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最近、震災復興に絡み巨額な財政出動を行なう事で日本経済浮揚を提唱する論調が目立つが、その点について、中身の検証のない財政出動に対し筆者は反対である。
なぜなら、額ありきの財政出動の無残さ(現状維持の効果はあったが。。。)は失われた20年で立証済みであるし、現にそれを否定して経済を立て治らせた先駆者がいるのだから、その成功例こそを私は参考にして欲しいと考える。
ところで、その成功例とはなんだろう?
言わずと知れたサッチャーである。
サッチャーが指導者に任命される以前のイギリス。
ゆりかごから墓場までと言われた高福祉政策と伴に、ケインズ学的な経済政策によりイギリスは深刻な不況に陥っていた。
高福祉政策については本項で論じたい趣旨でない為、言及を避けるが、私が言及したいのはケインズ学的な経済政策によって、なぜ?イギリスが苦境に陥ったかである。
サッチャー登場前夜のイギリスにおける喫緊の政治課題の一つは石油ショックからの脱却であった。
その課題に対しイギリスはケインズ学的な手法(イギリスだけでなく他の欧米諸国も)を基に大規模な財政出動を。
この場合、公共投資(今も昔も公共投資は最も効率的な財政出動)を行ない景気対策としていたが・・・
が、景気の下支え効果は確かにあるのだが、一向に景気浮揚しない。
当時の知己(ケインズ学的な財政出動の失敗経験)により石油ショックからの脱却に苦労した欧米の経済学派の分析によると、
イギリスをはじめとする欧米諸国が石油ショックからの脱却から失敗した理由として、
製造業(イギリスでモノを造り輸出する能力)等の競争力が低下し始めていたにも関わらず、橋や道路等の旧来インフラ整備に拘ったからであったと現在総括されている。
確かに公共投資には景気の下支え効果(失業者対策)はあるのだが、当時の産業政策によって新たな産業が生まれたわけでなく結果、過剰なインフラ整備能力だけを持つにいたり持て余せてしまったのである。
それどころか、継続した財政出動を求める業界団体が、労働者が現出し、容易に財政出動を削減できなくなり、かつ、安易な財政出動の削減は上記業界団体だけでなくイギリス経済全体に大きな影響を与える為、非効率だが止める事が出来なくなり自縄自縛状態に当時のイギリスは陥っていたのである。
景気浮揚目的の公共投資が劇薬、麻薬と言われる所以である。
その効果の大きい所は間違いないのだが、一度、政策的に公共投資を行なうと、その政策実行を目的とした巨大な産業セクターが形成され事で、その財政政策を見直せなくなるのである。
結果、非効率にも関わらず、景気の下支えの為にもイギリスは財政出動を続けなくてはいけなくなってしまったのだ。(この状況を打破する為にサッチャーは闘い続けた)
故に石油危機の苦い経験により欧米では公共投資による景気浮揚策に慎重である。
効果ありと判断される指標とは、
公共投資を止めても、その止めた事で失職した以上の雇用が、
その公共投資によって整備されたインフラ整備により、産業が生まれか否か、雇用が確保される否かで判断されるようである。
逆に非効率な場合とは、費用の割に産業が生まれず、雇用が発生しない場合。
成熟社会におけるインフラ整備が、そのまま産業勃興になかなかつながり難いのは誰もが実感しているだろう。
(新興国はその限りでない)
日本で言うと、アクアライン等が代表例だろうか?
残念ながら巨額な費用、巨額な維持費の割に産業が生まれていない。
あの維持費を千葉・神奈川両県が委託したら両県の県民はなんと言うだろか?
バブル崩壊以降の日本軌跡は石油ショック当時の欧米に、そのまま当て嵌まるのである。
であるからこそ、欧米の識者達は日本が失敗するのを見越し日本の経済政策を冷笑し続けていた。
(金融危機以降、その冷笑が文字通り凍りついたが、以前の失敗に基づき、投資先は額を絞り慎重に選んで行なっている。)
『市場は基本的に不安定なものであり,自己調整機能をもたないと考え、計画的に政府が金融援和や公共事業等によって需要を喚起する必要がある』と考えたケインズ。
ケインズ主義の極端な例が共産主義、社会主義経済。
そして、その結果はご存知の通りだ。
一方、
『不完全な知識にもとづいて生まれ、つねに進化を続ける秩序が、あらゆる合理的な計画をしのぐ』と論じたハイエク。
その思想はフリードマンによって先鋭化され、サッチャー、レーガンの輝かしい成功体験を経て、金融危機で、その頂点を迎え破綻した。
さて、今の日本に巨額な公共投資を行ない、その公共投資によって形成される産業以上の雇用を生み出せる産業セクターを造れるような分野が果たしてあるのだろうか?
