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増大する社会保障費や緊急度を増す雇用問題に絡み、企業が蓄積した内部留保を吐き出せと共産党系労働組合や政治家諸氏が主張しているが彼らは内部留保の意味を知っているのだろうか?
この内部留保、単純で単純な話でない。
 
問題の真因は日本で事業をして稼げない事にある。(稼げる業種の減少、競争力の低下が問題)
 
その事実(投資効果の少なさ)を無視して、企業の自由な選択を制限し、雇用の為に企業の内部留保を無理に剥ぎ取る行為は共産主義的な発想に他ならず、その意味でただ、単純に内部留保を取り崩せだけでは日本は益々苦境に陥るだろう。
 
ところで、彼らの代表的なエクスキューズを何点か挙げたいと思う。
 
大手製造業、株主重視で人員削減 内部留保、空前の33兆円
トヨタ内部留保13兆円 正社員化 財源は十分
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-11-20/2008112005_01_0.html
大企業の内部留保の4割強は雇用維持に活用可能 - ほんの一部の取り崩しで雇用を守れる
(恣意的な数字の使い方満載サイト、数字コワイシリーズ化の動機)
 
確かに内部留保は積み上がっているが、内部留保の定義とは以下の通りである。
 
内部留保
「準備金」「積立金」「引当金」といった名称こそつけられているが、現金や預金だけではなく、売掛金金銭債権有価証券の他、土地建物・機械設備といった固定資産など様々な資産形態をとって運用されている
 
この金融資産と固定資産の切り分けをせず彼らの一部は企業の内部留保を批判するのである。
 
特に一番最後に挙げたサイトは一見、切り分けているように見えるが細部を検証すると、疑問に感じる箇所が多々あり、非常に読み手に能力が必要とも言える情報でもある。
 
一応、冒頭のもっともらしい一文を記載しておく、興味があったら一読をお勧めします。
 
日本経団連は、「内部留保は生産設備などに使われており、現金に換えることはほとんど不可能」、「自由に使える現預金とは違う」、「内部留保は雇用維持に活用できない」と主張し、派遣切り、期間工切り、正社員切りなどを正当化しています。それを受けて、財界・大企業の御用学者などが、「内部留保を雇用に使えなどと主張するのは企業会計をまったく知らない素人のたわごと」であるかのように、マスコミで流布しています。このブログでも内部留保を取り上げると決まって同様のコメントが寄せられますが、本当にそうなのでしょうか?
 
申し訳ありませんが、違和感を禁じえません。
(内部留保が何かでなく、内部留保が何処で使われているかが問題の本質)
 
ところで、日本の内部留保は推移は以下の通りである。
 
 
 
 
ここで着目したいのが、企業の現金、貯蓄量だ。
バブル崩壊前後を頂点として、2007年度には、全規模・製造業(ともに規模10億円以上)の企業の現金預金は、1989年の半分程度になっている。
 
つまりは、企業は何らかに投資しており、確かに内部留保は積み上がっているのだが現金化出来る資産なのか不明なのである。
 
その細かな切り分けがないと難しのだが。。。
議論の本質はここでないと私は論じたい。
 
では、企業は何処に投資しているのだろう?
 
 
 
 
上図は日本と主要国の海外直接投資の推移を対内投資と対外投資についてグラフ化した(対GDP比)である。
何度か使っているグラフで申し訳ないが、日本の直接投資は対内投資(対日投資)を対外投資が一貫して大きく上回っている点で特徴的でもある。
 
別に昨日今日の話でなく、日本の企業は国内より海外に一貫してより多く投資し続けているのである。
では、なぜ?これまで問題にならなかったのか?
おそらく近年まで日本の海外投資の収益性はそれほどでもなかったからではないかと、私は現在、分析している(ライバルではなかった)。
 
 
 
上記は日本の所得収支の表だが、近年、急激に投資効果が積みがっているのが理解出来ると思う。
製品の急速なコモディティ化により中国でも安定した製品が出来るようになったのは、ここ十数年の話だ。
先人達の苦労を想うと何とも言えない気分でもある。
 
逆説的に日本でモノを作らないでも海外で安く品質の良いモノを作れるようになった事の証左でもあり、その意味で日本は大きな影響を受けているのである。(産業の海外流出)
 
おそらく現金化していない企業の内部留保の多くは海外で現在運用されていると思われる。
さて、ここで日本の為に海外での運用を止めて日本に投資したらどうなるのだろう?
 
そこが議論の本質であり、日本の苦境の源泉の一つでもある。(厳しい就活の理由でもある)
彼らが言う内部留保を切り崩せとは、即ち、国内投資をしろという意味に他ならいのだが、日本に投資して何があるのだろうか?
 
