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※字数の関係で、凄く中途半端なところで切れます。出来れば次の話も連続で読むことをお勧めします。
「……社会人としては、遅刻は厳禁よ? 今回は急だったし、司奈ちゃんのミスだから君たちに文句は言わないけど」
「す、スマンでござる」
十三時二十分。
俺達三人と源六は、今から十分ほど前にたどり着いたのだ。当然、遅刻である。怒られることも覚悟していた俺達だったが、意外にも雷が落ちることはなかった。むしろ、この状況が罰ゲームみたいなものである。
俺、源六、次美の前には、パフェを食べる一人の女性がいた。その横には司奈も座っている。……しかし問題なのは、目の前の皿の大群。どう考えても十分やそこらで食いきれないだけの料理の跡が、そこには残っていた。量だって尋常じゃない。そんな料理達が、今現在進行形でその女性の中に消えていく。俺達は、今人類の神秘と言う物を目の当たりにしていた。
目の前で怒り心頭……とは程遠い表情でパフェを食べるキャリアウーマン風のお姉さん。最初に見た時は切れ者の雰囲気だったけど、今はむしろ蕩けるような笑顔を浮かべている。原因はその大きなパフェ、ではない。
「むしろ、褒めてあげたいくらい! この司奈ちゃんに、こんな可愛いショタファッションをさせてくれるなんて……遅刻ぐらい、いくらでも許してあげるわ! うわぁ、本当に可愛い、食べちゃいたいくらい!」
「やめ、やめるでござる縁! そこはダメでござる!」
「「「……はぁ」」」
パフェを食べきり、続いてメインデッシュと言わんばかりに司奈に飛びつく女性。何かもう、色々な部分が残念なその人に、俺達は思わず同時にため息をついていた。
この妙な女性、名前を戦間縁(いくさまゆかり)さんという。その名前の通り、司奈と同じ戦間家の系譜に連なる人で、組織内では司奈のサポート役であるらしい。その能力は非常に高く、若くして一族の最秘奧、司奈のサポートをまかされたというある意味生きる伝説とも言える存在らしいのだが。
「うふふふふ。私があの学ランを着せるのに結構苦労したのに、司奈ちゃんはどうしてそうすんなりその服を着ちゃうのかしら? うふうふふふふっ!」
こうして司奈に抱きついていて頬ずりしている縁さんを見ても、そんな人物像に繋がらない。むしろ、警察と協力してさっさと牢屋にでも入れておくべきだろうとも思う。もう、手つきがやばい。放っておくと一人で十八歳未満お断りな世界に行きかねないくらい、やばい。
「気持ち悪い! 気持ち悪いでござるよ、縁! お主はその邪な気持ちがあるから断っていただけでござる! 平賀殿は、そんなことしない故!」
「ふ〜ん……そう言う? まあ、それでいいけど。えっと、平賀君?」
「あ、ああ、はい!」
そんな状況の中でいきなり話を振られても、俺としては困るばかりである。いきなり真面目な顔になって姿勢を正した縁さんの態度に、俺の対応が間に合わない。
「とりあえず今回のことは御苦労さま。わかってると思うけど、今回の件は一応国家機密になるから口外しちゃダメよ? そっちの二人も」
「はい」「わかりました」「……わかりました」
「ん、よろしい!」
昨日と同じ。まるでキャリアウーマンのようなピシッとした雰囲気になった縁さんの口から出たのは、そんな言葉だった。
国家機密。これだけ聞くとものすごく胡散臭い言葉である。……しかし、一応大まじめらしい。江戸の昔から政府の直属機関であったその組織は、明治維新の後もその重要性のために特別に国家機関として残ったのだそうだ。
何気に、全世界規模の大掛かりな組織ということだが……何せ、司奈と縁さんが言うこと。何処までが本当だかよくわからない。司奈はともかく、縁さんが言うと怪しくてしょうがない。
それでもまあ、昨日のあの決戦の時人が来なかったのも、司奈を全力で戦わせるためにその地区を封鎖していたからなのだと。少なくとも、そういったことができるくらいには権力があるらしい。
