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『は? バカが好き? そうか、君もやっぱりバカなのか』
「バカで結構。拙者、人間らしいと言われるのがプリンよりも何よりも好きでござるよ。ヒトは誰かを守るために、普段以上の力を使って立ちあがる。それが出来ぬ、わからぬ人形は、いつまでたってもヒトに勝てないでござる」
『何言ってるんだ? 現にお前もチエに負けてるだろう?』
「確かにこの状態では負けたでござる。しかしそのチエという人形……別に大した強さじゃないでござるよ? 戊辰戦争の時にはもっと強い人形がうじゃうじゃいたでござる」
……戊辰戦争。その話は司から聞いていたが……何か妙ないい方だな? まるで、自分で体験してきたみたいな……。
「一番酷かったのは、覚えている限りで、島原の乱のときでござったな。敵も味方も守るものがあった故、皆死に物狂いでござった。あのときはさすがに拙者も死にかけたでござる」
……島原の乱。天草の乱ともいって、三代将軍のとき位にあった出来事……のはず。少なくても、自称高校生の司が生きている時代ではない。
「敵の大将、天草四郎時貞殿は感情を持たないはずの人形でござったが、最後には主人の命令を破って民を守り抜いて散って行った……拙者、彼だけは心から感服したでござる」
今明かされる、歴史秘話。歴史学者達もびっくりだ。
『……君は何者だ?』
男の言葉に答えず、司はクルリと俺の方を向く。その様子は、まるでさっきの意趣返しのようだった。そのまま、深刻な顔をして告げる。
「……平賀殿。拙者、今まで嘘をついていたでござる。拙者、実は……。
男ではないでござる!
……びっくりしたでござろう!? 拙者の男っぷりに、すっかり騙されていたようでござったからな!」
「いや、むしろしっくりきた。っていうか、お前が男だって告白された方が信じられないし」
してやったり、と言うように笑う司。一方で俺の方は冷やかなものだった。思い返せば、こいつの言動は全部怪しかったのだ。見た目も男に見えないし、とてもじゃないが、少女ですと言われた方が安心する。……よかった、俺、まだノーマルだ。
「なんと! 拙者、平賀殿の洞察力を侮っていたでござるな。拙者が実は女であることを気づくとは……びっくりでござる。してやられたでござるな!」
かんらかんらと笑う司。その輝きが無性にムカつく。……本気でそう思ってたなら、お前の方がすごいぞ。
『僕を無視するな! 君は一体何なんだ!?』
スピーカーが何か喚いているようだったが、俺の知ったことじゃなかった。
――俺はなんとなく、もうこいつの正体に気づいている。さすがに、ヒントが多すぎた。こいつが何か隠しているんじゃないかと疑っていたが、なんてことはない。少し常識から外れてたから見えていなかったのだ。こいつは、そこまで隠し事ができる性格じゃない。
『お主らの方が大きくなったでござるよ!』
『拙者……のご先祖様に命令を下したのでござる』
『姿を消したとも、壊されたとも、いまだに稼働し続けているとも噂されているでござる』
『戊辰戦争』
『島原の乱』
……そして、どれだけ傷ついても血の流れない体。
司は目をつぶり、大きく深呼吸をした。その口から紡がれるのは、その正体。
――司は、瞼を開けて満面の笑みを浮かべ、こう言った。
「拙者、偉大なる樞(からくり)技師、戦間玄。そして錬金術師、三賀瑠曼らの娘にして始まりの人形、戦間 司改め、戦間 司奈(しな)でござる。平賀殿、以後良しなに」
「――ああ、よろしくな、司奈」
始まりの人形。それが答えだった。
俺は司……いや、司奈の顔をよく見る。笑みをたたえたその顔は、決して感情の無い人形のそれではない。俺が知っている、人間の……司奈の目だった。
(五へ続く)
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おお〜、ついに発表ですか〜☆
これからは司奈ちゃんですねっ
2010/12/21(火) 午後 10:46 [ セツ ]
セツさん。
ええ、ようやっと告白しました。
呼び方はどちらでも構わないですよー。
私的には司奈ちゃん、ですけども。
2010/12/21(火) 午後 10:53
なんと!女の子だということはうすうす気づいていましたが、人形だったとは・・・。
僕もまだまだだなぁ〜。
2010/12/25(土) 午後 10:06 [ ニック ]
カリカリジョージさん。
ふふ、分かりやすかったでしょう?
でも、どっちかはっていう人は多いみたいですね。
楽しんでいただけているようでなによりです。
2010/12/25(土) 午後 10:49