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先日、イギリスのマーガレット・サッチャーを好意的に評価したが、実は彼女が首相をしている間、イギリスの失業率は高止まり(正しくは激しく浮沈)をしており、本質的な回復に至らなかった事をご存知だろうか?
確かに彼女の行なった経済改革は経済の活性化を呼び込み、イギリスの成長力回復の原動力ともなったが、他方、彼女の行なった経済改革は弱者を産み、イギリス社会に不安定化を呼び込む要因にもなってしまった。
つまりは、格差が拡大してしまったのである。
強いモノはより強く、弱いモノはより弱く。
サッチャーの行なった経済改革は潜在的な力のある業界に属す人々に対し、大きな恩恵をもたらす事になった。
が、他方、大多数の国際競争力のない産業に属す人々、つまりは中間層の没落を呼び込み、つまりはイギリスの関連内需の景気を冷え込ませ、かつ、失業の増大と不安定な社会情勢によって、その果実をスポイルしてしまっていたのである。
結果、後年、サッチャーは政策の一部を見直し、フリードマンに批判される事になる。
サッチャーの行なった経済改革自体、私は正しいかったと思う。
過度なケインズ的な政策により、イギリスの製造業の生産効率は停滞し、1980年代にはアメリカの1/3、日本の1/2ともなってしまっていた。
それら業界を守るために政府需要を支出し続ける事はイギリス経済にとって限界であったのは自明の理でもあったし、改革の必然は間違いなくあったろう。
安易に財政出動し続ける事で、その業界の活力が意図せず、結果的に失われ、政府支出に頼った産業構造になる事で国際的競争力が失われるとともに、生産効率が下がるのは、イギリスの製造業が過去そうであったし、日本の農業が今、そうである事も重視すべき事実だと私は思う。(端的にいうと官需に頼っている日本の地方)
そして、そのような停滞を脱せさせたのは間違いなくマーガレット・サッチャーの偉大な功績であるし、評価すべき事だと私は思うが、政府支出に頼って生きていた弱者を切り捨てた事は、当たり前だが大いなる格差という形となってイギリスに暗い影を作ったのも、また事実である。
富の偏在は一般に、その社会の歪みをもたらす結果になる場合が多い(一方で活力にもなるが・・・)。
大量の社会的弱者の存在は社会を不安定化させ、公を弱体化し、社会が多くの場合、不機嫌となってしまう。
この面での社会コストの増大は治安維持等に代表される行政コストに跳ね返る事は容易に想像される。
アメリカでは金持ちがアメリカ社会を信用せず、集団で快適な街を作り、暮らしている地域もあるが、強いモノだけがより強くなるだけだったら、社会は必要なくなるのである。
その結果、社会の信用は失われ社会が不安定化する。
同時に社会の不安定化によって緊張させられる社会ではイノベーションは上手く行かず、経済はますます停滞すると思われる。
実はイノベーション、緊張を強いられると上手く行かない場合もある。
漫画家が締め切りに追われるのと質の良い漫画を書けなく場面と同じ論理だろうか?
言うなれば締め切りというコトバの前に思考が硬直化するのである。
この面での再評価が欧米を中心に行なわれており、各種研究成果によって過度な成果を問う事が創造性にマイナスに作用する事が社会的常識になりつつある。
その意味で社会全体が安定しているというのは創造性に大いなる寄与を与え、イノベーションの発現において、より有利な環境を提供する事が可能であるとも言えるだろう。
その点において、サッチャーの行なった改革だけでは逆にイギリスに大いなる困難を与える事になったのかもしれない。
が、歴史の配剤だろうか?
困難を迎えたイギリス(結果、保守党は敗北し労働党に政権が移っている)にトニーブレアが登場し、上手い具合にケインズと新自由主義の間を取り持つような政策を行った事でイギリスは安定したのである。
ただし、トニーブレアの政策も根本的な解決ではなかった為、保守派、左派、ケインズ学派からも評判は良くない。
その所に、なかなか真の解決策が見いだせないイギリスの悩みの深さもあるようである。
但し、トニーブレアが政権を担って以降、金融危機が起きる近々まで、イギリス経済は好転し、失業率は4%台、そしてロンドンの地下鉄の初乗り運転が1000円だった事実も含めて、一応の経済的成功をもたらしたのは間違いない事実でもある。
そして、その下地になっているのが、サッチャーが行なった各種経済改革である事は疑いようもなく、その事によって、サッチャー自身の評価は現在、非常に高いモノとなっているのも、また事実。
歴史の皮肉だが、サッチャーの直接の後継者でなくライバルの政党によって、一つの完成形を形作られた事に歴史の面白みを感じてしまう。
もし、トニーブレアが登場せず、保守党政権が継続し、サッチャーの政策の継続を行なっていたら、サッチャーの治績の評価もまた違ったモノとなった思われる。
ところで小泉改革。
その評価が現在、非常にネガティブになりつつあるのだが、イギリスと比較すると面白くもある。
もっとも中身の濃さでいくと、改革をやりきったサッチャーと中途で終えてしまった小泉と比較するのは無粋とも言えようか?
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2011年05月24日
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