日本は産業立国と呼ばれて久しいが、その基盤は残念ながらガタガタだ。
なぜなら産業立国を支える人材、開発・研究者の数を担保する理工系学生が減少し続けているからである。
特に工学系における学生数の減少は急激だ。
19992年に比べ、2004年の工学部系の志願者数は60%も減っている。
団塊ジュニア世代の頂点、もっとも子どもの多い世代と2004年のデータを比較している点で恣意的なデータに感じるかもしれないが、大学進学率が92年の26%から46%になった事により、大学進学に対する実数で2004年の方が学生数で6万人(92年の1.1倍)多い事を鑑みると、理系離れは事実と捉えて間違いないだろう。
まぁ、深刻な状態なんでしょう。
「理工系学生の製造業離れが、製造業の空洞化を招く」
これは今から20年ほどさかのぼった1989年、通産省が指摘した言葉である。
つまり国として、日本を支えていたと思われる産業競争力に対し、20年以上前から疑念を抱いていたわけである。
疑念を抱いていたにも関わらず、結果的に学生数は減り続けているので、当然の帰結として、日本の製造業における産業競争力は落ち続けた。
派遣解雇で問題になったキヤノン宇都宮工場は本業が振るわず、一部、更地になってしまった。
(ってなわけで社員化を希望した仕事自体が今はない)
しかも、擦り合わせ産業(部品と部品を組み合わせても正常に機械が動作しない世界)の粋、半導体の露光装置での敗退である。
強いと言われていた産業機械装置産業でも外国企業との競争に負けるほど、日本の技術力は落ちているのだ。
素材産業等も大分、落ち目になり始めているので、そろそろ貿易赤字国へ転落だろうと思う。
キヤノンの装置産業における敗退は、日本が、日本の力の背景である産業競争力低下を放置し続けた結果の一つの結実であり、端緒と理解している。
非常に笑える話だ。
にも関わらず、テレビで出演する識者は相変わらず日本のストロングポイントは製造業と言っている。
まさに喜劇だ。
ところで、なぜ?こうも理工系学生が減ってしまったのだろう?
上記事象を説明する時、給与面での待遇格差が原因であると言われるが本当であろうか?
記事:文系理系の生涯賃金格差は5000万円」〜さらば工学部
確かに、文系と理系を比較した際、その待遇面で差があるのは事実だし、理工系離れの理由の一つだと思う。
が、これらは昔から存在した事実である。
むしろ過去においてこそ、能力に見合わない待遇格差(年収格差)がされていただろう。
やはり、日本の産業競争力低下(学力低下と同じ)の背景は日本人の気質の変化が一番影響があるのだろうと感じる今日、この頃だ。
緊急医療の現場での人員不足が叫ばれているが、おそらく同じ背景だ。
産科や小児科の先生が減る一方、美容整形の先生が増えるのも同じ理由。
記事:日本人の仕事に関する意識調査
日本人の意識調査を見る限り、近年、重視する項目で増え続けているのは余暇だ。
まぁ、要は働きたくないのである。
本当は非常に大事な事なのだが・・・。
何だかねぇ。。。
正直、理系と文系の職場を比べた場合、金融、不動産、弁護士、税理士とわずかな時間(?)で、たくさんの給与を貰える職業が目白おしだ。
一方、理系、特に工学系の開発者は、その職種の重要度に関わらず、就業時間は長く、給与は低く抑えられている。(若干変化が見られているが・・・)
その就業時間は多くの場合、べらぼうだ。
一カ月の超過勤務は平気で100時間を超えるし、朝は神奈川、昼は青森、夕方は群馬で夜は神奈川の研究所で朝まで実験なんて日程を平気でこなす。
もちろん次の日もいつも通りだ。
給与面でも悪く、余暇も少ないのでは、選ばれる理由がないと言うか・・・。
理工系の特に工学系の学生数減少は、日本人が賢く自分の進路を選択した結果なのであろう。
正直、昔堅気の開発者は自らの着想の現実化、製品化だけを夢見て頑張れたのだが、今の日本人はそれだけでは頑張れない時代になったのだ。
今の日本人はヤリガイでなく余暇と年収をバランス良く見て判断しているのだろう。
賢い、賢い。
さて、現実として日本は、どう将来像を描くのか?
モノづくりの世界において早晩、日本は退場だ。
人材供給が細り続ける以上、仕方あるまい。
工場は海外、研究所は日本なんて言うのはあり得ない。(非常に難しい)
日本の製造業の強みは垂直統合の分野で発揮されて来た事実を鑑みると、水平分業の世界はかなりキツイ世界だと感じる。
工学系が現場と離れ、その強みが発揮出来るかと言うと、現実は限りなく難しいと思う。
まぁ、海外駐在、ないし人材の海外移転だろう。
実際、工学系開発者の海外滞在日数は増える一方だ。
基礎研究の世界ではあり得るが、工場が海外に流出した時、工学系の開発者もいつか日本からいなくなる。
(工場の海外流出が確定的である以上、その意味で日本の研究開発分野は質的変更を求められているのかもしれない。)
将来にわたり、日本が産業立国である事を目指すのなら、給与、余暇を含む総合面での待遇改善が工学系開発者に必要だと個人的に思うのだが、最早、間に合わないだろう。
実に残念な事だ。(笑)
中国の春秋戦国時代、燕の昭王は、国力強化の為に家臣の郭隗にその策を問うた。
郭隗の返答は「まず私を優遇してください。さすれば郭隗程度でもあのようにしてくれるのだから、もっと優れた人物はもっと優遇してくれるに違いないと思って人材が集まってきます。」と答え、昭王はこれを容れて郭隗を師と仰ぎ、特別に宮殿を造って郭隗に与えたという。
これが後世に「まず隗より始めよ」として有名な逸話になった話である。
郭隗の言う通りに燕には名将楽毅・蘇秦の弟蘇代など続々と人材が集まってきて、その時代の強国として覇を唱える事になったつながったのだが・・・。
日本の現状は春秋時代の燕と逆である。
日本の最優秀な工学系の開発者はアメリカを志す。(アメリカの力の源泉、世界中から人材をかき集める)
なぜなら待遇がいいからだ。
終身雇用も壊れ、過度な成果が求められる以上、待遇の良い世界を目指し、人は移動して行く。
ただでさえ、工学系の人材が細っている時に最優秀の人材の海外流出だから、どうやって日本は成り立つのか皆目見当がつかない。
まぁ、モノづくりで日本は成り立つ必要もないので、他に外貨を獲得できる手段を目指すのも一つの方策だが、何かあるのであろうか?
「まず隗より始めよ」を欠く日本の将来は暗い。
って感じるが、まぁ、悪くても中国人と同じ給与になるのだから、it's take easyだ。
キットどうにかなるだろう。