冒頭挙げた三サイトの主張する増大する内部留保は確かに正しい数字である。
が、一方で、
その内部留保の中身を検証しない1、2のサイト情報は誤った情報を読み手に与える恐れがある。
恐らく多くの読み手が現金化可能な資産と勘違いするだろう。
 
そして、最後のサイトだが、日本の内部留保の中身を分けて論じてはいるが、なぜ日本の企業が海外投資に向かうかの言及が無く、その言及なしに無理やり投資先を日本に、しかも雇用に向ける事がどのような事態を招くかの洞察も当然のようになく、バランスを著しく欠いた非常に危うい記事とも感じる。
(企業が採用を抑えているのはIT化や各種改善活動による省人化の賜物でもあり、それら正の生産効率向上に関する議論を無視してもいる。労働分配率の言及をすれば良いのだが、残念ながら片手落ち。おそらく急激に向上した生産改善にはベーシックインカムやワークシェアリングこそが相応しい対応なのだろうが、彼らは正社員の給与と雇用を維持した上での議論に終始している。
 
日本から産業が流出するのは、日本で事業が成り立たないから出て行くのである。
より多くの利益を求めて出ていくのでなく、その動機は赤字だからだ。
特に製造業の海外移転は赤字が主因である。
 
誰が好きこのんで母国を離れるのであろう?
単純に日本で産業を営んで暮らしていけないから海外に出て行くのである。
その大本を議論せず、企業の海外流出を批判するのは間違いだ。
 
そして、その大本を理解せず、日本で需要のない産業の雇用を維持しろと主張する。
経営に必要な人員は企業が判断して雇用するのが原則にも関わらず、門外漢の彼らが主張する事に何の理があるのだろう。
その結果責任を彼らがとれれば構わないが、彼らは部外者だ。
そして、需要の伴わない無理な投資の結果は、約束された未来を引き込むだけだろう。
 
企業の自発的な海外流出を無理に止めるのでなく、別の発想、なぜ?企業が海外に出て行かざる終えないのかを議論し、対策を打たない限り、企業の内部留保活用による雇用創出は砂地に水を撒く様な行為であり、ただの徒労、対処療法であり、先延ばしに他ならないだろう。
 
 
投資するには理由がある。
その理由が重要であって、需要を無理に作る行為は歪みをもたらす事を知って欲しい。
 
 
が、残念ながら、上記、共産主義的な発想が日本に蔓延し始めているのも事実である。
その旗振り役の一人が三橋氏というのも面白いが・・・
支持者たちは、その本質に気付いているのであろうか?
 
無理に供給サイドを刺激して景気を底上げしても経済構図が歪み続けるだけだろう。
正の需要の創出。
それこそが大事と主張したい。
対処療法は確かに必要だが、対処療法だけでは治らないのである。
転んで絆創膏を貼るのでなく(対処療法)、転ぶ理由を見つめ矯正する事こそが大事だ。
 
では、正の需要創出とは何かだが、それは個々が社会に世界に必要とされる人財になる事だろう。(もしくは必要とされ易い環境を社会で準備する)
その根本を論ぜず、無理に創出された仕事は歪みをもたらし、日本をさらなる苦境に追い込むと私は予想する。
そして、無理に創出された結果の近未来図は地方や農村にあるのだが、なぜ、日本は愚者以下になるのだろう。
 
 
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
我がプログの結びのコトバになっている現状が情けない。

閉じる コメント(9)

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最初から海外へ投資する金額や賃金として労働者に支払う金額の配分が決まっているわけではありません。経営判断で決めているのです。グラフからもわかるように、海外への投資を意図的に経営者が増やしているのです。その配分を少し変えてみて、労働者に還元したらどうですかと言っているのが共産党の主張です。しかも内部留保の全額を還元せよなどとは言っていません。1%から2%をまわしたらといっています。ようするに海外に投資するという内部留保の配分の比率をほんの少し変えてみてはどうですか、という主張なのです。だから、この主張の何が問題なのか分かりません。内部留保がすべて現金などとは誰も言っていません。結局配分の仕方の問題ではないのでしょうか。

2013/6/30(日) 午前 2:10 [ ぴっぴ ]

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また、多国籍企業の本質は、母国がどこであろうと構わないのです。より多く利益を上げられる国で商売をしますし、より安い税金ですむ国に税金を納めます。より安い海外の賃金を求めて出ていくだけの話です。これは法的に規制するしかありません。アメリカでも同様の議論がなされており、自由主義だからといってなにもかも自由勝手にふるまわれては困るというのが共産党というか、経済の専門家からの意見でもあります。
企業だけが強くなっても経済は回らないということは、今や常識となっています。

