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日本がバランスシート不況と言われて久しいが、今も日本はバランスシート不況なのだろうか?
ところでバランスシート不況とはなんであろう?
その対策の定説も含め名付け親のリチャード・クー氏の主張の一部を、ここで抜粋したいと思う。 2005年1月
リーチャード・クー氏談
一国(本当はグローバルで論ずるベキ類)の経済というのは、家計が貯金して、それを企業が借りて使うということで円滑に回るわけです。
その真ん中に証券会社とか銀行があって、仲介業務をするんですね。企業が一斉に借金返済にまわったら、家計の貯金はまったく使われない訳です。 そうすると企業の借金返済と家計の貯蓄を合わせた額が銀行に入ってきて、二度と出ていかないということになります。 これがデフレギャップです。
少なく見積もっても35兆円から40兆円あります。
ということは、誰かがこれを使わないと経済はどんどんシュリンクしちゃうわけで、それを私はバランスシート不況と呼んだわけです。 今の日本企業は、すでに十数年間借金返済を続けて、かなり有利子負債残高が落ちています。
ただ、資産価値の下落があまりにも大きかったので、もう少し借金返済をしないと安心できないというのが今の状況だと思います。 ともかく「合成の誤謬」の中で、政府は民間に対して借金返済をやめろとは言えないわけです。 でもほっておいたら、それこそ大恐慌になってしまう。 こういう時には政府は民間と逆の行動をとらないといけないわけで、35兆円から40兆円を政府が借りて使う、そうすると全てが回るわけです。 これを私はずっと言い続けてきた訳で、このバランスシート不況に限って、財政出動は不可欠であるというのがこの理論です。 今後の景気見通しという点でいえば、まだ企業の借金返済はGDPの6%、30兆円規模で続いていますから、しばらくは財政支出を続けなくてはいけない。
しかし、もう1〜2年もすれば、多くの企業が借金返済を終えるでしょう。一部の企業では、もう去年の4月から終わっているんです。 企業が再びお金を借りるようになれば、また金融政策が効き始めます。
そうなってくれば次は財政再建という話になってくるんだろうと思います。 でも今はまだそういう時期じゃないし、実際にそうなってから財政再建の話をすべきです。 最近消費税をあげようという話も一部に出てきていますが、血液の逆流が止まるのをまず確認してから消費税を上げるべきであって、まだそうなるかどうか本当にわからないのに、今から日程を決めようというのは危険だと思いますね。 バランスシートがきれいになったら企業がすぐにお金を借りるかと言うと、残念ながらそうではないでしょう。
一度バランスシートの問題で苦労した経営者は、いやな思いをした後遺症から、しばらくは借金拒絶症のような状況に陥るでしょう。 従って景気はまあまあ良い方向に向かうんですがなかなか本調子にはならない。 金利も、企業がお金を借りないものですから、GDPの数字が示唆する程には上がらず、今後も低金利が続くということでしょう。 本当にすべてが元の世界に戻るのはかなり先だと思います。 この記事は2005年1月に掲載されている。
やや、古いがホボ同じ事を麻生政権時代も言っていたので、この考えは変わっていないと思われる。
少し残念な認識だが、氏の主張するバランスシート不況の根源である借金自体は実はインタビューが行なわれた2005年以前に完済し終えておりリチャード・クー氏の認識はややズレているかもしれない。
(バランスシートを回復した企業は95年以降、投資を再開しているし、銀行の貸出余力は2000年を境に増える一方)
そして、 >バランスシートがきれいになったら企業がすぐにお金を借りるかと言うと、残念ながらそうではないでしょう。
のコトバ通り、企業は資金を借りず、一向に日本のデフレは終わらない。
(投資はしているが日本で借金して事業は拡大していない)
事実として日本の貸出し残高は一向に増えず、市中で資金はショートし血流が止まったような状況になっている。
そこで、リチャード・クー氏や三橋氏等が市中の血流を良くすべく積極財政をメディアで訴えているのだが。。。
その積極財政の根拠に私を始め、違和感を感じる識者、個人が増え始めている。
(先進国の景気対策の失敗例を知っているので、彼らの主張に関しては昔から疑問に思っている。個人的には折衷案的な思想を持っている。)
その根拠は後述するが、
バランスシート不況の根拠となる借金は、内部留保の推移を見る限り、競争力のある日本の大企業は1990年代にホボ返し終えている。
バブル崩壊後、ここ20年間で日本の企業が稼いだ貿易黒字は膨大だ。
日本の企業は借金を返し終えているのである。 では、リーチャード・クー氏が指摘するようなバランスシート不況が日本で続いているのはなぜだろう?
