倉雁洋の蔵の中

まあ、そうはいってもまーたすぐ戻ってきそうな気はするんですけどねー。

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 キーンコーンカーンコーン。
 登校している生徒も少ない朝の学校に、厳かにチャイムが響く。俺はその音が嫌いではなかった。
 昨夜から調子が狂いっぱなしだが、それでも俺はいつも通り源六を迎えに行き、いつも通り一緒に登校していた。まだ朝のHRには、一時間以上の時間がある。
 そうやって早く来ている理由は源六にある。超がつくほど真面目で文武両道を行くこの男が、学級委員長が他の生徒より遅れるわけにはいかないとして早く来るようにしているのだ。おかげで、俺も付き合うはめになっている。
 
「おはよう、平賀、松平」
「ああ、おはよう田沼」「……おはよう」
 
 基本どんな生徒よりも早く登校している俺達だが、例外もある。それが、同じ学級委員長である田沼だ。俺達よりもさらに早く登校してきて、黒板をきれいにしている。
 元来そうした仕事は日直の物であって、委員長のものではない。ところがこの二人は真面目なのか馬鹿なのか、そうした仕事も積極的に引き受けてしまっている。何でも、自分がやらないと落ち着かないらしい。
 俺としては適当に他人に任せるべきだと思うんだが……こいつらはそれを言っても聞かない。仕方なしに、俺も手伝ってやっているのである。
 いつも通り、俺は自分の机に鞄を置いた後、田沼から残った仕事を聞き出して残りの仕事を手分けして片付けるのであった。……あ、今日の日直俺だった。
 
 
 さて、朝の仕事が済めばもう暇である。俺達三人は各々自分の席で今日の予習やら昨日の復習やら、漫画を読んだり小説を読んだりしている。もちろん、最後の二つをするのは俺だけなんだけどな。
 
「ねぇ平賀……今朝のニュース見た?」
「いや、見てないぞ。今日は忙しかったからな」
 
 今日はさすがに眠気に勝てず、机の中に入れっぱなしにした小説を広げようともせずにうとうとしていた俺に、前の席から田沼が話しかけてきた。その表情は、何処となく不安そうに見える。
 ちなみに俺の席は窓際最後列、いわゆる不良の特等席である。夏場は熱く、冬場は寒いシビアな場所だが、今ぐらいの時期は風が入ってきてちょうどいい。
 俺の前はさっき言った通り田沼で、右には源六が座っている。何の因果か学級委員長に閉じ込められている形になっているが、まあ知らない仲じゃないので構わない。
 ……平賀(源内)、松平(徳川)、田沼(意次)という名前から、俺達を『大江戸トリオ』なんて呼ぶ奴までいる。その流れだと俺が一番下っ端っぽいからやめて欲しいが……ある意味事実なので、文句も言いづらい。
 
「……大丈夫? なんか顔青いわよ?」
「ああ、大丈夫だ。少し寝不足なだけだから」
 
 思考がそれていた俺を、田沼が呼びもどす。コイツに心配されるほどの顔をしていたらしい。……授業中は爆睡確定だな。
 
「それならいいけど……。あのね、平賀。昨日……というか、今日かな? 日付が変わるくらいに、隣町で首刈り事件が起きたの」
「……! そうなのか? いや、知らなかった」
 
 もちろん知らないはずがない。巻き込まれたどころか、今やそれにどっぷりとつかり込んでいるからな。しかしそんな事を言うわけにもいかない俺は、適当に答えをはぐらかした。
 ……他人の口から言われると、あの事件が嫌でも現実だということを思い出させる。同時に、あの人形の瞳も。何も感じない、ガラス玉の人形の瞳。振り下ろされる冷たい鎌。醜い声。
 
「ちょ、ちょっと平賀! 本当に大丈夫!?」
「……大丈夫だって。心配すんなよ」
 
 気がつけば、俺の体は震えていた。ふさがっているはずの胸の傷が痛む。あの人形は、俺の体だけじゃなく心まで傷つけて行きやがったらしい。……チクショウ、こんなんじゃ餌役が務まらないじゃないか。
 
「……その話なら、俺も朝聞いた。比較的うちの町に近い場所だったらしいな。夜中にやたらとサイレンが聞こえたのはそう言う理由かと合点したものだ。……平賀は気づかなかったのか?」
「あ、ああ。昨日は最近買ったゲームをやり込んでたから気付かなかったんだろ」
「……そうか」
 
 源六は俺の顔を見て何事かを考えていたが、それ以上なにも追及してこなかった。勘の鋭い源六の事だ、今のでごまかせるとも思えないが……うまくごまかされてくれよと祈るしかない。
 
「ゲームって……もう! 昨日言ったでしょう? 隣町で首刈り人形に会った子がいるって。殺されたのも、きっとその子よ!」
「いや……まだそうときまったわけじゃないんだろう? ……」
 
 実際には恐らくその通りなのだろうが……いかん、あまりの眠気に思考がまとまらない。田沼のどなり声が妙に心地よく感じる。その声につられて、少しずつ瞼が重たくなっていった。
 
「でも、少なく…も殺人事件が起きているのは間…いないでしょう? ……ねぇ…賀。もし、…しも私…その事…に……込ま…たとしたら……助け…来て…れる……? い、…や、勘…いし…い…よ…!? 別…助け……し…とかじゃ……て、一人…男…し………な……っ…い…、一…論………って……!?」
 
 その後はたかれて目を覚ました俺が見たものは、顔を真っ赤にして怒っている田沼と青い顔をして震えている源六だった。
 
 
(三へ続く)
 
 
 
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田沼さんは一体どんな話をしたんだろう?
気になりますね。

2010/10/19(火) 午後 5:28 [ ニック ]

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カリカリジョージさん。
あー、彼女の話は以下でも別に触れていないので、ご想像にお任せしますというところなのですが……まあ、『女の子として見てくれてる?』というニュアンスの内容です。

2010/10/19(火) 午後 5:48 倉雁 洋

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なんか田沼ちゃんの積極的?さに驚かされます
見習いたいものです・・・・
それに気付いてあげれない平賀くんって・・・罪な男だなぁ(;一_一)

2010/12/18(土) 午後 3:35 [ セツ ]

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セツさん。
積極的なのはあれですね、ちょーっと進展しないことに焦っている、とかですかね。いや、自分で書いておきながらその辺りは白紙だったので(笑)。
平賀君は……まあ、ライトノベルの主人公補正で……(汗)。

2010/12/18(土) 午後 5:37 倉雁 洋


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