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「チエ、よくやってくれた! まさかこんなすばらしい顔があるなんて!」
暗い闇の中、一人の男が奇妙な笑い声を上げていた。モニタの前に腰かけ、自分の創造物を膝に乗せて満足そうにその髪を撫でる。男は未だかつてないほどに興奮していた。
青い光を放つモニタには、四人の男女が映し出されている。一人は大柄な男。一人は特徴がない平均的な少年。一人は小柄な学ランの少年。そしてもう一人……黒髪を三つ編みにした少女を中心に、映像が大きく映し出された。見つからないようにと、念には念を押して超遠距離から撮影されたそれ。少しだけぼやけたその向こうに、少女の笑顔が映し出される。その顔は生命力に満ち溢れていた。
「ああ、この輪郭、この目、この口、この鼻! この顔こそ僕が理想としていた君の顔だ!」
男は自分の人形の――チエの顔を撫でる。膝の上に座る彼女は嫌がるでもなく、ただ静かに自分の主人を見続けた。チエのガラス玉で出来た瞳が己の主を映し出す。
そこに映るのは、新しいおもちゃを見つけた少年のような笑顔の男だった。
「ありがとうございます」
淡々とした言葉でチエが答える。彼女に心なんてものはない。何も考えず、何も感じない。故に、主人がどんな姿で笑っていても彼女は気にしない。いつもと同じように、ただ無機質な言葉をかける。
だが男はその心のない言葉だけで満足だった。そもそも彼は否定など必要としていない。人のつむぐ欺瞞に満ちた言葉など、彼は聞きたくもなかった。故に、彼には人形の囁く言葉だけでいい。魂のこもらない言葉は、そのために彼を否定することもない。
ひとしきり笑った男は満足したのか、いつしか口を閉じてモニタを見つめていた。そして再び、件のシーンを頭から再生し始めた。
「まさか、例の二人を探してこんな顔に出会えるなんて……やはり僕が君を完成させるのは運命という物らしい」
平均的な少年が小柄な少年の頭を叩いているシーンで一時停止される。少年たちの幸せな風景があった。
男はすでに壊れていた。この深い闇の中、己が作り出した人形と二人、時を刻み続ける。その在り方は正しく隠者。世を厭い、己の殻に閉じこもった男。
神は己に似せて人を作ったという。ならば人と似た物を作り出した己は、この世界においては神なのではないだろうか。
そう思い、そう信じることだけが彼の在り方。……彼のアイデンティティ。それを満たすため、彼は今日も彼女の完成を望み彼女を使う。
「さあ、チエ、頼むよ。あの顔をとって来ておくれ。あいつらが邪魔するかもしれないが……それなら、先にそっちを潰して構わない。ただし、何が何でも顔を持って来ておくれ」
「りょうかいしました。」
人形が動き出す。そのガラスの瞳は何も映さない。
狂気が回る。運命の輪が回る。
――今日もまた、歯車が回る。
第五話へ続く
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田沼さんはこのころから狙われていたんですね。
本人も気がつかなかったでしょうね。
2010/11/10(水) 午後 8:44 [ ニック ]
カリカリジョージさん。
そうです、あの昼間にうろうろしてた時にすでに発見されてました。
本人はともかく、司が気がつかなかったのは……食気のせい(笑)。
もそっとすると決戦です、はい。
2010/11/10(水) 午後 8:49
おひさしぶりです☆
・・・だいぶ間が空いてしまいましたが・・・・(;一_一)
田沼ちゃん、モテますね〜☆
2010/12/21(火) 午後 10:01 [ セツ ]
セツさん。
お久しぶりですー。
まあ、ご自分のペースでごゆっくりどうぞ(笑)。
田沼さん、本命にはもてないんですけどね。
……下手すると一番可哀そうな子じゃ……。
2010/12/21(火) 午後 10:03
一気に此処まで読み進めました、読破できそうです^^
2011/6/29(水) 午後 0:29 [ ヤマト ]
おれんじはーとさん。
一気に読んでいただけるとは……いやはや。
ありがとうございます!
2011/6/29(水) 午後 7:43