはまずは相手が自分のことを好きかどうかを確認してから、口説く。自分のことを「好き」という前提が必ず必要になってくる。

そして自分のことが好きだとわかれば女に未来を描かせるような会話を機関銃のように投げかけていくのである。
すると具体的な二人の未来を想像した女はどんどん男に夢中になっていく。

近藤は第一印象にかなり強い男。俗っぽく言うと「モテる」
ここを軽々とクリアしてしまうので、そのあとは女に自分との未来を描かせるような会話をするだけだ。
 
「ハワイ好きなんだー。オレ行ったことないから案内してよ」

「オレ独身だから手料理に飢えてるんだよなー」

「やっぱ一人ってのは精神的によくないよなー」
 
などなど。
 
多分近藤はこの手のストーリーは山ほど持っている。というか天性のものも備わっているのだろう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そして近藤は佳子の同世代の男性ではありえない、慣れた感じで最上階の夜景がきれいなバーに案内した。
 
すると近藤は「ヴーヴクリコ」と「いちご」を注文した。
 
「私がシャンパン好きなの覚えててくれてる」

ヴーヴクリコは佳子の好きなシャンパンの名前で、近藤は普段のなにげない会話でこのことを覚えていたのである。
モエほど炭酸が強くなく、ほのかな甘みのシャンパン。
それに果物のいちごを添えてくるなど、女の好みをどこまでも知り尽くした憎い近藤の演出である。
 
 
「じゃあ、君の瞳に乾杯!・・・なーんて、イマドキ言わないか〜はははは。」
 
 
近藤のちょっとおどけた表情に佳子も思わず笑ってしまう。

佳子はもうこの近藤の世界に完全に惹きこまれてしまっている。

引き返せない。
 
 
 
 
 
 
 

ふと近藤が手洗いに立った。
 

佳子は一人革張りのクッションのよいソファで心地よく酔っていた。
窓から見える夜景はとてもきれいだった。高速道路の灯りが規則正しく並んでいるかと思えば、ビルのネオンが瞬いている。

まるで大きな宝石箱が目の前で開いたような錯覚に陥っていた。
 
 
 
 
 
 
 

一人夜景を楽しんでいると近藤が戻って来た。
 
 
 
すると長いキーホルダーのついた鍵をちらりと佳子に見せて
 
 
 
「部屋、とってきたんだ」
 
 
 

と一言告げた。
 
 

つづく。

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