倉雁洋の蔵の中

まあ、そうはいってもまーたすぐ戻ってきそうな気はするんですけどねー。

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「と、言うわけでござる。」
「なるほど……つまりえっと、戦間君? は平賀の親戚で、用事でこっちに来たから平賀の家に泊まったのね? それで平賀がお弁当忘れたから届けに来たと……」
「司で結構でござる。戦間は言いづらいでござろう? ……居候故、それぐらいは当然でござる」
 
 あの後。真っ先に再起動を果たした田沼が俺らに説明を求めてきたので、適当に話をでっちあげた。その内容が今述べたようなことである。……これで何とかなってよかった。危うく、俺と司のどちらが上とかそういう話になりそうだったからな。
 
「しかし拙者もここで頂いてよいのでござろうか……。やはり部外者があまり長い時間いるのは問題あるのでござらぬか?」
 
 そんなこんなで司も状況説明のために田沼に半ば強引に残らされたため、俺らと一緒に食事中である。席は源六の前の席を貸してもらった。当事者である俺と司が横に並び、その向かいに田沼と源六が座っている。
 いつもだったらこの二人を並ばせたと内心で喜ぶところだが、今日ばかりはあまり嬉しくない。どちらかと言うと、俺をこの田沼の前から移動させてほしかった。
 
「問題ないでしょう。いざとなれば高校見学に来て話をしていた、とか言っとくわよ」
 
 司の質問に田沼が答える。前にも言ったと思うが、田沼も源六も先生からの信頼は大変厚いのである。その二人の知り合いかつ監視下にあるということなら、まぁ問題ないだろうの一言で話が済んでしまうのだ。……俺? 多分、二人のおまけくらいにしか思われてないと思う。
 
「それに、司君もちゃっかりお弁当持ってきてるじゃない。それ、平賀が作ったやつでしょ? ……うらやましい」
「ふむ、ちょうど昼時だった故、平賀殿に届けた後自分もどこかの公園とかで食べようと思っていた次第。場所を探す手間が省けたのはよかったでござる」
 
 殺気、もといさっきから田沼から出ていた禍々しい怒気は消えていた。司が出てきてどう転ぶかとひやひやしていたが、うまい方向に転んだらしい。改めて、俺は田沼との距離を考えた方がいいと思わせられた一件だった。コイツには付かず離れずの距離勘が必要である。……できれば早く源六とくっついて落ち着いてくれるといいのだが。
 ――そう、一安心していたのがいけなかった。
 
「……それにしても、司君、背、小さいわね。今歳いくつ? 中学一年生くらい?」
 
 あ、地雷。
 
「小さくないでござる! 拙者が普通でござるよ!」
 
 予想通りさっきまでの温厚な司は消え、ちっちゃな大魔神・ミニマム司が現れた。その変化っぷりに、教室中がまた静まる。うちのクラスメイト達は本当に好奇心旺盛だな、チクショウ。
 
「それに拙者、中学生ではござらん! 見ての通り高校生でござるよ!」
「何いいいいい!?」「うそっ!?」「……何……だと……!?」
 
(ありえん……!?)
(リアル合法ショタだと!?)
(なんということだ。彼こそが私の天使だというのか!)
(もう俺、彼でも構わない!)
(むしろショタが良い!)
 
 司の爆弾発言に、教室中がざわめく。一部、もう戻って来られない奴らが出ている気がするが……俺達はそれどころではなかった。高校生だと!? 俺でもそれは予想外だった。
 
「なんでござるかその反応は!? 拙者、見ての通りピッチピチの十七歳でござるよ!」
 
 ピッチピチという死語にも突っ込みどころはあるが……今はそれよりも重要なことがある。
 
「同い年かよ!? すっかり年下気分で話してたぞ!?」
「平賀殿まで驚くでござるか!? 一体拙者を幾つだと思っていたでござる!?」
 
「……学ラン着た小学生」「……中学生かな、と……」「……中学生」
 若干涙目になって質問してくる司に、俺・田沼・源六の順で答える。あ、二人とも中学生だと思ってたんだ。……若干目をそらしてるし、多分小学生かもとは思っていたはずだ。
 
「……平賀殿が一番ひどいでござるー」
 
 司が裏切り者ーとでも言いたげな目線で睨んできたが、ある意味仕方ないだろ。俺はお前が学ラン以外の服着てるの見たからな。どう見ても小学校高学年くらいにしか見えなかった。さすがに、アレを見て十七歳って思える奴はいないと思う。
 