公共投資を止めても大丈夫な産業である。
公共投資(輸血)によって組織の血流が良くなっても、その輸血がなくなって組織が壊死するようなら、それは現状維持。
むしろ輸血を前提に体が出来てしまう事こそが問題とも感じる。
(公共投資の副作用)
輸血を止めても組織が壊死しないような治療。
それこそが日本に求められている。
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日本がデフレなのは、日本の産業、経済、社会構造自体の変化と対応の遅れであって、新自由主義云々は無関係ですね。アメリカが郵貯の預金を狙っているとかいう、一時流行った与太話の類です(笑)
日銀は金融政策によりマネタリーベースを増やせますが、マネーストックは増やせません。それを増やすのは財政政策です。単に不換紙幣をするだけではなんの意味もない。マネタリーベースとマネーストックの間に相関関係はほぼない。内需拡大よりも、如何に財政健全化と潜在成長率を高めるかという問題が最優先です。ぶっちゃけ切るとこは切らないと、ジリジリ死ぬか、みんなでリセットかのどっちかしかない。
被災地の復興はやむを得ないです。こんな時のための政府ですから。橋・堤防などの強化も必要でしょう。ただし、繰り返しますが自衛隊の増員とか海上保安庁の増員、兵器の更新は経済成長に寧ろマイナスです。環境や技術開発やレアメタル再利用技術開発、エネルギー資源の開発には補助金をだすべきですが、それは政府主体ではなく民間の競争を妨害しない補助にとどめ、政府が出しゃばらないのが肝心ですね。
2011/5/12(木) 午後 4:09 [ フレディ ]
先日、先進国のGDPに対する政府収入・支出の割合を調べてみたのですが、意外と日本はどちらも少ないのですよね。
ところが欧州は皆高いのです。これって日本にはまだまだ余地があると思うのですよね。私は金融緩和でデフレが止まるとは思いませんし、国内での需要喚起には公共投資は必要だろうなと感じておりましたので、意外と日本って小さな政府だったというのは嬉しく感じました。
もちろん、貴兄のおっしゃるとおり公共事業とは言っても本当に後世に喜ばれる投資をすべきだと思います^^
2011/5/12(木) 午後 4:33 [ 鉄人4号 ]
私の記事を元に、記事を書いて下さり、まずは御礼の「傑作」です。
厚かましいですが(笑)、足利義教シリーズの方もどうぞ。
2011/5/12(木) 午後 5:18 [ - ]
こんな難しい話
オレにはワカラン
居酒屋のオッサンにも分かる話をしてくれ
参加できんやんか
2011/5/12(木) 午後 7:02
朱雀さんへ
>アメリカは日本をデフレに陥れて、弱体化させているだけ
私もアメリカにやられたと思っています。
特にアメリカに約束して行なった630兆円モノ巨額な公共投資。
これが、日本に役立つ分野への投資でなかったのは、日本の産業の空洞化。
民間の直接投資の減り方で実証されているかと。
彼ら公共投資によって継続不可能な産業セクターが日本に構成される事を期待して短期(10年)での公共投資を日本に約束させたと思っています。
冷戦終結後、早速、アメリカの的になったわけですが、結果は見ての通りです。
2011/5/12(木) 午後 8:05 [ K9 ]
自民党政権の性格を読み切った見事な日本衰退策。
ヤレヤレです。
2011/5/12(木) 午後 8:06 [ K9 ]
>「貨幣発行もできないし、内需拡大してもいけない(公共事業を増やしてはいけない)」
最悪な状態とは借金出来ない状態です。
今を維持するだけで景気回復するようでしたら財政再建でも構いませんが、ジリ貧。
ならば投資すべきでしょうね。
記事中、表明していますように
>輸血を止めても組織が壊死しないような治療。
を求めています。つまり民需の活性化。
効果の少ない公共投資にも景気の下支え効果がありますが、公共投資を止めた瞬間、公共投資によって形成された産業セクターの死につながりかねません。
そこは欧米と同様、慎重に投資先を選択する必要性を感じます。
私はハードでなく、ソフト。
つまり、日本人への投資に使って欲しいと願って止みません。《教育分野≠子ども手当》
特に研究開発は日本にとって必要と感じます。
必要性の低い道路や空港を造るのなら、イノベーションにつながるかもしれない分野へ投資して欲しいですね。
2011/5/12(木) 午後 8:17 [ K9 ]
もしくは文字通り、文化に投資して欲しい。
文化戦略を日本は大事にすべきですね。
何に投資すべきかは別記事にしたいですね。
取りあえず、景気浮揚目的の公共投資が劇薬であるのは、間違いありません。
新興国ならホボ間違いないのですが。。。
2011/5/12(木) 午後 8:17 [ K9 ]
フレディさんへ
>よく誤解されるんですが
三橋氏を意識してケインズとハイエクを対比したのは、ちょっと間違ったかな?