2013/6/30(日) 午前 2:11 [ ぴっぴ ]

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ぴっぴさんへ
仰る通り、
>労働者に還元したらどうですか
が共産党の主張ですが、それでしたら、従来通り労働分配率で主張すればよく、資本財も含む内部留保というコトバで説明するとミスリードを招くと思います。
共産党がいやらしいのは、それを知っていてミスリードをしている点です。

2013/7/30(火) 午前 8:02 [ きのいう ]

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企業は生き残りをかけて最適解を求めますが、法規制が正解とは、とても思えません。
根本は日本で商売する旨味が消失している事が原因であって、日本で商売して利益が上がるのでしたら、日本から企業は出て行きません。
日本の潜在成長率が0ないしマイナスになって数年経ちますが、そんな状況では投資をするインセンティブが生じないでしょう。
だから、アベノミクスで日本に投資が呼び込めません。

>企業だけが強くなっても経済は回らないということは

常識ですが、それは利益が出て初めていえる言葉です。
間接投資主体の欧米と違い、日本の場合、直接投資主体の投資形態です。
誰も好き好んで、母国を離れ、工場をぶちたてません。

2013/7/30(火) 午前 8:13 [ きのいう ]

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製造業の生産拠点としての海外投資については、(個人的には異論もありますが)それなりに筋の通ったお話と思います。ただ、金融・保険業の内部留保額は150兆弱と実に半分を占めているのですね。この部分についてはどう解釈するべきでしょうか。

BIS規制への対応等金融機関の辛いところも理解はできますが、国内企業向けの融資を絞り、一方で安易な(失礼)運用で多額の損を出すような事態には疑問を禁じえません。

主さんは、現状が健全な資本主義のあるべき姿と考えてらっしゃるのでしょうか。
僕は、行き過ぎた金融資本主義の弊害が隠せなくなっているように感じています。

僕は共産主義ではありませんが、要はバランスであり、ある程度の法規制は必要と思います。

2013/9/13(金) 午後 8:42 [ kam**kam*1 ]

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>銀行などの、金融・保険業の内部留保額は150兆弱と実に半分を占めているのですね。この部分についてはどう解釈するべきでしょうか。

金融機関や保険会社は、世界的金融自由化の流れに従って、決算が国際的基準に移行し、内部留保が少ないと法的に経営が制限されるようになっています。
その対応で増資などをして半ば強制的に内部留保を増やすことを求められましたので、その影響があるかもしれません。

2013/10/21(月) 午前 8:43 [ きのいう ]

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リーマンショック後、かなり内部留保(自己資本比率の強化)が増加しましたが、その増加のうち、相当割合が銀行・保険会社などの内部留保増ではないかと思われます。

この辺、内部留保が、どのような性格をもったものなのか、細かく分析する必要があるので、調べないとわからないんですよね。
^_^;

2013/10/21(月) 午前 8:47 [ きのいう ]

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本論
>行き過ぎた金融資本主義の弊害が隠せなくなっているように感じています

アメリカのGDPの25%は金融業で稼ぎ出していますが、虚構ですよね。
実体経済と関係ない世界でCDSのような危うい錬金術を繰り出し、虚構の成長を演出させています。(投機)
賭け事を生業としている時点で始末が悪いです。

景気対応で通貨を大増刷していましたが、結果は、実体経済に向かわず、虚像を膨らませる方向に向かっています。
(新興国でバブル起しています)

法規制が必要な状態ですが、現在、全く進んでいません。
富をアメリカに吸い上げられている状態ですね。

一方、日本の場合、間接投資(投機)が苦手でして、その戦績は散々です。
与信、交渉が下手といっても良いです。

その一方で、直接投資、自らが工場やお店を建設して投資する事に関しては、割合、運用が上手くいっています。
個人的に言いたいのは、製造業等の内部留保の大部分が、それら直接投資によってなされたモノであって、売却する=その企業の将来の収益力を著しく落とすモノであることを知って欲しくて、当時、記事を起こしています。

2013/10/21(月) 午前 8:57 [ きのいう ]

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本論の意図は、企業の内部留保はすべからく悪、といった一部論調に釘を刺すこと。
改めて読み返すとまったくその通りで、私の揚げ足取りだったかも知れません。にも関わらず、丁寧でわかりやすいコメントをいただき、ありがたく存じます。

「虚構の成長」、言いえて妙ですね。BIS規制を含めたグローバル金融世界の綱引きは、これはもう国家戦略に関わるテーマです。
日本が特に弱い分野、とのご指摘は実に当を得ていらっしゃると感じます。

大変勉強になりました、ありがとうございます。

2013/10/22(火) 午後 6:59 [ kam**kam*1 ]


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