実際、銀行の貸出残高からは、リチャード・クー氏の主張する事が起きていると思ってもおかしくないような状態でもある。
上記は日銀の貸出・資金吸収動向等の実質預金+CD平残(3業態)から総貸出平残(銀行計)のバブル崩壊以降のデータである。
このデータの日銀の貸出・資金吸収動向等の実質預金+CD平残(3業態)から総貸出平残(銀行計)を引いた値を「預貸ギャップ」呼んでいる。
この預貸ギャップが、昨年11月に151兆円と、日本銀行のデータでさかのぼれる1991年以降で最高を記録している。
2000年以前は、銀行の貸出金残高のほうが、預金残高を大幅に上回っており、資金需要があったのだが、
2000年を境に、民間への貸出を預金額が上回っており、日本の銀行は預金の運用先に困っているのである。 (ただし銀行の貸したい相手が問題(苦笑))
リチャード・クー氏の言う、バランスシート不況が続いていると思えるような数値だ。
が、一方で氏の主張する状況とは違う指標もある。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/4/41/%E5%88%A9%E7%9B%8A%E5%89%B0%E4%BD%99%E9%87%91%E3%81%A8%E7%8F%BE%E9%87%91%EF%BD%A5%E9%A0%90%E9%87%91%E3%81%AE%E6%8E%A8%E7%A7%BB.JPG
上記は日本の10億円以上の規模をもった企業の利益剰余金と現金・預金の推移、つまりは内部留保の推移である。(先のデータが中小企業も含むデータである事に注意)
確かにリーチャード・クー氏が指摘するバランスシートの説明通り資産が増えない時期(借金を返す為、資産が増えない)がバブル崩壊以降、暫く続いたが、95年から企業の資産は暫時、増え始めている。
おそらく93〜95年までがリチャード・クー氏の指摘するバランスシート不況的な事が上記10億円以上の規模の企業であったと思われるが、それ以降はバランスシート不況が続いたというより別の要因で資産が上下し、その度に軽いバランスシート調整があったと考える方が私は妥当と考える。
実際、97年のアジア通貨危機、2000年のITバブル崩壊の影響によって企業は資産を減らしているが、短期で回復し資産を増やしている。
正直、リチャード・クー氏らが主張するバランスシート不況が続いているとは思えないデータである。
現在、日本の大企業の内部留保は史上空前のレベルである。
ところで、貯め込んだ内部留保はどのような形態を取っているのであろう。
日本の企業が保有する現金預金は、2007年時点で1989年の半分程度になっている。
つまり何らかの形で企業は運用しているのである。
銀行が貸出先に悩む一方、大企業自体は投資先に困っていないのだ。
で、彼らが運用している先とは・・・
無論、海外で運用しているのでしょう。
上記は各国の投資動向である。
この投資の増減と、企業の内部留保の増減で日本がバランスシート不況なのか判断できると思うが、上記2つの指標を俯瞰した時、バランスシート不況と言えるのは90〜95年の間であろう。
後は、金融危機、ITバブル崩壊前後の短期の調整期間が確認されるだけだ。
つまり、日本の大企業自体のバランスシート調整は95年にホボ終えていると言って良いだろう。
そして、バランスシートを回復した競争力のある日本の大企業は国内投資をせず、海外に投資しているのである。
バランスシート不況とは投資をしない事で引き起こされる。
確かに、日本の場合、ミクロで見るとバランスシート不況と断じても良いのだが、グローバルな視点で見ると日本の大企業は投資を行っているのだ。
このグローバル的な視点がリチャード・クー氏から感じないのである。
ミクロで見た日本ではバランスシート不況が続いていると言って良いのだが、マクロで見た時、バランスシート不況ではなくなるのである。
実際、日本の企業の巧みな海外投資(日本の場合、主体が投機でなく直接投資である事に注意)の結果、日本の貿易収支は以下のように変化している。
今や日本でモノを作って輸出するより利益を稼いでいるのだ。
ここで着目したいのは日本の貿易収支が度々、大きく上下しているのに対し、日本の継続した投資の結果、海外で得られた利益(海外工場等で生じた利益)が継続して増えている事である。
この状況でバランスシート不況と言い続けて良いのだろうか?
投資先を国内に向けない理由こそが、日本の不況の真因ではないかと私は主張したい。
中国の総合的な租税負担率は80%にも上るが、日本は中国に投資し続けている。
なぜ?日本より租税負担の多い中国に多くの日本企業が進出する一方、日本の国内投資は増えないのか?
(この事実は法人税率を下げても本質的な解決にならない事を示唆している)
この状況を放置して、バランスシート対策に政府が財政出動(対処法)しても効果が持続しないのは明白である。
実際、この20年間に、700兆余りの巨額な財政出動が行なわれたのにも関わらず、日本は未だ不況である。
バランスシートを回復しても企業が日本に投資をしないのだから、リーチャード・クー氏らが主張する景気対策は残念ながら一過性で終わるだろう。
90年〜95年の間は確かに効果があったと思うが、今や別要因と言ってよい状況である。
その状況の解決こそが日本の進むべき道だろう。
なぜ?企業が日本に投資しないのか?
そこが、この長く続く不況の原因である。
皮肉にもバランスシート不況同様、企業、個々の合理的な判断からもたらされた結果の不況。
が、内部留保記事にも記載したが、需要の伴なわない日本の国内投資が日本の景気回復につながるのか?
正直、私は疑問である。
故にリーチャード・クー氏や三橋氏の唱える政策に懐疑的である。
同時に日本の事をバランスシート不況とは私は思っていないのは上記理由からである。
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