あっはっっ。
>内需拡大よりも、如何に財政健全化と潜在成長率を高めるかという問題が最優先です。ぶっちゃけ切るとこは切らないと、ジリジリ死ぬか、みんなでリセットかのどっちかしかない。
ここで私はフレディさんと意見が異なりますね。
潜在成長率の寄与UPに私は借金がアリとは思っています。
ただ、大体において考えは近いと感じています。
2011/5/12(木) 午後 8:38 [ K9 ]
Xマンさんへ
需要喚起に関してですが、今のデフレを海外経由と見るか、それとも国内起因によるかで、その対策が変わって来ると思っています。
正の循環を回すには、需要と供給のバランスが取る事ですが、
そこは本項で論じたい事とは違いますので、書くなら別記事で。
実はデフレ対策を論じる為の補助記事として本記事を書きあげています。
まぁ、日本の事をバランスシート不況と思ってなく潜在成長率低下によってもたらされた構造的な不況と分析しているのは、『日本ってバランスシート不況?』という記事に書いている通りです。
後発記事、元気でしたら書きます。(笑)
2011/5/12(木) 午後 8:48 [ K9 ]
ZODIACさんへ
傑作ありがとうございます。
トリガーはZODIACさんの記事ですね。
あのコメントだけでは足りないと思いまして。
義教さんは鎌倉征伐の所で脳みそがクラウディングアウトしています。
ちょっと落ち着いたらじっくり読みますね。
ZODIACさんの記事は数時間かけての一気読み派なので、読み終えるのが早い場合と遅い場合の二極化してしまいます。
すみません。
2011/5/12(木) 午後 8:52 [ K9 ]
k99999five9さん
→三橋氏を意識してケインズとハイエクを対比したのは、ちょっと間違ったかな?
あ、なるほど(笑)それなら了解っす。
まぁハイエクは、人間の目的追求活動を、永続的意見や価値と結びつけなかった、永続的な価値をルールにのみ結びつけていた面が確かにあり、政府が果たすであろうそういう面での主導的な役割を論じられなかったのも事実です。
なかなか自由と支配の両立はうまくいかない(笑)
2011/5/12(木) 午後 8:57 [ フレディ ]
水がめ座さん
居酒屋でこんな会話していたら引きますよね。
あっはっっ。
藁。
2011/5/12(木) 午後 9:12 [ K9 ]
フレディさんへ
自民党が行なった各種弱者救済という名の社会政策は実にケインズ的で、ケインズ的に日本の潜在成長率を落としてしまいました。
自民も意図して行なっていませんが、結果的に農業と地方の産業に重大な影響を与えました。
農業は過保護故に衰退したと思っています。
その内実、結構、酷いですよ。
2011/5/12(木) 午後 9:15 [ K9 ]
>あ、なるほど(笑)それなら了解っす。
効果の少ない地方対策を目的とした公共投資も膨大な社会保障費も結果は同じ。
>「穴を掘って、また埋めるような仕事でも、失業手当を払うよりもずっと景気対策に有効だ」
っとケインズは過去、論じていますが、時に三橋氏が社会主義者に見える時が私にはあります。
まぁ、本人は議論を簡略化しているだけですので、そのような気はないでしょうけど。
>自由と支配の両立はうまくいかない(笑)
人間が万能でない証左ですから、我々は謙虚に自身の傲慢を戒め、人間の合理性の限界をよく認識したいモンです。
2011/5/12(木) 午後 9:22 [ K9 ]
「きっかけ」だけでしょうね。
軌道に乗れば自立出来るのが肝心でしょうか。
最後まで面倒とかは無理です。
だいたいねぇ…
こっちが税金で養ってる相手に「俺が養ってやるから安心しろ」とか言われてもお笑いですよ。