ちなみに、司奈に携帯を渡したのはこの縁さん。……司奈が嫌がる気持がよくわかった。この人から物をもらうのは正直困る。俺だったら、迷わず捨てていただろう。
「お待たせしました、真っ赤なイチゴパフェベリーソースがけです」
「あ、ありがと」
縁さんの目の前に置かれる、真っ赤な色のパフェ。サイズはかなり大きめである。俺達が思わず胸やけを起こしそうなそれをパクつきながら、縁さんは鞄の中から書類を取り出した。
「あと……そうそう、あの人形の持ち主が見つかったわよ」
「「「「!」」」」
「えっと……あったあった。名前は久野部道(くのべどう)、年齢3×歳。無職。いわゆるひきこもりね。ん〜、いいとこの大学を中退した後ひきこもったみたい。昨日、長い時間電波を飛ばし過ぎたのが失敗だったわね。あの時カメラが送信していた電波から位置を特定して、部下を送ったんだけど……」
そう言いながら、パフェを一口。縁さんは実にマイペースだった。
「……部屋に踏み込んでみたら、ぐちゃぐちゃに砕け散った被害者たちの頭部の残骸。今警察が必死に身分特定を頑張ってるみたいだけど、……たぶん無理ね。んで、例の容疑者らしき遺体も発見。こっちも頭が踏み潰されてて、人物特定は難しいって。直接の死因は……胸部に開けられた穴。心臓が握りつぶされた状態で近くに捨てられてたみたい。写真もあるわよ? うわ、食事中に見るもんじゃないわね」
パクパク。
血のように真っ赤なイチゴを潰しながら食べる縁さん。写真は見せてもらわなかったけど、とりあえずしばらくイチゴは食えそうにないと思った。
「いろいろ警察に捜査してもらってるけど、例の――『書物』に関する情報は見当たらないわね。精々、現場の状況から第三者がいたって事が分かるくらいかしら。あ、例の人形も行方不明よ」
「…………」
俺達の間に重い沈黙が流れる。特に司奈の落胆が酷かった。
あの後、気が付いたら人形は下半身を残して消えていた。司奈曰く、あれだけ壊されたらほぼ確実に機能が止まるらしい。そうなると、そこから考えられるのは……第三者の存在。誰かが人形を持ち去ったのではないか、というのが縁さんの意見だった。
「一応、うちの部下が見張ってたんだけどね。一瞬目を離した隙に忽然と。……下半身と片腕を無くしてそこまで速く動けるとも思えないし、やっぱり裏に何かいるみたいね」
あ〜あ、面倒くさい、とパフェをつつきながら呟く縁さん。その姿はあまりにもやる気が感じられない。もはや考えるのもめんどくさいと言わんばかりであった。
「ふむ……。何十年かに一つや二つ、そうした組織は出てくるものでござる。今回もまた、厄介そうでござるな」
こちらはしんみりとしている司奈。恐らく今までの強敵達、そしてこれからの戦いの事を思っているのだろう。
二人とも同じ組織に所属しているはずなのに、性格はほとんど正反対。縁さんを見ていると、この組織が本当に大丈夫なのかが心配になってきた。
(三へ続く)
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歯車仕掛けの女の子
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司奈カワイイなぁ☆
2010/11/21(日) 午前 10:19 [ - ]
赤猫さん。
気に入っていただけたなら、司奈ちゃんも草葉の陰で喜んで……いや、死んでないですけど。
イメージ図はこの書庫の最後にある人物紹介に乗せてます。
まあこんな感じ、位でしかないのですけどね。
2010/11/21(日) 午後 5:59
緑さんのキャラがサイコーです☆
大好きですね〜
2010/12/21(火) 午後 11:03 [ セツ ]
セツさん。
お、縁さんを気に入ってくれましたか。
私も実に扱いやすいキャラで気に入ってます。
……ちょっとアレな存在ですけどね(笑)。
2010/12/22(水) 午前 6:24