「っていうか平賀君は親戚じゃなかったの? 歳も知らないって」
「……お、俺も最近知りあったんだよ。ほら、婆ちゃんの葬式の時に初めて会ってさ」
「あ……ごめん」「……そうか……」
 
 優しい二人は、婆ちゃんの事を引き合いに出せばそれ以上何も聞いてこなくなる。二人には悪いが、今回はそれを利用させてもらうとしよう。
 二人には、婆ちゃんがいなくなって落ち込んでいた頃にだいぶよくしてもらった。両親がいない俺にとっては、婆ちゃんが唯一の肉親だったから。……亡くなった時はだいぶ落ち込んだ。ちょうど高校入学と同時だったというのもある。
 そのままひきこもりそうだった俺がこうして学校に来れているのも、実際この二人が此処にいるからだ。だからこそ、俺はこの二人の手伝いをするし、この二人には是非ともくっついてもらいたい。
 
「いや、もういいよ。俺は大丈夫だから。とにかく、そんなわけだからこいつの年齢は今まで知らなかったんだ」
「そう……本当に司君は男の子だったのね。ん? てことはさっきの電話の時の平賀の喜んでる顔は……まさか平賀、本当にそっちの趣味が!?」
「誰がだ!? 言いがかりは止めてもらいたい!」
 
 全く、源六とのカップリングといい、何で俺の周りの人間は俺を同性愛者扱いするんだ? こんなに立派な、巨乳のお姉さんが好きなノーマルの男子生徒なのに。
 
「あ、平賀殿。お弁当付いてるでござるよ?」
「何? どこだ?」
 
 騒ぎながら食べていたせいか、ご飯粒が顔についてしまっていたようだ。司に言われて顔をぬぐい、粒を取ろうと努力する。
 
「とれたか?」
「いや、まだ……ここでござるよ」
 
 ひょい、パク。
 
「お、スマン――」
「あ―――――――っ!?」
「――っ!! 耳が、耳が――?!」
 
 俺の右頬に着いていた米粒をとってくれる司。その様子を見ていた田沼が、またしても大音量を上げた。いい加減、俺の耳も使い物にならなくなりそうである。ちゃっかり耳をふさいでいた源六が憎らしかった。
 
(なんとうらやましい、もとい恨めしい……!)
(いいなぁ平賀君。私も司君みたいな弟がほしい)
(この気持ち……まさしく愛!)
(死ね、平賀……!)
 
 俺が耳を押さえて悶えていると、また何やらクラスが騒がしくなってきたようだった。小声だからほとんど聞こえないが、さっきから妙な殺気を感じる。ただし、田沼ほどじゃないから怖くもなんともないけどな。
 
「た、田沼。いきなり声を上げるのは止めてくれ……」
「あ、あんたの所為でしょ!?」
 
 なんで被害者の俺の所為になるのかよくわからないが、顔を赤く染めた田沼はプイッと顔をそむけてしまった。……怒らせるようなことしただろうか。
 
「……誰か……胃薬を……」
「ってどうした源六!? なんか俺よりも重症みたいだぞ!?」
 
 田沼の超音波攻撃をかわしたと思われていた源六は、頭を抱えたその態勢のまま悶絶していた。どうも腹が痛いらしい。……ストレスか? やっぱりあれだけの仕事をやらせるのは無理があったんだ……!
 
「……元凶は、お前だ……」
 
 ……はて。俺は源六に苦労させるような事をしてきただろうか。小さいことはともかく、これほどに重症になるような事をした覚えはないのだが。
 
「ごちそうさまでござる」
 
 そっぽを向いたまま食事を続ける田沼。悶える源六と、それを介抱しようとしている同じくボロボロの俺。唯一人、マイペースに食事を続けていた司の声がいやに教室に響いた。
 
 
閑話一へ続く
 
 
 
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司君のおかげでえらいことになりましたね・・・。

2010/10/23(土) 午後 8:55 [ ニック ]

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カリカリジョージさん。
司君はトラブルメーカーですので。
というか、元々多分そんな感じのクラスですし(笑)。
順応早すぎる。

2010/10/23(土) 午後 8:56 倉雁 洋

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司くん、かわいいなぁ〜☆
ん〜、このまま平賀くんとそっちの世界にいってもいいのでは・・・?

2010/12/18(土) 午後 3:46 [ セツ ]

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セツさん。
ふふ、何よりこの私がそう簡単にそっちの世界に行かせませんよ!
というか、さすがに背中痒くなってくるので書けませんし……(汗)。
もうちょっと別の方向で二人は進展させます。

2010/12/18(土) 午後 5:38 倉雁 洋


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