景気対策なんて精々先取りか先延ばし、流れ自体を変えるまでは出来ません。
ただ公共事業が機能不全になったのは設備過剰だからで、スタートラインが低い震災復興ではそれなりに意義ありそうです。
戻せば生活と消費始まる訳ですし。
すべて国がやるんじゃなくて最低限の手間で動き出すきっかけを作る、そういう方向でいいと思います。
あれだけ大量の「必要な土木工事」がある訳ですから。
おっしゃる通りだと思いますし、手離れ出来る公共事業も可能だと思います、今の状況だと。
まあ、じっさいやる気も能力もないでしょうけどね。。。
あっちもこっちも「揺りかごから墓場まで」思想に凝り固まってます、これは困ったものです。
実際「墓場まで面倒見よ」なんて言ってたモンスター被災者もいましたしね…
2011/5/13(金) 午前 8:36
「きっかけ」だけでしょうね。
軌道に乗れば自立出来るのが肝心でしょうか。
最後まで面倒とかは無理です。
だいたいねぇ…
こっちが税金で養ってる相手に「俺が養ってやるから安心しろ」とか言われてもお笑いですよ。
景気対策なんて精々先取りか先延ばし、流れ自体を変えるまでは出来ません。
ただ公共事業が機能不全になったのは設備過剰だからで、スタートラインが低い震災復興ではそれなりに意義ありそうです。
戻せば生活と消費始まる訳ですし。
すべて国がやるんじゃなくて最低限の手間で動き出すきっかけを作る、そういう方向でいいと思います。
あれだけ大量の「必要な土木工事」がある訳ですから。
おっしゃる通りだと思いますし、手離れ出来る公共事業も可能だと思います、今の状況だと。
まあ、じっさいやる気も能力もないでしょうけどね。。。
あっちもこっちも「揺りかごから墓場まで」思想に凝り固まってます、これは困ったものです。
実際「墓場まで面倒見よ」なんて言ってたモンスター被災者もいましたしね…
2011/5/13(金) 午前 8:37
あれこれの経済理論よりも、もっと単純な指標に目をやればよいのでは?
財政出動でも、何でもいいですが・・・ ようするに・・・
政府が支出した金額以上に、どれだけ収入が増えるかという事です。
収入が増えなければ、たとえ政府と言えども続けられないわけです。
普通の会社と同じです。
2011/5/13(金) 午前 8:56
YADAさんへ
日本の不況は構造的なものですから変革しないと解決出来ないかもしれません。
潜在成長率がバブル崩壊以降下がり続けていますが、このような状況下では誰も日本に投資しないでしょうね。
比較対象でより有利な地域に投資資金は流れます。
日本は投資収支がバブル崩壊以前からマイナスである事を注視したいですね。
因みにきっかけあっても苦しいかも。
日本の貯蓄の大部分は高齢者です。
高くない消費傾向を考えますと。。。
現役の所得が増えるような施策こそが大事ですね。
ただ、ご承知の通り我々の平均給与は。。。
2011/5/13(金) 午後 6:28 [ K9 ]
こかげ さんへ
普通の会社と同じ論理で良いはずなのですが、経済合成の誤謬なる理論で、普通の会社のような合理の判断を戒める理論もあります。
お蔭様で、肥大化した公共投資がいかに社会に損害を与えるかを説明する事になります。
経済合成の誤謬は短期的にみるならば正しくバランスシート不況対策もありと思いますが、構造調整が必要な時に安易な救護策を行うと、日本の農業や地方のようにあいなります。
虫歯を放置していて、ついには歯がなくなる。
場合によると死に至るかもしれませんね。
患者さんが我儘なのか、医者がやぶなのか。
さて。
2011/5/13(金) 午後 6:39 [ K9 ]