|
画像は千原英喜作曲「男声合唱のための“東海道中膝栗毛”」より第5曲“岡崎五万石/東照公遺訓”の冒頭部分。セカンド・テナーの“コラヤットセ〜”という民謡風の旋律で開始する。タイトルから分る通り、東海道を江戸から京へ上る道程を様々なテキストを引いて付曲してある。
千原英喜という作曲家は、日本の伝統的な音楽を素材として用いながら、実に千変万化の変容を作中で披露する。それはこの作品でも同様。
メロディラインに対するベース系の伴奏が、ハミングで始まって“a”の母音に推移。音階を上がるようにして、下段に入った所(練習記号1)で空虚5度を構成する。
その中から、開始の音量よりも小さく、もう一度セカンドが“イ〜ヤラ〜ヨ〜”という印象的な旋律線を歌い始める。表情のあり方として「こだまのように」という指示が置かれている。
セカンドの旋律は、曲の後半に入ってパラフレーズされ、早いテンポの中で繰り返し再現される(ここでの形とは異なり、実にエネルギッシュなメロディラインとして歌われるので、同じ旋律形として認識され難いのだが)。
この冒頭、自分には非常に絵画的な音楽として聞こえてならない。ベース系の開始部分のm→aという音色の変化は、静かに曙光がさして来るように思える。
ただ、最近思うようになった。
千原英喜という作曲家の「核」があるとすれば、例えばこのセカンドの“イ〜ヤラ〜ヨ〜”というメロディラインの響きそのものなのではないか?と。
旋律線としての音の動きもさりながら、テナーの音色で歌われる音の佇まい。それこそが、作曲家のエッセンスに他ならないのでは?
なるほど、男声合唱には珍しい、開放的な和声も魅力の一つではある。時おり顔を出す、かなり数学的な和音連結も面白い(ご本人は、好きな作曲家としてブルックナーをあげておられた)。
けれど、この作曲家の音楽を俯瞰的に見た時、もっとも印象的なのはユニゾンの響きの力強さであろう。上の例にあげた“イ〜ヤラ〜ヨ〜”の旋律線も、後半になってバリトン、ベースと同音程で響きが厚くなって来る。
そのユニゾンは、何であるのか?
この場合、“何を表現しているか”ではなく、音そのものが“何か”であるように感じられてならない(繰り返される使用法から見ても)。
そこを解き明かしてゆけば、恐らくは「日本人の心の奥底に、共通して横たわる深層意識」にたどり着くことだろう。深層意識などという言葉はまだるっこしい。
もっと言ってしまえば、「地霊」だと思う。
あるいは日本人が日本人である所以の、音の共通コード。この場所で生きる(生きた)人間が共有する、響きの記憶。
そんな“何か”が、極めて洗練された手法で提出され、展開されてゆく。
千原作品の、最大の特色ではないだろうか。
|
全く関係ありませんけど「真夜中の弥次さん喜多さん」(しりあがり寿)が好きです。
楽譜をぱっと見た感じでは、三連符が印象に残りました。
2010/6/13(日) 午後 10:03
「真夜中の弥次さん喜多さん」って、映画化もされてませんか?なんか、見かけたことがあるような。
、、、上のトピックは、途中をはしょり過ぎたような気もしています。もうちょっと書き込む予定だったんですが、異様に長くなってしまって(長いのは、いつもか)。歌い込む価値のある、良く出来た曲なんですよ。ダイナミックに音楽が展開していって。
2010/6/14(月) 午前 0:55 [ 双子座のおっさん ]
先の日曜の練習では、この冒頭部分がエエ感じで歌えておりました。
いかにも「男声合唱!」っていうトーンが響いていて。
2010/6/15(火) 午後 6:07 [ 双子座のおっさん ]
ご挨拶が遅れました。先週は飛び入りでこのセカンドの旋律を歌わせていただきました。G香川の皆様の、あたたかい、懐の深さに、改めて感謝申し上げます。
また、翌日は市中引回し(要はうどんツアーガイド)をお願いしてしまい、またまたありがとうございました。その車中では「プーランクだ、千原だ、といって歌い方を意識的に変える必要なんかない」などと過激な発言を繰り返す小生に対し、それにまたご丁寧におつきあいいただき、重ねて感謝です。
要は、2人ともパッと見ただけで作風がわかる作曲家で、音の構成をストレートに提示するだけでその曲の良さがわかる、ということが言いたかっただけです・・・どうも、年甲斐もなく舞い上がってしまっていたみたいで、恥ずかしい限りです。
これから数ヶ月(ですよね!)が本当の勝負ですね。ご健闘をお祈りします。なんて、また飛び入り乱入してしまったりして(爆)
2010/7/17(土) 午前 1:50 [ jos*uin**spr*z19*5 ]
千原先生の作品は本当にユニゾンに神経を使いますね。そんな中での音の色彩感には本当にしびれるものはあるのが魅力なのですが。
2011/4/24(日) 午前 0:34 [ hokochan ]